non Fiction
雨の音は喝采に似ている。
そう気づいたのは、2021年4月2日に行われたMaison book girlのワンマンライブ
SolitudeHOTEL9Fでのことだった。
1年以上ずっと待ち望んでいた大好きなグループのワンマンライブ。
約4時間かけて全曲を披露するという事前情報を聞き、身構えた。
私はいつからかブクガのワンマンライブを観るのが怖くなっていた。
予測不可能な演出の芸術力と、いつもにこやかなメンバーがワンマンライブで見せる圧倒的パフォーマンスに毎度頭を殴られる。
私たちのなかにある「ブクガらしさ」を自分たちの手でぶち壊して再構築していく彼女たちのライブには、いつもどこかに終末のにおいが漂っていた。
4時間もその世界に閉じ込めらたら精神崩壊してしまう。
私はかすかな死の覚悟を決めて、着席した。
蓋を開けてみたら、それは純粋な全曲披露ライブだった。
今までのワンマンライブの演出をなぞりながらも、全力で全ての曲をやり切る。
それはライブができなかった時間を巻き戻して、取り戻すだけの行為じゃなかった。常に武器を研ぎ進化し続けていた力を、ブクガとブクガファンのために惜しみなく注いでくれたような、そんなあたたかい時間だった。
最後の挨拶。ちいさく「せーの、」で合わせたはずの「ありがとうございました〜」もバラバラで、その些細な出来事までもが「いつもの大好きなブクガ」だった。
しあわせだった。この日のためにブクガに出会って、この日のためにブクガを好きになったんだと思った。
笑顔のメンバーに降り注ぐ拍手の雨音がとても優しかった。
叶うなら、この瞬間に栞を挟んで閉じたままにしたかった。
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最高のライブの余韻に浸りつつも、9Fの最後に発表された「404」の数字が頭から離れなかった。
公式サイトで突然始まった謎のカウントダウンは止まることなく、5月30日のワンマンライブで0になる計算だ。
ツアー公演のたびに更新されるHPはどんどん壊れていき、大好きなメンバーのアー写までもがめちゃくちゃに溶けていく。ショックだった。
「終わってしまうのかもしれない」
嫌でもその考えが頭を占領していった。もしかしたら新しい活動への伏線かもしれない、そういう希望ももちろん考えた。
だけどどんな理由であれ「変化」はいつだって怖い。大好きなグループのライブが純粋な気持ちで楽しめなくなるのが悲しくて、HPの更新を確認するのをやめた。公式サイトの不穏な空気など感じさせないメンバーの楽しげな発信だけを信じようとした。
□
5月29日。
もうすぐ日付が変わる時間。
漫画を描いていた。
舞浜でどんなライブが行われるかは分からないけれど、それはブクガにとって絶対に大切な公演であることは勘づいていた。
だから自分の気持ちを整理するために漫画を描くことにした。大好きなグループとの出会いを残しておきたかった。いま描かなきゃ後悔する気がしたから。
日付が変わる瞬間にペンを置く。
ずっと避けていた公式サイトを覗くと大きく「0」が映し出され、あとはちいさな数字が午後7時までの秒針を刻むのみだった。
5月30日。ああ・・・ついにこの日が来てしまった。
朝になっても昼になっても漫画は描き終わらず、ついに当初予定していた家を出る時間になってしまった。
窓の外を見ると、ピカピカに晴れているのに大粒の雨が降っている。
「雨……まだ描き終わらないし、ちょっと様子見てから出よう。」
そういえば服も決めていなかった。せっかくだしグッズのロンTでも着ようかなと引っ張り出したけど、どう組み合わせても真っ黒なコーディネートになってしまう。なぜか「喪服」という単語が頭をよぎったので、慌てていつものお気に入りの服にする。コショージさんの生誕ロンTに、春色の上着とスカートを合わせた。ロンTに書かれた「しあわせ」の文字に、ちいさく願いをこめるようにして袖を通す。
もういよいよ時間がない。
漫画を必死で完成させ、急いでマスクをつけて外に出る。
開演が10分くらい押してくれないかな、と能天気なことを考えて平静を保とうとした。
電車ではずっとブクガの曲をきいていた。
全ての行動が祈りだった。
□
車窓から見える風景が突然カラフルになる。夢の国としかいいようのない景色に、覚束ない思考が叩き起こされた。舞浜駅は非日常だ。
イクスピアリの入場口で合流する楽しそうな人々と、大好きなグループのライブなのに憂鬱な自分の心情のコントラストが恨めしい。ここで引きかえしてディズニーランドに逃げられたらよかったのにと思う。そんなこと出来やしないのに。
ひたすら突き進んでいたら突然広い場所に出て、次に進む方角がわからなくなった。スマホの通信制限で地図が見れないから、多分こっちだろうなと勘で進もうとしたそのとき、
「やこ!!」
名前を呼ばれて振り向くとお友達のはんちゃんがいた。驚いた。
「なんで!?なんで今ここにいるってわかったの?」
「お手洗いに行くついで様子を見にきたんだよ」
「すごい・・・」
はんちゃんに案内されながら会場に向かう。
明らかに逆方向へ向かおうとしていた私は、はんちゃんに声をかけてもらえなかったら一生後悔ものの遅刻をするところだったと思う。
ライブ緊張するね、ちょっとこわいけど楽しみだよね。開演時間、10分遅れるみたいだよ。えっそうなの?
大きなライブを見る前に感じる、どの種類にも分別できない複雑なドキドキを共有できることが何よりも救いだった。
だけどカウントダウンが0になったことだけは、なぜか話せなかった。
開演間近ということもあり、ロビーにはパラパラとしか人がいなかったが、ちょうど見知ったオタクの人たちが居て声を掛けてくれた。
みんなみんな、顔が見られてよかった。
数時間後の私たちは、いったいどんな気持ちになってるんだろう。
サクライさんのインスト曲が流れている。
いつもだったらライブへの期待を煽ってくれる心地よい曲なのに、今はただただ不安だった。これから自分のお葬式に出るみたいな気分だった。
席についてスマホを開くと、コショージさんのツイートが目に飛び込んでくる。
「ありがとう」
息が止まる。
これは、どういう意味のありがとうなの?と考えると同時に、きっと数時間後の私はこのツイートに返信することすらままならないだろう、という予感がした。
自分の最期の言葉になってもいいように「こちらこそ、ありがとう!」とだけ送って、そっと電源を落とした。
もう引き返せない。
暗闇。
突然、爆音でlast sceneが鳴り響く。
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ライブの間じゅう、「これが最後かもしれない」という気持ちを人質に取られて、ずっと背中にナイフを当てられているような心地がした。
いつ何が起こるか分からない緊張感と、どんな状況であれ大好きな4人を目に焼き付けるんだという気持ちでいっぱいだった。
目の前で起こる全ての瞬間が大切で、
紛れもなく、大好きなMaison book girlの「最高のライブ」だった。
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足元に散らばった夢の残骸から目を逸らせない。
すぐに規制退場が始まる。
「ご来場ありがとうございましたー」
出口でスタッフのお兄さんに二つ折の青い紙を差し出される。それに何が書いてあるのかなんて、簡単に想像がついた。
「こんなの欲しくない」
咄嗟にそう思ったのに流れで受け取ってしまった。そっと紙を開くと、白い文字でURLだけが印刷されていた。予想通りだった。
答えはきっとそこにあるのに、月末の通信制限を理由にして開こうとしなかった。
開きたくなかった。
会場を出ると空は暗く曇っており急に心細くなる。Twitterを開くと、ライブに来たフォロワーたちの困惑したリアクションと共にスクショが並んでいた。
画面から逃げるより早く青色が飛び込んでくる。
Maison book girlは削除されました。
あなたが探していたものは現在このアドレスには存在しません。ここには何もありません。コンパクトディスク及びインターネット上のミュージックアーカイブは一部を除き削除されません。引き続きお楽しみください。
このエラーページを探していた場合はおめでとうございます!あなたは完全にそれを見つけました。
・・・・・削除されましたって何だよ。わかんないよ。
誰か、誰か。早く知ってる人に会いたい。半ばパニックになりながら周りを見渡すと、よく知った女の子がスマホを片手に俯きながら歩いていた。迷わず駆け寄って声を掛ける。
「だーちゃん、」
「あっ!やこちゃん」
ポツポツと降ってきた雨が、青色の紙に小さな染みを作る。
だーちゃんが呟いた。
「通り過ぎてく人のスマホ画面、みんな真っ青やな」
□
とりあえず屋根があるところに入ろうと、ふたりでイクスピアリを目指して歩いていたら後ろから声をかけられる。
「もしかして、知ってる人達じゃないですか?」
振り向くと、そこには大きな紙袋を持った軍手さんがいた。
物販で過去のグッズの詰め合わせが売られていたのだそうだ。見せてもらうと、ロゴが印刷されたマスキングテープがやたらと入っていたので少し笑ってしまった。これ可愛いのになあ。
横でスマホを見ていただーちゃんが突然叫んだ。
「あっ!!ねぇ! ーーーー!」
突き出された画面には、音楽ニュースサイトが表示されている。
記事の見出しを読んで、凍りついた。
「Maison book girl 活動終了」
視界が真っ暗になる。3人でしばらく絶句した。
Maison book girlから提示された「削除」の意味を自分自身で噛み砕いて理解する前に、第三者から突き付けられた事実。
ライブの余韻に浸りたいという願いすら、この文字の前では無力だった。
「そうか」とも思ったし、「なんで?」とも思った。
・・・そうだ、はんちゃん。どうしてもはんちゃんに会いたい。震える手で電話をかける。
「はんちゃん、今どこにいるの?」
「会場を出たところだよ。やこは?」
「イクスピアリのトイレの近く。だーちゃんと、軍手さんもいる」
「そっか〜遠いから先に帰ってていいよ」
「え!やだよ!会おうよ。迎えにいく」
電話を繋ぎながら3人でイクスピアリの入り口に着くと、ちょうどはんちゃんも来たところだった。はんちゃんの顔を見てつめたい右手を握った瞬間、やっと涙がこぼれた。
□
少し席をはずしたはんちゃんを3人で待つ。
なんだか足がふらふらする。立っているのが辛くて、じゃまにならないようにゴミ箱にもたれてそっとしゃがんだ。しばらくそうしている間も、頭の中ではさっきの記事が渦巻いていた。削除、活動終了、おしまい、じゃあライブはもう見られない、・・・ほんとうに?
どうしようもない考えを振り払うように立ち上がると、軍手さんがこう言った。
「なんか身体しんどいよね。俺が深キョンだったら、だるおも〜って言ってたよ」
だーちゃんも軽い調子でそれに続く。
「ほんまや。だるおも〜」
2人の会話に何それ!しょーもな!って笑うより早く、今この瞬間、一人じゃなくてよかった、と思った。みんながいてくれて良かった。そう実感すると同時に、声が出た。
「わたし、ほんとうに、みんながいてくれてよかっ」
た、を発音する前に、泣いていた。
間に合わなかった。堰を切ったように次々と涙が溢れ出る。手で顔を覆っても誤魔化せない。しばらくその場でしゃくり上げて泣いた。
滲む視界の中で、だーちゃんが肩をさすってくれているのを感じていた。
紙袋の中から何かを取り出した軍手さんは、「これをあげるよ」とブクガの大きなステッカーシートを渡してくれた。気づくとはんちゃんも傍にいてくれている。
泣きたいのは、きっとみんな同じだった。
少し落ち着いた頃、「みんなで写真撮ろうや~」とだーちゃんが提案してくれたので、「じゃあ折角だしディズニーっぽいところで撮ろうよ」
「いいねいいね」
と、4人でイクスピアリを歩く。明るくて華やかなお店ばかりだった。
外を出てすぐ目に入ったディズニーストアが一番「っぽい」場所だったので、ここで撮ろうとすぐに決まった。しとしと霧雨が降る中、真っ赤に照らされた屋根の上で大きなミッキーマウスが左手を挙げ微笑んでいる。
「え〜ポーズどうしよ」
「俺こうやって映ろうかな」
「それコショージがリリイベの時によくやるやつじゃん!」
「葵ちゃん固定のポーズないからなあ」
「普通にピースかな?」
とか色々言う内に、だーちゃんがカメラを起動してくれる。
「はい、撮るよ〜!」
カシャ
そこにはどこかふわふわした表情の4人が写っていてなんだかおかしかった。この写真を、きっとこの先何度も見返すんだろう。
□
舞浜駅前のニューデイズに寄ったらグミを見つけた。コショージさんがツイッターで言ってたやつ。あんまり見かけないのにここで売ってるなんてさ。こういうところでも変な縁を感じちゃうのは、やっぱり私がオタクだからなんだろう。
しばらくコンビニの前で話していたけど、まだ帰る気にはなれなかった。せめてメンバーのツイートが更新されるのをみんなで見届けたい、という意見が一致して座れるところを探す。
ちょうど4人がけのベンチがあったから、はんちゃん、私、だーちゃん、軍手さんの順で並んで腰掛けた。隣ではカチューシャをつけた女子高生たちが楽しそうにはしゃいでいる。遠くに浮かぶディズニーランドホテルのシルエットが、オレンジ色の灯りに縁取られていてきれいだった。
時々グミを食べながら、4人でずっと他愛も無さすぎる話をした。みんな帰りたくなかった。明日が来ることを何とか先延ばしにできないかなって、そればっかり考えていた。
けれどおしゃべりに集中しながらも、何か更新されるんじゃないか、と少しの期待からタイムラインをスクロールする手は止められない。
「あぁ、なんか、この景色のこと一生覚えてるんだろうな」
何となく呟いたような軍手さんの言葉に、心の底から同意した。
「絶対そうですよ」
4人でいる間に、ディズニーの電車が何回も目の前を通り過ぎて行った。
ミッキーマウスの形をした窓から見える車内には、もう誰もいない。
「あっ、……井上唯ちゃんのツイートが消えてる……」
その場の空気が、少し止まる。
メンバーからの投稿はとうとう無かった。
時計を見ると22時をとっくに過ぎていて、私たちは重すぎる腰をようやく上げた。背後ではホールニューワールドが流れていた。
□
ガラガラの電車に揃って乗り込むと、黒い窓ガラスに自分の姿が映った。そこで初めて気がつく。
「・・・あは、私マスクの裏表まちがえて付けてた・・・」脱力である。
「やっぱりそうだよね!?そのマスク、この前見たとき裏地のピンクが表にうっすら透けてて、綺麗だなーって思ってたんだよね」
家を出るときに急いで着けたお気に入りの不織布マスク。裏に来るはずの鮮やかなピンク色が、今はしっかりと表になっている。
私はマスクを逆に着けたまま、あのライブを真剣に見てたのか。なんてマヌケなんだ。どんだけ余裕なかったんだよ。ちょっと笑う。
乗り換えのために降りた東京駅には動く歩道があった。
「さっきのブクガのポエトリーごっこできるじゃん」
みんな同じことを考えていて、可愛いかった和田輪ちゃんのマネをしてわざとよろけたりした。
楽しいなあ。ライブ終わりにこういうことが出来るのも、もう最後なのかな。
お別れの時間が来て、みんな別々のホームに向かう。
いつか落ち着いたら4人でディズニーに行って今日のトラウマ払拭しような!って約束をして、それぞれ手を振った。
あの真っ黒なグッズを身につけて、とびきりハッピーな写真でも撮りたいね。
□
最寄駅はしんと静まりかえっていた。
いつもの帰り道のはずなのに、歩いても歩いても家に着く気がしない。
ひとりでいると、どんどん気持ちが溢れ出てくる。
誰が読むかも分からない漫画なんて描いてないで早く家を出て最後のランチェキを引けばよかったよな。仕事とか何もかもを投げ打って全国ツアーに行けばよかった。いつかちゃんとまとめて渡そうと思ってた手紙の下書き、特典会の絵や漫画のメモ。その内形に残そうと思ったまま、まだ頭の中にある思い出たち。これらが更新されることは、もう無いんだろうか。
眠ろうとして目を閉じても、行き場を失った感情が次々と生まれては頭の中でぐしゃぐしゃと渦巻き続けた。
次の日は月曜日で、ちゃんと仕事に行ったはずだけどあんまり記憶がない。
目覚めるとブクガの曲はおろかあらゆる音楽を聴くのが辛くなっていた。こんなことは初めてだった。手脚を捥がれて宙を漂っているような喪失感。それだけブクガは私の真ん中だったんだということを思い知らされる。
ライブ配信のアーカイブを観るか迷った結果、期限ギリギリに視聴を始めた。
私が不安な気持ちになって堪らなかった冒頭の映像は、画面を通して見るといろんな時間軸のMaison book girlが存在する仕掛けになっていて驚愕した。
この情勢を踏まえ、配信で観る人のこともしっかり考えて作り込んであるライブだった。浅はかな自分を殴りたい。
ブクガはいつも自分たちの持ちうる武器を全て使って、会場のポテンシャルを最大限に引き出すライブをする。夢みたいな時間の裏にある泥臭い部分を、こちら側にほとんど悟らせもしない。
やっぱり、なんて格好いいんだろうか。
ブクガのワンマンライブに行くたびに私は絶望していた。
彼女達から提示される世界の美しさと生々しさに、私はこのグループのことをなんにも解っていなかったんだと思い知るからだ。
けれどライブを観てボロボロになっても、変わらないメンバーのあたたかさがいつも心の受け皿だった。
今は長い沈黙と、第三者からの不透明な言葉があるだけだ。
公演後、タイムラインに溢れた「らしいね」「かっこいいね」という言葉が目に入るたびに悔しくてしょうがなかった。
カウントダウンも、壊れていくサイトも、あのライブだって観てないくせに、わかってるというような言葉で片付けられていくのが耐えられなかった。
Maison book girlはステージの最後の1秒まで、自分たちを更新し続けて私たちに見せつけてくれたんだよ。
こんなに格好いい人たちのことを知らない人々がこの世界にたくさん居る。そのことが、まだ許せないままだ。
□
向き合うことからずっと逃げていたけれど、この日記を書くにあたりブクガの曲をもう一度聴く必要があった。
深呼吸をして再生ボタンを押す。
すると、さも当然ですと言うように曲が流れ出したから、全身から力が抜けた。
私の中にしっかりと刻まれてるなら、「削除された」と言う事実はそれ以上でもそれ以下でもない。涙が止まらなかった。
404の後に聞くブクガの音楽は、これまでと全く違って聴こえた。
私は今までブクガの歌詞を、ある種の記号のように捉えていた。
雨。鳥。煙。
壊れた部屋。
汚れた結末。
4つ目の壁。時計台。
これらの言葉は、全て音楽の心地よさのためだけにあるサクライさん独自のものなのだろうと、意味を深く考えずにブクガの曲を愛していた。
けれど404を経て曲を聞いてみると、散らばっていた言葉の断片が手を繋ぎ5月30日への伏線になっているとも捉えられるので、ひどく恐ろしい。
その中でも「夢」と言う言葉は49回使われていて(ポエトリー・bath room改は除く)そのうちの30回以上もの「夢」が404に登場した。
これほどユメに固執しておきながら、「僕らの夢は叶わない」と言う言葉とともに、私たちと、最高の自分たちを夢の国に置き去りにしていった。
きっとSolitude HOTEL404は、会場が舞浜だと決まった瞬間から始まっていたんだろう。
あのカウントダウンや不穏な匂わせだって、今思えばぜんぶ優しさだった。
ブクガがこんなに分かり易いことをするはずないよねって意地を張っていたんだ。それともまた私たちは裏切られたんだろうか。
「Maison book girl」はどこまでもひねくれ者だったけど、4人はいつもいつも優しかったね。
大切じゃない瞬間なんて、今までに一度もなかったよ。
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手紙を書きます。
あれから2ヶ月が経ってしまいました。
今の私は、コショージさんが書いたいつかのブログ「耳をすませば」とまったく同じ気持ちです。
Maison book girlの形に空いた穴は、きっとこれからも埋まらないままでしょう。
あのとき。「ぼくを見つけて」と言われたけれど
ブクガの存在は、私にとって「見つけた」も「見つけられた」もない。ただ「出会ってしまった」だけでした。
冬の寒い日。新宿のちいさなライブハウスで出会った既視感ゼロの光を、私はずっと大切にしていきます。
ブクガを追いかけて、いろんな場所に行きました。みんなは私をいろんな場所に連れていってくれました。本の家に帰るなら一緒についていきたかったけれど、今もどこかで終わらない夢を繰り返しているという解釈ができるならば、きっとその場所に私も居ます。
私は往生際が悪いから、ありがとうもさようならもまだ口にすることができません。消えたことがずっと続いて当たり前になるくらいなら、ブクガが端っこにいたフツーすぎる世界を一生ゆるさない。
だけど、これだけは言いたい。
和田輪さん。井上唯さん。矢川葵さん。コショージメグミさん。
私は4人のMaison book girlに出会えて、本当に、ほんとうに嬉しい。
いつかまた、孤独なホテルで会えるまで。
何度だって手紙を書きます。

(探しものは何ですか?)
