【映画批評】#57「邪悪なるもの」 胸糞でもあり、楽しくもある
「テリファイド」で話題を集めたアルゼンチン出身の鬼才デミアン・ルグナ監督が、「悪魔憑き」の感染が拡大した世界で家族を守るべく奔走する兄弟の運命を、容赦ない残酷な物語とショッキングな映像表現で描いたオカルトホラー「邪悪なるもの」を徹底批評!
アルゼンチンといえばアルゼンチン共和国杯!となるぐらいのバカが観てもわかりやすい悪魔憑きスリラー。尽く悪手を踏む主人公たちにやきもきしつつ、起きることのハデさとグロさは見もの!面白い!
鑑賞メモ
タイトル
邪悪なるもの(100分)
鑑賞日
2月11日(火)17:45
映画館
なんばパークスシネマ(なんば)
鑑賞料金
1,400円(購入特典クーポン)
事前準備
予告視聴
体調
すこぶる良し
点数(100点満点)& X短評
65点
【新作映画短評】#邪悪なるもの
— 近鉄太郎 (@egoma_senbei) February 13, 2025
面白い。ハデにひどいことが次々と起こる序盤から中盤過ぎぐらいまでは結構イケイケで楽しいすらある。尽く悪手を踏む主人公のおかげで事態が悪化することによって、ドライブ感が増していく。良い映画ではあるが、後半の後半が少し落ち着いたのがもったいない。 pic.twitter.com/8eibOXoZHI
あらすじ
教会が終わった、神なき世界。悪魔に魂を乗っ取られ、体が腐敗していく者-“悪魔憑き”の存在が人々の生活に暗い影を落としていた。“悪魔憑き”は処理人によって適切に処理されなければならず、古くから伝わる7つのルールを守らなければ、悪魔の力がまるで伝染病のように広がって人々を蝕み、やがてこの世の終わりが到来するという。ある日、ペドロとジミーの兄弟は村の外れに変死体を発見し、さらには近隣の住民が家族に出た“悪魔憑き”を隠していることに気付く。二人は7つのルールに従って慎重に対処しようとするが、伝承を信じない人々の無謀な行動によってタブーは犯され、周囲は“悪魔憑き”で溢れかえってしまうのだった。最愛の家族を守るべく、ペドロとジミーは感染から逃れようと姿の見えない悪が蔓延るアルゼンチンを途方もなく彷徨い始めるが…。
ネタバレあり感想&考察
民間療法的悪魔祓い
主人公がキレイに地雷を踏むスリラー
まあまあ面白く観れました。
全然キライじゃないし、楽しく観れたけどテンションとしては凪かな。片田舎の話としては若干、#54の「おんどりの鳴く前に」の方に軍配が上がったか。でもどっちも同程度には好き。アルゼンチン発の映画と考えたら、かなり力がこもっているのはわかるので、その部分では申し分ない。
メインに兄弟がいて主人公の兄が悪魔憑きの手順無視や禁忌をガンガンしていくから、そりゃバッドエンドしかない。片田舎の小さな村の貧困家庭に悪魔が憑いた大男を処理することに決める。この大男の描写が気持ち悪すぎてこの時点で気合入っててええなと好感触。そもそも処理しようにも教会が機能していない地域らしく、処理人が来るまでに1年待ちとかの予約の取れないレストラン状態。その処理人も明らかに人為的に真っ二つに切り株的に殺害されてるのを見つけるところから始まるが、ここでも内蔵描写とかがいちいち気合が入っていて笑ってしまう。

この世界では悪魔憑きは都会に出るもので、こんな田舎で起きるわけないだろうという感じだった。まあそれでも悪魔憑きの大男を見た瞬間に地主の男が主導して、その大男をできるだけ遠くへ運ぶわけだが、道中で車から落ちてしまって行方がわからなくなる。その後にその地主が牧場で飼っている不穏さをまとった一頭のヤギを銃殺すると奥さんが即座に斧で頭をかち割り、自身の顔を斧でかち割るという超展開。
この出来事で尋常じゃない気配を察した主人公の兄が接近禁止令が出されている元奥さんの元へ出向き、子どもたちを遠くへ連れ去ろうとする。その元奥さんがブチギレ、悪魔が憑いた大型犬が娘を襲う。現夫が車でその犬を追い、銃殺。元奥さん狂乱、そこに車で戻ってきた現夫が奥さんにドゴォーーーン!とここも超展開。
ここらへんまでは悪夢のような出来事が立て続けに発生し、観ていてびっくりしながらも正直楽しい。悪魔憑きが発生したときは7つの掟に沿って対処しなければいけないようだが、主人公の兄もそれらをガンガン無視するもんだからひどいことがガンガン起きるのを待つだけみたいな。この悪魔憑きは感染拡大していくようなものらしく、ひどいことが連鎖的に発生していく。このあとその元奥さんも悪魔憑きになってしまう。

この元奥さんが美人なんだけど、ホラー向きのなかなかおっかない顔の造形をしており、その後の悪魔化はめちゃくちゃ怖かったし、すごく映えてた。弟がばったり遭遇し、ギリギリでひどいことされるのは耐えられたが、かなりグロい見た目と挙動でひぃぃ!ってなるぐらいにはパンチが効いてて最高だった。この映画のMVPはこの元奥さんだな。大男も気持ち悪かったが、やや出番少なかったし。主人公側はひたすら人聞きが悪くてイライラするが、正気でいられない気持ちもわかる。
とにかく骨っぽいスリラーで観て損はない映画だ。普通に面白い。
グロさ・気持ち悪さは良いけど
後半は特に映画的見どころがやや薄い…
ただ途中、悪魔が憑いた元奥さんの件のあとに学校に向かってから明らかにダレた。
平山夢明のシネマdeシネマでも触れられてたけど、明らかにスケールダウンというか息切れを感じてしまった。あの事情通のおばちゃんが出てきてから、解決に向かったり、面白くなるのかなと思ったら、案外しょっぱいラストでうーんといった感じ。おばちゃんの悪魔祓いアイテムもなんか大仰そうな雰囲気は出ていたものの、その片鱗すら見せずに閉幕してしまうからちょっとテンションが上がりきらない。
アルゼンチン発の映画なので、予算規模的にはそこまで期待しちゃいかんのかもしれないが、途中でカネなくなったんちゃうんかと邪推したくなるぐらい、後半の後半は尻すぼみ感が強い。あれだけ自分のせいでひどいことが起きて、この件についてはかなり詳しそうな事情通のおばちゃんの言うことに耳を傾けるかと思いきや、やっぱり聞かずに暴走してしまう主人公。
こういった主人公たちが悪手を踏み、いわゆる胸糞な結果を迎える映画といえばフランク・ダラボン×スティーブン・キングの「ミスト」やこのnoteで初めて批評した「胸騒ぎ」が思い当たるが、ちょっとあまりにも主人公たちがアホの子すぎるのと好感度が薄いキャラクターのため、ここらへんの映画ほど好きになりきれなかった。ただ面白い要素もたくさんあるから、惜しいなぁと思ってしまって、序盤の期待感からの失速の印象が強くなってしまった。
あくまで前回、#56の某映画とは違って高いレベルで面白くする努力を少し求めてしまった感じの鑑賞後感になっちゃったなぁ。夜が明けるまでの学校で悪魔の使いの子どもたちにいかに出し抜かれず、騙されず、緊張感のある駆け引きをしっかり演出できていれば、傑作に近づけたと思う。案外、夜明けまでは淡々と行った印象を持った。
そこが非常にもったいなく感じた。
「マリグナント」のガブリエル参上!!!みたいな、もうバカすぎるけど最高で象徴的なシーンが一発あれば、だいぶ印象が良くなった気もする。だからこそ、悪魔化してからの元奥さんをもっと活用すべきだったと思うんだよなぁ。それかあの息子くんの凶暴化か…。
ただ、次あるなら観たいとは思うぐらいには本作に力は感じた。
デミアン・ルグナ監督、次作以降も期待!!!
まとめ
いろいろ言ってますが、普通に面白い映画でした。
途中までアルゼンチンとわからず、何となくスペインが舞台なのだろうとテキトーに観てましたが、それでもルールを破ればひどいことが起きるということがわかれば楽しめるシンプルなエンタメ映画。高評価も納得です。
最後に
バーガーキングのマッシュルームワッパーが期間限定だ、急げ!!

