3年4組のルーズリーフ
「松本、あのさぁ……いくら勉強が面倒でも、さすがに教科書の丸写しはダメだろう?」
自学記録をチェックしていると、必ず一人は教科書を丸写しするやつがいる。勉強なら、ドリルやテストの過去問を繰り返し解いたほうが効率が良いと俺は考える。試験前なら尚更だ。
「このやり方だと、第一志望には行けないと俺は思うんだけど……」
「んだよ、俺はこのやり方がしっくり来るんだよ」
ほら、これだ。口を開いたらすぐ反論する。思春期なのは分かっているが、成績の下がり具合からさすがにこれはまずい。
俺はこいつの担任だ。生徒たちが行きたい高校に入れてやりたい。それは俺の責務だ。生徒たちのために徹底的に指導しなければ。
本人が納得行かなければ納得するまで話し合う。気付けば俺はヒートアップしていた。主任に止められるまで、効率良い勉強法を松本に伝え続けた。
「……分かったよ」
松本はガンを飛ばすのをやめた。
🗒️
相変わらず教科書を丸写ししているなぁ、松本は。でもたまに数学をやるようになったか。伸びしろはあるが、それは本人次第だろう。
それに比べて脇田はすごいな。反復学習が身についている。点数も申し分ないし、ルーズリーフの枚数も他と比べて多い気がする。本番同様に問題を解いているんだろう、な……ぁぁあああ!?

なんだこれ!? ノートテイキングがぐちゃぐちゃすぎる!けどよく見たら……関連している!?
「先生、今日の日直記録です」
脇田!?
「あ、あぁ……お疲れ」
「あ、私のやつ。このやり方、頭にスーっと入るんですよね。これでまとめてから問題解くと間違えにくいんですよ」
「……脇田さぁ、ちょっとお願いがあるんだけど」
「……何でしょう?」
「実は……」
🗒️
物分かりが良い生徒でよかった。帰りのHRで脇田の勉強法をクラスでシェアしたら全体の成績がグッと上がった。生徒もあの方法でやるようになったしな。そりゃそうだ、大絶賛だったし。結構衝撃的だったもん。
無事にクラス全員が志望校に合格したし、俺は俺で担任として最後のHRをすることにしよう。あいつら、俺に隠れて何か準備してたっぽいけど……生憎サプライズには慣れているもんでね。それでも泣いちゃうのは……
「重部先生」
脇田か。
「先生は私たちのことを自分の道具としか見ていませんでしたね。みんな、全部分かっていましたよ」
至近距離で顔面から何かが飛んできた。教卓を見ると、自学で使っていたルーズリーフが落ちていた。
「もう、あなたの言いなりにはなりたくありません」
脇田はルーズリーフを破き出し、教室中にばら撒き始めた。他の生徒もこれに続く。
3年4組の教室は、俺に向けられた罵詈雑言とルーズリーフの紙吹雪でいっぱいになった。
大量の紙吹雪の隙間からゴミ箱が見える。そこには、自学ファイルの山が築かれていた。
そして、一人の生徒が教室を出て行く。最後まで俺に楯突いた松本だった。
「……しょーもな」
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この物語はピリカさん主宰企画「秋ピリカグランプリ2024」応募作品です。
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