見出し画像

待乳山聖天


今日は母の生家の近くにあった待乳山聖天に行きました。



ここは、ちょっと面白いので紹介します。

最近、推し神社ってのもあるそうですね。
大学時代は一般教養で神道があって、推し(?)神社のレポートを書くという課題がありました。
大人になってから、北区の産業振興課のWEBサイトを作る仕事があって北区内の神社を巡ったりしていました。

わたしは、産土神社も氏神様も隣の柏木神社なのですが、推し神社としてここがあります・・・・・って神社じゃないんですけど。

今朝、神社の話をnoteに書いてから。
あ!待乳山聖天。今年行ってない!って気づいたので行ってみた次第です。


待乳山聖天

待乳山聖天(まつちやましょうでん)、正式名称「本龍院(ほんりゅういん)」は、東京都台東区浅草の北端、隅田川を望む標高約10メートルの高台に位置する聖域です。
聖徳太子が活躍した推古天皇の時代に端を発するとされるこの寺院は、浅草寺の支院としての格式を持ちながら、独自の「聖天信仰」を1400年以上にわたり継承してきました 。

標高10メートルという「山」は地理学的には微々たる隆起に過ぎないのに、待乳山聖天が鎮座するこの小高い丘は、古来より「霊山」として人々の精神構造の中に確固たる地位を占めてきました 。

伝承によると、推古天皇3年9月20日、この地が突如として隆起し、霊山(待乳山)が姿を現したとされます。
その際、天から金色の龍が舞い降り、山を幾重にも取り巻いて守護したという伝説が残されています。

浅草っていえば浅草寺です。この「金龍」のモチーフは、浅草寺の山号「金龍山」とも共通しています。
浅草一帯の地霊がこの地を祝福したということなのでしょうか。

さらにその6年後、推古天皇9年(601年)の夏、未曾有の大旱魃がこの地方を襲い、人々が飢えと渇きに苦しんでいた際、十一面観世音菩薩が大聖歓喜天(聖天様)に姿を変えてこの地に降り立ち、人々を救済したことが聖天信仰の始まりとされています。

弘法大師と「待乳」の由来

平安時代に入ると、弘法大師空海がこの地を訪れたという伝説も加わっています。
乳が出ずに困っていた母親が弘法大師に助けを求めた際、大師が「少し待つように」と伝え、加持祈祷によって乳が出るようにしたことから「待乳(まつち)」の名称が生まれたという説があります 。

江戸時代、待乳山聖天は幕府の周辺防御を固めるための寺社群の一角として、また江戸庶民の憩いの場として大きな発展を遂げました 。
特に、徳川家康や豊臣秀吉が、その強力な守護力を求めて聖天様を信仰していた事実もあります。
現代においても、パナソニック(旧・松下電器)の創業者である松下幸之助さんが熱心に信仰していたことは有名です。

主要な節目

飛鳥時代 595年 待乳山が湧出し、金龍が降臨する。
飛鳥時代 601年 大旱魃の際、十一面観音が聖天として現れ救済する。
江戸時代 1781年 銅造宝篋印塔が建立される。
江戸時代 1820年 大根供養に関する古い石碑が奉献される。
昭和時代 1961年 現在の本堂が建立される(権現造)。
昭和時代 1974年 「大根まつり」が現代の形式で開始される。
令和時代 2023年 山門が新たに落慶する。

神学的考察

待乳山聖天の本尊である「大聖歓喜天(だいしょうかんぎてん)」、通称「聖天様」は、仏教の天部に属する神でありながら、その性格は極めて複雑なんです 。

聖天様のルーツは、ヒンドゥー教の象頭神ガネーシャにあります 。
インドにおいてガネーシャは、知恵と富を司り、あらゆる障害を取り除く神として絶大な人気を誇っていますね。
仏教がこれを取り込む際、密教の体系の中で「大聖歓喜天」としての地位が確立されたのです。
日本では、弘法大師空海によってもたらされたとされ、真言宗や天台宗の密教寺院で特に重視されています。

秘仏としての双身像

待乳山聖天の本尊は、完全な「秘仏」であり、一般の参拝者がその姿を見ることは決して許されないのです 。
伝承によれば、その姿は象の頭を持つ男女二尊が向かい合って抱き合っている「双身像」であるとされます 。

慈悲と智慧の合一として、白い象(十一面観音の化身)が、黒い象(煩悩に満ちた魔王)を抱擁し、慈悲によって教化する姿を表しているそうです。

煩悩即菩提という教えもあります。
人間の剥き出しの欲望や煩悩を否定するのではなく、それを肯定した上で高い次元の悟りへと昇華させる密教の核心思想です 。

また、男女の和合を象徴しており、陰陽の調和として、夫婦円満、子孫繁栄、家内安全といったご利益が導き出されます。

十一面観音

聖天様は単独で存在するのではなく、十一面観音と密接な関係にあります。
待乳山聖天の本堂においても、本尊は大聖歓喜天と十一面観音の二尊として祀られています 。
これは、観音の慈悲が、荒ぶる力を持つ聖天を和らげ、衆生の願いを叶えるための「方便」として機能していることを意味しているとされます 。
この二尊不二の思想が、待乳山聖天の信仰の基盤となっているのでしょう。


歓喜地蔵尊と二十八地蔵尊


「大根」と「巾着」

待乳山聖天の境内で、何も知らないでここを訪れた観光客が「???」と思うのは大根でしょう(笑)
参拝者がみんな大根を抱いているんです。
大根は聖天様の最も重要な供物です 。


生理的・医学的には、大根には体内の毒素を中和し、消化を助ける働きがあります。これと同様に、聖天様は人間の「心の毒(煩悩)」を中和し、清めてくれる存在であるとされます 。

大根は食べると辛いけれど、その淡白な味わいは多くの人に好まれる・・・また、大根は人間の「怒り(瞋恚)」を象徴しており、これを聖天様に捧げることで、自らの怒りの心を捨て去るという意味があります 。


秘法「浴油祈祷」の構造と実践

待乳山聖天において、願いを叶えるための最も強力な手段として位置づけられているのが「浴油祈祷(よくゆきとう)」です 。
これは密教の修法の中でも「極秘」とされるものです。

修法のメカニズム

浴油祈祷は、毎朝早朝、本堂が閉ざされた中で行われます。
阿闍梨(僧侶)が、熱した純粋な胡麻油を聖天像に注ぎ続ける儀式です 。これには以下の三つの意味があるとされています。

浄化: 油によって像を清めることで、参拝者の業や障害を取り除く。
供養: 油は聖天様にとって最高の好物であり、これを捧げることで神の力を最大限に活性化させる。
変容: 油を注ぐ熱量と祈りのエネルギーが合致したとき、現世的な願いが形而上学的な力によって動かされるとされる 。

いつか、大きな願い事ができたらやってみたいと思いながら、何十年も経過しています。

祈祷中の生活規律というものがあり、祈祷を受ける者には、単に「待つ」だけでなく、自らの生活を律することが求められるためです。
待乳山聖天が発行する「いちょう」や公式サイトの案内によれば・・・

不殺生と清浄:
肉、魚、あるいはニラ、ニンニクなどの臭いの強い食べ物を避けることが望ましい 。これは、身体を清浄に保つことで、聖天様との霊的な感応を高めるためである。

精進:
祈祷期間中は、日常の職務や学業にこれまで以上に真摯に取り組むことが「誠意」として評価される 。

おまかせの心:
いったん祈祷を依頼したならば、疑うことなく「すべてを聖天様にお任せする」という絶対的な信頼の態度が、成就への鍵となる 。

権現造の本堂と意匠

1961年に再建された本堂は、神社建築の形式である「権現造」が採用されています 。
拝殿と本殿が幣殿によって連結されたこの構造は、参拝者がより本尊に近い場所で祈りを捧げることを可能にしています。

内部は、天井に描かれた龍や天女の日本画によって彩られていて、密教寺院らしい荘厳な雰囲気を醸し出しています 。
本堂内で「経机」が貸し出されていて、参拝者が自ら経典を読誦することが奨励されているのがすごいなと思うところ 。
これは、プロの僧侶に任せきりにするのではなく、個人の信仰実践を重視する姿勢の表れとされています。

さくらレール

2000年代以降、待乳山聖天が取り組んできた最大のインフラ整備が、スロープカー「さくらレール」の設置です 。
駐車場の続きから本堂のある高台までを結ぶ定員4名の小規模なモノレールで、階段の上り下りが困難な高齢者や、車椅子利用者、ベビーカー連れの家族にとってはとてもありがたいものです。

文化財としての銅造宝篋印塔

境内には、江戸時代の技術の粋を集めた「銅造宝篋印塔(どうぞうほうきょういんとう)」があります 。
天明元年(1781年)に建立されたこの塔は、台東区の指定有形文化財であり、当時の町人や信徒たちが寄進したものです。
石造りの塔が多い中で、青銅を用いたこの塔は、待乳山聖天がいかに豊かな経済的基盤と熱心な信徒集団を持っていたかを物語っています。

イベント

1月7日:大根まつり

正月三が日に供えられた数千本の大根を調理し、参拝者に振る舞う行事です。午前11時から「大般若家内安全法要」が営まれ、その後、特製のゆず味噌がかかった「ふろふき大根」が授与されます 。

聖天様にお供えされた大根を食べることは、仏の力を直接体内に取り込むことを意味し、一年間の健康を保障する霊的な薬として機能します。

ただ、普段でも参拝する際に、毎日お供えされる大根が「お下がり」として参拝者に配布されています。

9月:聖天まつり

「待乳山開山会(かいさんえ) 聖天まつり」は、当山の創建を祝う行事です。江戸時代の祭礼を令和の時代に再現する試みです。

金龍の舞

通常は浅草寺の行事で披露される「金龍の舞」が、待乳山聖天の回廊を舞います。全長18メートル、重さ88キロの金龍が躍動する姿は、当山の創世神話を視覚化するものです 。



いいなと思ったら応援しよう!

さとうかよこ(きらら舎) いただいたサポートは、著書特典やきらら舎にて還元していきたいと思います。