SS【まるい光】#シロクマ文芸部『シャボン玉』
小牧幸助さんの企画「シャボン玉」に参加させていただきます☆
お題 「シャボン玉」から始まる物語
【まるい光】(800文字)
シャボン玉ってなに?
若い母親がストローに石鹸水をつけて吹いてみせる。
坊やはストローの先から飛び出してくるキラキラ輝くものに目を見張る。
ぼくも!ぼくもやる!
母親は笑って、坊やに石鹸水とストローを渡す。
吸い込んじゃだめよ、フウッてやさしく吹くの……。
坊やは大きくうなずいてストローに聖なる液体をつけ、ふうっ……と吹いてみる。
美しく光る丸い玉がどんどん生まれて飛んでいく。
ママがしたのとおなじ!
坊やは母親を見上げて、言葉にならない喜びをくしゃくしゃの笑顔で表現する。
母親は坊やの頭をなでて優しく微笑むと、坊やを庭に残して家事のために家の中に戻る。
一人になった坊やは、シャボン玉を吹き続ける。
シャボン玉は飛んでいく。
ずうっとずうっと遠くまで。
垣根の向こうを郵便屋さんの自転車が通りがかる。
坊やとは顔なじみの郵便屋さん。
シャボン玉に気づいて、垣根越しに坊やの方を見る。
シャボン玉かい、いいなぁ。
うん、いっぱいつくるの。
世界中に飛んでいきそうだな。
せかい?うん!
郵便屋さんは、ハハハと笑って走り去る。
坊やはシャボン玉を吹き続ける。
まるくてきれいなシャボン玉。
でも、ほとんどはすぐに消えちゃう……。
坊やは、それだけが残念だった。
でもがんばって吹き続けたら消えなくなるかも。
そしたらせかいをぼくのシャボン玉でいっぱいにするんだ。
まるい光でいっぱいの世界を想像して、坊やはニコニコした。
その時、坊やの頭上に飛行機が飛んできた。
坊やは、飛行機からも見えるようにシャボン玉を吹いた。
でも飛行機に届く前にシャボン玉は消えてしまう……。
坊やはちょっとがっかりする。
飛行機は、坊やのちいさな祈りを受けとることなく飛び去っていく。
ある国に爆弾を落とすために。
それはその国でシャボン玉を吹く子どもの上に落ちるかもしれない。
坊やは吹き続ける。
世界をまるい光でいっぱいにしたくて。
でもシャボン玉は消えていく。
でもがんばって吹き続けたら……いつか。
おわり
© 2026/4/4 ikue.m
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