書斎派アウトドア司書の冒険読書#5/『二年間の休暇/十五少年漂流記』
暑い夏こそ、読書で「冒険」に出かけましょう!
「夏の冒険読書」の連載では、児童文学の名作たちを、
毎回1冊ずつ配本(紹介)していきます。
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配本を届けたい方としては……
・子育てや教育に関わっている方
・読書好きの方/昔、読書が好きだった方
・日々の生活に疲れ、現実逃避したいと思っている方
つまり、これを読んでいる方、ほぼ全員ですね(笑)。
さて、第5回配本としてお届けするのは……
「夏の冒険」といえば、無人島!
(前回も聞いた!!)
ですが、今回のロビンソンは1人ではなく、15人です!
第5回配本
『二年間の休暇』
ジュール・ベルヌ(福音館書店)
作者の名前は「ヴェルヌ」表記が多いと思いますが、
福音館書店は「ベルヌ」となっていますね。
『二年間の休暇』と聞いてピンと来なくても、
『十五少年漂流記』と言われたら、
「ああ、あの話か!」と気づく方も多いかもしれません。
『二年間の休暇』が原題どおりのタイトル。
『十五少年漂流記』は日本オリジナルのタイトルです。
夏休みに船で海に出た15人の少年たちが、
嵐に巻き込まれ、無人島に漂着してしまいます。
一夏の休暇は、無人島ですごす長い長い「休暇」に……。
いや~、すごいですね。
少年たちだけで無人島ですよ!
無人島ってことは、海の家も売店もないんです!(笑)
しかも、2年間ってことは、冬も越さなくちゃいけないし…
……こりゃ大変だ!!
さて、ここで、少年たちがみんな最初から仲が良く、
一致団結していたわけではない、というのがミソです。
15人の少年たちは、国籍も違うし、年齢もまちまち。
所属する「派閥」だって違ってるんです(笑)。
当然、仲違いもするし、小競り合いもあります。
でも、最初はいがみ合う集団だったのが、困難に直面し、
危険に立ち向かい、修羅場をくぐり抜けていくことで、
お互いを理解し合い、助け合う関係になっていくんですね!
——う~ん、ええ話ですなぁ。
日本中の、いや世界中の子どもたちに読んでほしいです。
……いや、この名作をこれから読む楽しみが残っている、
幸福な大人たちにも。
<あらすじ>
夏の休暇中、スクーナーと呼ばれるヨットで、ニュージーランドの海岸を一周して過ごすことになっていた15人の少年たちは、思いがけない事故のため、太平洋に浮かぶ島に漂着する。そこは無人島だった。少年たちは、最年長のゴードン、ブリアン、ドニファンらを中心に、時に反目しながらも、様々な困難を乗り越え、島での生活を築きあげていきます。
前回ご紹介した『ロビンソン・クルーソー』の大ヒットは、
100を超える「ロビンソナーデ」(ロビンソン物語)を生み出し、
小説における、一つの「ジャンル」となりました。
本書にも、
「船の書だなには、イギリスやフランスのりっぱな本があり、中でも旅行記や科学物語が目だって多かった。二冊の『ロビンソン物語』ももちろんあった。」
とあります(笑)。
ただ、本書が他の「ロビンソン物語」と大きく違うのは、
漂流したのが「子どもたちだけ」だったという点です。
島に漂着した15人の少年たちは、それぞれに性格も能力も違い、
時に衝突を重ねながらも、「話し合い」「分担」「協力」「統制」
などを通じて、社会的秩序を作り出していきます。
これは、現代教育で重視されている「非認知能力」——
たとえばリーダーシップ、協働力、問題解決力などを
体感的に学べる貴重な教材になっているんですね。
つまり、本書は、
現代の子どもたちが読んでも通じる、“生きる力”の教科書です。
たとえスマホもゲームもない時代の物語であっても、
自分たちで考え、決断し、行動する——
そんな力がどれだけ素晴らしいかを、
ページをめくるごとに実感できるはず。
「サバイバルもの」に慣れている現代の読者にも、
“原点”に触れることができる1冊としておすすめします。
さて、本書には『十五少年漂流記』と『二年間の休暇』という
2つのタイトルがありますが、それにはこんな経緯があります。
1896年(明治29年):森田思軒により『冒険奇談 十五少年』として抄訳連載。のちに単行本『十五少年』として刊行。
1951年(昭和26年):新潮社が要約版を『十五少年漂流記』のタイトルで出版。昭和中期にはこの作品名が定着。
1968年(昭和43年):福音館が原作通りの完訳として『二年間の休暇』を刊行。ロングセラーに。
このような経緯から、児童書で『十五少年漂流記』として
出版されている本は、抄訳であることが多いです。
(大人向けに出されている本はだいたい完訳)
福音館書店が、有名だったタイトルを捨て、
原題そのままのタイトルで出版したのは、当時としては大英断、
かつ、この出版自体が「冒険」だったと思います。
これが、福音館書店が誇る「古典童話シリーズ」の第1弾となりました。
「古典童話シリーズ」は、刊行開始から50年以上たっても、
今なお画期的なシリーズであり続けています。
【福音館古典童話シリーズ】
夢と冒険とファンタジー…時代をこえて世界中の子どもたちに
読みつがれてきた古典童話を一堂にあつめるシリーズ。
流麗な日本語による完訳と原書のさし絵(復刻)をえて
登場します。抄訳では味わえない重量感です。
ページを開いただけですぐにわかるのが、
圧倒的な「中身の濃さ」。
「子どもたちになるべく完全なものを!」
という編集部の意気込みがビシビシ伝わってきます。
ラインナップも素晴らしいので、
子どもが自分で読むことができる年齢になれば、
ぜひ出会ってほしいですね。
なお、対象年齢は「小学上級から」となっていますが、
本が好きな子であれば、小学中級でも読めると思います。
(その子の「経験値」によります)
私は、小学校の5、6年の頃、よく読んでいました。
さて、『十五少年漂流記』という、よく知られた名前を使いつつ、
しかも、本格的な完訳という「いいとこ取り」の本もあります。
ここでは、代表的な本を2冊ご紹介します。
①『十五少年漂流記~二年間の休暇~』(光文社古典新訳文庫)
こちらは、この連載ではおなじみの古典新訳文庫。
いいとこ取り……というか、タイトルも両方言っちゃってます。
②『十五少年漂流記 〔完訳決定版〕』 (創元SF文庫)
※「Kindle Unlimited」対象
「完訳決定版」と銘打っていますが、
なぜか、タイトルだけは「完訳」でないという……。
しかも、ヴェルヌにしては珍しく「SF」要素はゼロなのに、
「SF文庫」に収められているという謎チョイス。
でも、「Kindle Unlimited」対象なので、
これがベストチョイスになる方も多いかもしれません。
さて、今回の「配本」、いかがでしたでしょうか。
「冒険読書」の連載では、これからも、児童文学の名作を、
週1くらいのペースで「配本」していきます。
あなたの心に、冒険の火が灯りますように🔥
<関連note>
たくさんのnoteの中から、私の記事を見つけて読んでいただき、
ありがとうございました。
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