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12年で720回。種をつないできた記録が、日誌に残っていた


若葉農園の作業日誌、12年分・76,000件を分析した話を、前回書いた。

その中から「採種」の記録だけを抜き出してみた。

720件。52種類の作物。

数えてみて、初めて分かったことがある。

720回、種をつないできた

採種の記録は、5月から7月に集中していた。506件。全体の7割。

越冬させたアブラナ科の種を採る時期と、キュウリやズッキーニのような果菜から種を採る時期が、ちょうど重なっている。

一番多かったのはニンジンで106件。次にダイコンが87件。

毎年、欠かさずやってきた。
720という数字は、その証明だった。

ニンジンだけ、特別だった


日誌をよく見ると、「採種」とだけ書かれた記録の中に、少しだけ違う言葉が混じっていた。

「母本選抜」「母本植え」。

全体で11件しかない、珍しい記録。そのうち半分がニンジンだった。

ニンジンは、形の良いもの、気に入ったものを選んで、それを母本として植え直していた。

でも、選び方には一つだけルールがあった。

揃えすぎないこと。

形のちょっと違うものも、毎年、あえて残していた。多様性を持たせるために。

きれいに揃った種を目指すのが、普通なら正解に見える。
でも、それをやらなかった。

その土地に合う個体は、実は一つじゃない。
何年も繰り返す中で、そのことが分かってきたからだと思う。

ダイコンやカブは、また別のやり方だった。


春の変わり目に、実際に割って中を確認する。
筋張った繊維のようなものが入っていないか。

見た目だけでは分からない。
割ってみて、初めて分かることがある。

倉庫が、種の仕事場だった


採種の記録を圃場別に見ると、意外な場所が一位だった。

畑ではなく、倉庫。126件。


畑で採ってきた種を、乾かし、こなし、パックに詰める。
「種こなし」「種パック」という作業が、倉庫に集中していた。

種専用の冷蔵庫が、5、6個あった。

乾燥剤と一緒に、茶封筒に入れて保存する。
湿気を吸わせないように。次の春まで、命をつなぐために。

収穫と同じくらい、いやそれ以上に、手間のかかる仕事だった。

種子法廃止のニュースと、この720件

種苗法が改正されて、自分で種を取る権利が、少しずつ狭められようとしている。

そのニュースを見るたびに、この720件を思い出す。

当たり前だと思ってやってきたことが、当たり前ではなくなろうとしている。

形を選び、あえて揃えすぎず、割って確かめ、乾燥剤と一緒に封筒にしまう。

その地味な繰り返しが、12年で720回。

これは、記録であると同時に、この時代への一つの答えでもあったんだと、今になって思う。

今日からできること

プランター一つでも、種は採れる。

来年もう一度、同じ野菜を育てたいと思ったら。
実を一つ、種取り用に残してみてほしい。

揃えすぎなくていい。
形の違うものも、混ざっていていい。

それが、種をつなぐということだから。

あなたが育てているもので、種を残せそうなもの、何かありますか?


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