Emmet Cohen(エメット・コーエン)をBlue Note Tokyoで聴いて
久しぶりの友達から連絡があった。「3日空いてる?エメットコーエン行きたいと思って」
私は知らなかった。「エメット・公園…?」 すぐにSpotyfyで聴いた。……♩…まるでキレイな真昼間のイタズラみたいな音楽………♩すぐに気に入った。
(まずはDardanella。感動して個人的に好きなのはUptown in Orbitです)
Blue Note tokyoに行くのは3年ぶり。お正月の三が日なんて関係なしに、会場は満員だった。本日の演奏はトリオのようで、さらにワクワク。
友人と世間話をしていると会場が暗くなり、本人が登場した。「オハヨゴザイマス」
白いシャツにゆるりとしたネックレス、薄オレンジのテロテロを羽織って、まるで江ノ島のお兄ちゃんみたい。
本人がはにかむと、演奏が始まった。すると朝になった。16時半だというのに。彼は口角や眉を上げ下げして、演奏の息を合図していた。顔には牛乳パックの折り目みたいに、シワが張りついている。
綺麗な笑顔、鋭い目。頭を揺らすたびに細かいアフロが飛びあがっている。ドラムのJoe Farnsworth氏はスーツをかっちり着こなしている。格好いい。チェロを弾くのはYasushi Nakamura氏。全身黒色ずくめで広告業界の人みたいだった。
アップテンポからしっとり系に、さらにワルツ調から四つ打ちスピードに、変幻自在の演奏で、御三方の息がぴったり。安心できるって、なんて気持ちがいいんだろう。
特にチェロのYasushi Nakamura氏の手捌きが速すぎて目で追えない。それに手つきがエロティック。あんな風に体を触るんだろうか……かと思えば、ドラムのJoe Farnsworth氏はスーツがはち切れそうなくらい大胆に力強く荒々しかった。ドンッ、ドンッ、ドンッ、タッ………するとピアノ、チェロが順に折り重なり、繊細な美学が生まれる。まるで自ら難題を掲げて、乗り越えられるか瀬戸際ヒヤヒヤのエンターテイメントを見せられているみたい。嫌じゃない緊張感を、私も楽しむ。
「いま、嘘っけのない時間を共有してもらっているんだ……」
………わたしは異国にいた。それはロンドンで好きな人と別れた夜。私はなにも持っていなくて、ただひんやりと冷たい自由と一緒だった。久しぶり。
いつも蓋をしている井戸から、孤独が放流されているみたい。
………ずいぶん遠くまできた………
ピアノ弦を直接指で弾いて、琴のように弾いている。その後の和音がなんとも日本的で妖艶だった。エメット・ヨーエン。よく見ると、お三方は目を閉じている。ああ。目を閉じて音楽の世界で会話している。その光景はなんとも神秘的。私はお酒がすすんでしまい、3杯目だった。
ドラムのJoe Farnsworth氏が再び激しくリズムを刻んで、スーツがはち切れそうになっている。観客は歯を見せて笑ったり、うっとりしていた。私は泣いて、すっかり癒された心を撫でていた。素敵な音楽をありがとう。素敵なお正月をありがとう。純粋な音楽を生み出してくれてありがとう。演奏してくれてありがとう。心に水を、ありがとう。
