男女逆転シンデレラ(仮)(note創作大賞2024オールカテゴリ部門応募作品)

(以下、作品概要)
タイトル:男女逆転シンデレラ(仮)
スタイル:演劇脚本(実際に演じたことは無いため、あくまで想定です)
あらすじ:誰もが知る有名童話「シンデレラ」。これはそのシンデレラの物語。しかし、この世界では少し様子が違うようで……。誰にも言えない秘密を抱えた人々の、輝く愛の物語。
その他注記:この台本は作者X(@kirasukemegane)に連絡していただければ、自由に演じていただいて構いません。セリフも演じやすいように変えていただいて大丈夫ですが、登場人物の追加・削除及び作品の大筋、結末を変えることはご遠慮ください。
また、クレジットに脚本作者として「無名無実」の名前で表記をお願いします。
【2025/08/17追記】※重要‼️
使用許可は不要です!
「使います」もしくは「使いました」という報告さえあれば、許可なしで自由に演じていただいてOKです!
ありがたいことにTwitterの方でたくさんご連絡を頂いているのですが、フォロー外のDMには気づかないことが多く……(お返事が間に合わなかった方には本当に申し訳ないです)
なので、なんでもいいから報告さえしてくだされば、既読がつかなくても返事がなくても大丈夫です!安心して練習や準備の方を進めてください!

また、決定稿として脚本形式のPDFファイルを用意しました。記事版と細かい部分が異なりますが、PDF版の方が決定稿です。
印刷して練習などにお使いください。

(以上、作品概要。以下作品本編)

男女逆転シンデレラ

シーン1 シンデレラの家、部屋

 (暗い状態でナレーション)
ナレ「昔々あるところに、シンデレラという心優しい少年がいました。少年は母親の再婚相手とその連れ子である継兄に毎日こき使われ、いじめられていました。ほら、今日もこんな風に…」
 (照明がつく。ドレスを着せられてうんざりした表情のシンデレラと、その周りで大笑いしながら髪や服を整えている継兄ふたり。兄はシンデレラの周りを回りながらわちゃわちゃと準備をしている)
兄1「ここもうちょっと整えて」
兄2「ビビディ・バビディ・ブーって感じで」
 (兄二人がシンデレラの両サイドに立ち、満足げにうなずく。)
兄1「よし、できた!傑作だな、これは」
兄2「(笑いながら)よく似合ってるぞ、シンデレラ!」
シン「そりゃどうも、うれしいよ…(心底うんざり、といった顔)」
兄2「仕上げにこいつだ、ガラスの靴~!(ドラえもん的なノリで取り出しながら)」
シン「なんだよそれ、どっから持ってきたんだ?」
兄1「隣の家からパクっ…じゃない、借りてきたんだ。お前の繊細な(笑いながら)イメージにピッタリかと思って…」
 (兄2がシンデレラの足元に靴を置く。シンデレラはしぶしぶそれを履く。)
兄2「さあ足を出して、おお、サイズもぴったり!これで舞踏会の準備はばっちりだな!」
 (兄二人が拍手する。シンデレラは不満げに腕を振り回す。)
シン「いやちょっと待て!そもそも何で俺は女装させられてるんだ?」
兄1「そりゃあお前、今日の舞踏会は王子様の婚約者を決める舞踏会だからな。当然、国中から女の子が集まる」
兄2「そこに潜り込んで、カワイ子ちゃんをナンパしようってわけ」
 (兄1と兄2が二人でお揃いでポーズを決める)
兄1・2「付き添いは二人まで無料」
兄1「…と、いうわけだ。ぶっちゃけ入れさえすればいいんだから、お前は適当に壁の花でもやっててくれ!」
兄2「まあお前なら壁の花じゃなくて壁のシミってところだな!」
 (兄1と2が顔を見合わせて大笑いする。シンデレラはあきれたようにため息をつくが何も言わない。)
 (外でホイッスルの音がする。馬車の走る音。御者が吹いたホイッスルのようだ。)
兄2「お、特注の馬車が来た!」
兄1「かぼちゃみたいな馬車なんてインパクト抜群、女の子ウケ間違いなし!さ、行くぞシンデレラー!」
 (兄1と兄2はヒールに苦戦するシンデレラを気にせず走り去っていく。シンデレラがヒールでふらふらと歩きながら去っていくのに合わせて舞台暗転。)

シーン2 お城の王子の部屋

(王子様とメイドが入る。暗転したままでナレーション。)
ナレ「こうしてシンデレラは女の子として舞踏会に行くことになってしまいました。この秘密は絶対にばれてはいけません。ですが、どうやらその舞踏会の主役にもそんな秘密があるみたいです。」
 (照明がつく。王子は不安そうにしている。その近くでメイドは部屋の掃除をしている)
王子「…今日は、ついに婚約者を…はあ…」
メイ「大丈夫ですよ王子様、別に今日決めるってわけじゃないんですから。きっといいひと見つかりますよ」
王子「ありがとう。…しかし、結婚したら僕の秘密を明かさざるを得ない。…きっと相手はがっかりするだろうね…」
メイ「そんなことありません!王子さまは素敵な人です、女の子でも!」
 (メイドの言葉に王子がはっとして口元に指をあて、「静かに!」のポーズをする。メイドは慌てて口を手で覆い、周りを見回す。誰もいないことを確認すると王子に近づいてすみません、と謝った)
メイ「ごめんなさい、思わず…」
王子「次からは気を付けて。僕が…本当は女だってことは、絶対に、絶対にばれてはいけないんだから。」
 (メイドは口をふさいでうんうんと懸命にうなずく。)
王子「とはいえ、いつもキミには助けられているからね。本当にありがとう。」
メイ「ええ、これからも一番のメイドとしてしっかりおそばにつかせていただきます!」
王子「ありがとう。…そろそろ時間だ、行こう。」
 (舞台暗転。)

シーン3 お城、舞踏会

 (音楽がかかる。照明がつく。華やかな人々がこなれた感じで談笑している中、シンデレラが肩身が狭そうに歩いている。その中の一人と肩がぶつかり、あわあわと謝る。)
シン「ご、ごめんなさい!」
セレブっぽい女性「いいえ、お気になさらず」
 (シンデレラのあまりの芋っぽさに、通り過ぎた後その女性たちはくすくすとシンデレラのほうを見て意地悪く笑う。シンデレラはとぼとぼと歩く。
隅っこの窓にカーテンがかかっているのに気づき、これ幸いとばかりに中へもぐりこむとそこには王子がいた。慌ててぺこぺこと謝りあう二人。)
シン「悪い…じゃなくて、すみません。わたくし、気づきませんでした」
王子「ああ、こちらこそ変なところにいてすまない。君もパーティーが苦手?」
シン「ええ、そうなんですの。兄貴…ではなくお兄様たちに無理やり連れてこられまして。早く帰りたいですわ」
王子「わかるなあ。僕もこんなところ、さっさと出たいけど…そういうわけにもいかないから。ちょっと隠れてた」
シン「大変ですわね。わたくしのことはお構いなく、どうぞごゆっくり」
王子「ありがとう。…君は王子…様の婚約者になりたいとは思わないの?てっきりみんなそのために来ていると思ったんだけど。」
シン「とんでもない!まっぴらごめんだ!…ああいえ、わたくしなんかが王子様に気に入られるはずありませんもの、そんな叶わない夢だったら最初から見ない方がいいって意味でのとんでもないってことで…別に王子様をけなしてるとかそういうわけじゃ…」
 (慌てて周りを見回すシンデレラ。王子はくすくすと笑い、シンデレラに一歩近づく。)
王子「いいさいいさ、思いっきりけなしてやれ!王子だか掃除だか知らないけど、気取ってるんじゃないぞ!ってね!」
シン「ちょちょちょ、聞かれたら殺されますわよ!しーっ!」
 (慌てるシンデレラと大笑いする王子。一通りわちゃわちゃしたあと、シンデレラがはーっとため息をつく。)
シン「でも、何だかわたくし、王子様を悪い人とは思えないですわ。会ったこともないし分からないのですけれど…もし悪い人だったとしても仕方ないと思います。だってこのパーティー、みんな『王子様に気に入られて、いい思いをしよう』って感じ見え見えなんですもの。気の許せる人が近くにいないって辛いことですわ。そう思いませんこと?」
 (シンデレラの言葉に王子驚いたように目を見開き、力強く頷く。)
王子「そう!僕もそう思うよ。本当に息が詰まりそう。王様も大臣も家来たちもみんな王子を利用しようとしてる。お城の中じゃどこにも休まるところがない。」
シン「そうなんですの、ずいぶんお詳しいのね…それじゃあ、ますます王子様のことが心配ですわ。わたくしも家じゃ周りに意地悪されてばっかりで大変ですから…なんだか気持ちがわかる気がします」
王子「キミもそうなんだね。うん、そうだ、王子なんて嫌なことばっかりさ。食事はやたら多いし、先生は厳しいし、外でも遊べないし!」
 (シンデレラ、その言葉に不審そうに王子を見つめる。王子はその視線に気づいて、シンデレラと目を合わせて微笑む)
王子「…でも、悪くないこともある。この舞踏会を開かなかったら、キミとは出会えなかった。」
 (王子、シンデレラの手を取って必殺キラースマイル。シンデレラ、何か猛烈に嫌な予感がして後ずさる。)
シン「な、何をおっしゃって…」
王子「キミとは気が合いそうだ。ねえ、良ければ僕と…」
 (その時外から御者のホイッスルと、兄1の「おーい!帰るぞ!」という声。シンデレラはこれ幸いとばかりにばっ!と手を振り払って慌ててぺこりとお辞儀する。)
シン「あーいけない、兄貴が呼んでますわ!もう十二時ですものね!ごめんあそばせ!さよーならー!」
 (そう言うとシンデレラはすたたたと走り去っていく。その後ろ姿に向かって)
王子「待って!名前を…!」
 (シンデレラがガラスの靴を片方落とす。王子はそれを拾う。シンデレラその隙に逃げる。シンデレラ舞台袖へ。王子はしばらく走り去っていった方を見つめているが、ガラスの靴を見て決意したようにうなずく。)
 (舞台暗転。)

シーン4 シンデレラの家、外観

ナレ「次の日の朝、シンデレラがいつものように洗濯物を干しに外へ出ると、そこには隣の家の娘がいました。」
 (照明付く。メイドの子が道を箒で掃いている。そこにシンデレラが洗濯物かごを抱えて現れる。二人は気づいて手を振り、「おはよう」とあいさつをする。)
ナレ「ふたりは昔からの友達です。互いに召使として働いていることもあって、よく話をしていました。」
メイ「今日はいい天気ね、お洗濯日和じゃない?」
シン「そうだな。シーツも洗ったらいいかもしれない。ていうか、今日は仕事は休みなのか?」
メイ「ああそうなのよ、昨日はパーティーの準備で大忙しだったろうから今日は休めって。本当に王子さまって気づかいのできる素敵な方よね。」
シン「ああ、パーティーな、お疲れ様…」(昨日の出来事を思い出して渋い顔)
メイ「そういえば、昨日お兄様たちを会場でお見かけしたけど、どうしたの?どなたかに付き添い?」
シン「え!?あ、ああ。まあ、そんなところだよ。彼女と一緒に行ってくるとか言ってやたらうきうきしてたなー…」
メイ「ほんとうに?なんか片っ端から女の子に声をかけてるように見えたけど?」
シン「そ……そうなのか?いやー、さすがあいつらクズだな…あはは…」
メイ「なーんか怪しいわね…もし王子様の名前に泥を塗るようなことがあったら、いくらあんたのお兄様でも容赦してあげないんだから。こう!よ、こう!」(箒を勢いよくぶん回す。その勢いにひきつった笑みを浮かべるシンデレラ。)
メイ「まあいいわ。それより王子様はどうやら昨日のパーティーで婚約者を見つけたみたいなの!本当にうれしいわ、見つからないと思ってたから…これで安心ね。あーあ、でも、できることなら私が嫁ぎたかったなあ!」
シン「(苦笑い)…ん?でも、そんなに素敵ならどうして婚約者が見つからないんだ?昨日のパーティーにもあんなに人がいた…(やべ、と口を押えて慌ててごまかす)…って兄貴も言ってたのに。」
メイ「そりゃ、だって、王子様はおん…」(言いかけて固まる。)
シン「おん?」
メイ「おん、おん、おんどりみたいにそそっかしい方なんですもの!いやーこの前なんて紅茶に入れる塩と砂糖をお間違えになったのよ、おほほほほ!」(とにかく笑ってごまかせという感じ。)
シン「なんだそりゃ!…まあでも、好きな人だったらきっと、そそっかしいところでも好きになっちゃうよな…」
メイ「急にどうしたのよ。何?好きな人でもできた?」
シン「ん!?いやいや、何でもない。」
メイ「ほんとうにー?」
シン「本当に!」
 (メイドはいぶかしむようにシンデレラの顔を覗き込み、シンデレラは気まずそうに目をそらす。その時、シンデレラ家で養父がシンデレラを呼ぶ声。)
養父「おい、シンデレラ!遅いぞ、今すぐ戻ってこい!」
シン「やばい!(声の方向に向かって呼びかけるように)はい!ただいま!(メイドに向き直って)じゃあ、またな!」
メイ「あ、ちょっとー!」
 (シンデレラが走っていく。)

シーン5 シンデレラの家、母の寝室

(暗転せずにセット入れ替え。シンデレラ家のセットに。その中をシンデレラ走るふり。セットが変わったところで養父とシンデレラ母が登場。「でも…」「違う。いいかい、私が言いたいのはね…」と何か言い争いのように話し合っている感じ。シンデレラが到着すると養父はシンデレラをぎろりとにらみつける。)
養父「遅い。一体どこで油を売っていたんだ。」
シン「ごめんなさい、お父様…」
養父「やることは山ほどあるのだ。ぐずぐずすることは許さないぞ!罰として今日は昼食と夕食を抜きだ!」
母「そんな、あなた…!」
養父「(母の方を向いて)私はシンデレラを愛しているからこそ厳しくしているんだ。シンデレラは叱られて伸びるタイプなんだ。そうだろう?」
シン「…ええ、はい。」
養父「そうだよな。さあシンデレラ、次はかまどの掃除、その次は馬の手入れ、その次は皿洗いだ。一秒たりともサボるんじゃないぞ。そのあとだってまだまだ仕事はあるんだからな」
母「お、お言葉ですがあなた、それではシンデレラが倒れてしまいます!皿洗いだけでもわたくしにやらせて…ごほっ!ごほっ!(母が病気のために激しくせき込む。)」
シン「母さん!」(シンデレラ、駆け寄って母の背中をさする。)
シン「いいんだ母さん、俺は大丈夫だから…ゆっくり休んでて。」
母「でも…」
養父「シンデレラ!このように母を疲れさせて、恥ずかしくないのか!早く仕事をしろ!」
シン「…わかりました」
 (シンデレラ、母に微笑んで見せ、立ち去る。養父はふんと鼻を鳴らし、母は心配そうに見送る。父と母退場。)

シーン6 シンデレラの家、外観(台所の外)

(暗転せず、セットを外に変え、かまどなどの小道具を出す。
シンデレラが登場する。灰まみれになりながらかまどを掃除するシンデレラ。先ほど養父に言われたことを思い出しながら悔しい気持ちでいっぱい。)
シン「ちくしょう!なんだよあの野郎、何が叱られて伸びるタイプだ!偉そうにしやがって!くそ…」
 (悪態をつきながらかまどを力任せにこする。そうしていると、隣の家がにわかに騒がしくなる。大勢の人のざわめく声とファンファーレの音がして、シンデレラは顔を上げる。)
シン「なんだ?なんか騒がしいな…」
 (シンデレラ、掃除道具を持ったまま外に出る。メイドと王子の従者入場。メイドの家とメイドの前に従者たちが立っている。王子はガラスの靴を持っている。それを見たシンデレラ、驚く。とっさに陰に隠れて見るシンデレラ。)
シン「あれ、あの靴…昨日俺が履いてた…!なんでお城の人達があの靴を持ってるんだ?…まさか…!」
従者1「王子様は先日の舞踏会にて、このガラスの靴を履かれていた方をお探しである!」
従者2「このガラスの靴がぴったり合う方は、どのような身分であれ、どのような家柄であれ王子様の婚約者となられる!これは王命である!」
シン「じゃあ、やっぱりあの人は王子様だったんだ…!」
従者1「この家にも娘がいると聞いた。足を出し、このガラスの靴へあててみよ!」
 (メイドも見覚えのあるガラスの靴に驚いている。緊張した顔でガラスの靴へ足をそうっと差し入れる。)
従者2「…!」
 (従者が顔を見合わせ、うなずいた後、高らかにファンファーレを吹き鳴らす。)
従者1「おめでとうございます!あなた様こそが、王子様がお探しの人であります!」
 (従者たち拍手。)
従者2「王子様がお城でお待ちでございます。さあ、こちらの馬車に。」
 (メイドは一瞬驚いたが、何の異論もいわず、嬉しそうに案内されていく。)
シン「そうか、あのガラスの靴、たしか兄貴が隣の家から借りてきたって…。だから…」
 (シンデレラ、メイドの方を見る。メイドは幸せそうだ。)
シン「そっか。あいつ、王子様と結婚したいって言ってたからな。あいつならきっと上手くやるだろうし…。これでいいんだ、そうだよな…」
 (シンデレラ、モヤモヤとした気持ち。メイドたちに背を向け、走り去る。暗転。)

シーン7 シンデレラの家、母の寝室

 (照明付く。シンデレラ、母の部屋に入る)
母「シンデレラ、外が騒がしいみたいだけど何かあった?」
シン「そうそう、そうなんだよ。隣の家に王子様の従者たちが来ててさ。あの隣の子、王子様の婚約者になるらしいよ。おめでたいよな、なんか花とか持って行ってあげようかな…」(と言いながらもどことなく浮かない顔。母はその様子を目ざとく見抜く。しかしまさか王子様の方を取られてしまって落ち込んでいるとはおもわず、メイドの子が好きだったんだと勘違い。母は早合点して優しく微笑む。)
母「そう。それは素敵ね。シンデレラ、こちらへ来て。
あなた、なにか言いたかったことがあるんじゃない?そんな顔をしているわ。」
シン「…そうかな?」
母「ねえ、なにか言いたいことがあったなら、ちゃんと言ってきなさい。シンデレラはいつも自分のことを我慢しているから…たまには言ってもいいと思うの。
これ、少しだけど。(シンデレラの手に硬貨を握らせる。)これでお花を買って、会いに行ってきなさい。」
シン「母さん…」
 (シンデレラと母は頷きあって、シンデレラは走って行く。疾走感のある感じで。母退場、兄ふたり登場。)
シン「兄貴!こないだ着せてくれたドレスとか、どこにある?」
兄1「1階のクローゼットの奥にあると思うけど…」
シン「出してくるから、着るの手伝ってくれないか!?」
兄2「はあ!?何言ってるんだよお前!?」
シン「事情があるんだ!何も聞かずに手伝ってほしい、頼む!」
兄2「手伝えだなんてお前、シンデレラの分際で偉そうに…」
兄1「(兄2を制止する)いや、わかった。すぐ持ってこい。」
兄2「お前まで何言い出してるんだよ!」
兄1「分からないのか、ナンパ野郎として恥ずかしいぞ!(シンデレラに向き直って)どうしても会わなきゃいけない人がいるんだろ、シンデレラ。当たって砕けてこい、それでこそ俺の弟だ!」
シン「兄貴…」
 (兄1がにっと笑って親指を立てる。)
シン「兄貴…お前のこと大嫌いだったし、今も好きじゃない、けど……ありがとう!」
兄1「さあ、そうと決まったら早く行くぞ!」
兄2「あーもう、しょうがねえなあ!」
 (一度退場、ドレスに着替える。シンデレラは片手にガラスの靴を持っている。出てきたシンデレラと兄ふたりの前に養父が立ち塞がる。)
養父「何をやっているんだ、お前たちは!」(心底意味がわからないと言った感じで)
兄1「親父!」
シン「いいよ、兄貴。
お言葉ですがお父様、俺は行かなきゃいけません」
養父「ふざけるのもいい加減にしろ!自分の服装をよく見てから言え!(兄たちを指さし)お前たちも何を黙っているんだ!」
シン「…さい」
養父「はあ?」
シン「うるさいっつってんだよ、このクソ野郎!いつもいつも偉そうにしやがって、いい加減にするのはお前の方だ!」
 (シンデレラ、養父を突き飛ばして走り出す。)
養父「なんだと、このガキ!」
 (追いかけようとする養父を兄たちが後ろから抑える。)
養父「お前ら、クソっ!離せ!」
 (暗転。)

シーン8 お城、王子の部屋

 (花嫁衣裳のメイドと王子、登場。ナレーション。)
ナレ「こうして、シンデレラは自分の気持ちを伝えるため、城へと走り始めました。果たしてシンデレラは王子様に会えるのでしょうか?
一方その頃、お城でも…」
 (照明がつく。)
王子「まさか、あの人が君だったなんて…驚いたけれど、良かったと思う。それにしても、あんなに綺麗なドレスにいつの間に着替えたんだい?」
メイ「え、ええ、それは…親切な魔法使いの方がいらっしゃったの。その人に魔法をかけていただいたのよ。」
王子「そうか。その人にもいずれお礼をしなくてはね。…それじゃあ、改めて。よければ、僕と結婚…」
 (メイドは期待を込めた顔で王子を見ている。王子は手を取る。しかし、そこで固まる。)
王子「……」
メイ「…ど、どうなさいました?」
王子「…違う…。何だか、違う気がする。キミじゃない気がするんだ…」
メイ「何をおっしゃいますの?そんなはずないじゃありませんか、昨日会ったのにもうお忘れに?」
王子「そうだよな、そんなはずないよな、だってガラスの靴がぴったり履ける人なんてそう何人もいないわけだし…でも…」
 (メイドうつむく。)
王子「…やっぱり、君じゃない。僕が出会ったあの人は君によく似ているけど、君とは違う…」
メイ「……さすがですね、王子様。本当に、細かいことによくお気づきになる。ええ、そうですわ。確かにわたしは王子様がお探しの方ではありませんわ。」
王子「そんな…どうして何も言わなかったんだ。君のことは信じていたのに…」
メイ「あら、お気づきにならないの、王子様?」(メイド、顔を上げる。)「王子様が好きだからに決まっているでしょう?絶対に結ばれないと分かってたから言わなかったのに…ねえ王子様、女でもいいなんて、身分が低くてもいいなんてどうして言ってしまったの?そう言われなければわたし、一生あなたのおそばでお仕えして満足だったのに。こんな風に、苦しい思いをしなくて済んだのに!」
王子「……ごめんね。本当に、ごめん…」(王子、泣くように顔を手で覆っているメイドを抱きしめる。)「キミのことが好きだ。でもそれは友達としてで、恋人としてではない。どうか僕のことを嫌いにならないでおくれ。君の望みには応えられないけど、君のことが本当に大事なんだ…」
メイ「ええ、いいんです…嫌いになんかなりませんわ。王子様が幸せになってくれれば、それでわたしは嬉しい。その方のことはすごくうらやましいけど…早くその方をお探しになって。ガラスの靴のもう片方を持っている、本当の運命の人を見つけてください」
王子「ありがとう、僕、行ってくるよ」
 (暗転。メイドと王子退場。)

シーン9 お城周りの森

ナレ「互いを探して走る王子とシンデレラ。シンデレラは街をぬけ、お城のふもとの森の中までやってきました。しかしそこには、恐ろしい狼が住んでいたのです」
 (シンデレラ走って登場。後ろを気にしながら、逃げるような感じ。遠くで狼の鳴き声。シンデレラは肩で息をして、うずくまる。)
シン「はあ、はあ…どこまで行ったら逃げられるんだ!このままだと普通に死ぬ!」
 (狼が登場。シンデレラに襲いかかろうとする。シンデレラ、一撃目は避けるが次はもう避けられない。絶体絶命のピンチ。)
王子「はあっ!」
 (王子が走ってきて、気合一閃狼を切りつける。狼、倒れる。)
王子「大丈夫かい?」
シン「おかげさまで…あなたは、もしかして王子様?」
王子「そうだが…君は、もしかして…。この靴に見覚えはないかい?」
 (王子、ガラスの靴を取り出す。シンデレラも片手に持っていたガラスの靴のもう片方を取り出そうとした時、後ろで狼が起き上がる。シンデレラ、それを見てとっさに手にあったガラスの靴を狼に向かって投げつける。驚いて振り向く王子。狼は逃げ、ガラスの靴は砕ける(音で再現)。明らかに女性の力では無いその腕力にびっくりして狼の逃げた方とシンデレラの方を交互に見回す王子。)
シン「あっ……」
王子「いま投げたのって……それよりキミ…」
シン「あー、えっと、そのー…」
王子「格好は女の子だけど…もしかして男、なのかい?」
シン「…え、ええ、まあ…あはは、バレちゃったな…そうなんだ、昨日は兄貴に無理やり女装させられててさ。ほんと、こんなことになっちゃって困ったよ、はは…」
 (あまりの驚きに完全に言葉を失う王子。シンデレラ、立ち上がって王子の方を見つめる。)
シン「でも、王子様、俺は本気であなたのことを好きになった。結婚してくれなんて絶対に言わない。でも、どうか俺のことを覚えていてくれ。それだけ、それだけが言いたかったんだ。…本当はこんな風に言うはずじゃなかったんだけどな…」
 (その言葉に、王子は思わずシンデレラの手を強く握る。)
王子「実は、実は僕も…」
 (暗転。王子のみにスポットライト。王子は固まる。暗闇から、王子が今まで言われてきた言葉の声がする。)
声1「たった一人の子が女だなんて」
声2「王国ももう終わりだな」
声3「いい?あなたは男として生きるのよ」
声4「男でなければ王位は継げない」
声5「男でなければ」
声(たくさん)「男でなければ、男でなければ…」
 (王子はその声を振り払うように頭を振り、暗闇に向かって叫ぶ。)
王子「ああ、そうさ!僕は誰にも望まれなかった!でもそんなの気にするものか!自分が何であるかは決められない。けれど、自分が何になるかは自分で決める。僕は、この人と結ばれる!」
 (照明つく。王子、シンデレラの両手をとる)
王子「実は僕も、本当は女なんだ!今まで黙っていてごめん!」
シン「えー!?何それ!?」
王子「そうなんだ、僕はキミだけじゃなく国民のみんなもずっと騙していた。僕はずるい奴だ。けれど、そうするより他になかった。」
シン「待って待って待って、ちょっと待ってくれ…じゃあ、俺は本当は男で、あなたは本当は女で…」
王子「そう。笑っちゃうくらい不思議だろ?」
シン「ほ、本当に笑うしかないな、これは…」
王子「それで、僕からもキミに言いたいことがあるんだ。(王子、跪いてシンデレラの手を取る。)
君のことが好きだ。どうか僕と結婚してほしい。」
シン「……」(一瞬びっくりするが、すぐに笑顔になって手を取る。)
シン「ええ、喜んで!」
 (暗転。)

シーン10 お城、舞踏会

ナレ「こうしてめでたく結ばれた2人は、数日後、国中の人を招待して大々的に結婚式を行いました。この数日の間に、二人の間で決められた約束事。それは…」
 (照明がつく。ドレスを着たシンデレラと男装のままの王子様、それからメイドと兄ふたりが並んでいる。)
メイ「…それで、本当にこのまんまで行くのですね?」
王子「ああ。君も知ってのとおり、今更僕の正体を明かす訳にはいかない。だから、このままでいいんだ。」
シン「ええ、王子様はともかくわたくしは不安ですけれど…精一杯がんばりますですわよ」
兄2「いやーしかし我が家から王族が出るなんてな、しかも弟…ぎゃっ!(メイドに足を踏まれて黙る兄2。)」
王子「僕たちの秘密は君たちしか知らない。こっそりどこかに告げ口しようとしても無駄だよ。お兄様たちはシンデレラのお付の兵隊。キミは変わらず僕のメイド。いつも必ず僕たちがそばにいるんだからね」
兄1「はーあ、こんな面白い話、街の女の子たちにしてやりゃ大ウケだろうに…しょうがない、城のメイドをナンパするか」
メイ「でも、変わらずわたしをお傍に置いていただけて本当に嬉しいです!」
王子「もちろんさ、キミは僕の一番のメイドなんだからね。
(王子、シンデレラの手を取って)さあ、そろそろ行こうか!」
シン「はい!」
 (みんなで頷きあって、舞台袖にはける。一度暗転。ナレーション。)
ナレ「王子様は王子様のまま。シンデレラはドレスを着たまま。大きな秘密を抱えた2人と仲間たちは、力を合わせて、末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。」
 (暗転している間にキャスト出てきて並ぶ。照明つく。礼。)

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