家族の死 #5 取り戻したもの
父が亡くなって10年。
私はついに、あの詐欺師の家を突き止めた。
警察に相談しても「民事不介入」と冷たく言われ、
弁護士にも「証拠がなければ難しい」と言われた。
それでも諦めたくなかったのは、
「何もできなかった娘」という過去を、もうこれ以上積み重ねたくなかったから。
小さな情報をたどって、何年もかけてようやく行き着いたその人は老けていたけど裕福な暮らしをしていた。
震えるほどの怒りが湧いているのに、頭は何故が冷静で言葉を選び、できるだけ静かに話した。
「お金を返してほしいんです」
「ほんの一部でも、返すべきじゃないですか?」
長いやり取りの末に返ってきたのは、わずかなお金だった。
でも私はそれを握りしめて、実家に向かった。
そして母に渡した。
母は、ほとんど何も言わなかった。
「ありがとう」――たったそれだけの言葉だったけど、
そこには、娘に頼らざるを得なかった複雑な気持ちや、許しのようなものが、静かににじんでいた。
あの頃の私は、
母を守れなかったこと、父に何もできなかったこと、
何も知らなかった自分、騙されたこと、信じたこと……
全部を自分のせいだと思っていた。
だからこそ、これは“お金を取り戻す話”じゃなくて、
“自分を取り戻す物語”だったんだと思う。
正直に言えば、私はまだ、心のどこかで自分を責め続けている。
でも、夢に父が出てきて私を責めることは、もうなくなった。
それだけでも、ほんの少しだけ救われたような気がしている。
そして私は、ようやくはっきりと“これからの人生を生きる”と決めた。
私の中の“正義”は、たぶん他人には伝わらない。
それでもいいと思う。
自分が納得できる形で、終わらせたという事実が、
これからの私の“新しいスタート地点”になるのだから。
ようやく新しいスタート地点に立てた時、元夫との離婚が決まった。
それはまた次回。
