見出し画像

コンタクトシートの中の『Heroes』

1977年4月。

原宿にある、商品撮影用の小さなスタジオで、デヴィッド・ボウイとイギー・ポップの撮影が行われました。

この撮影はレコード会社からの依頼ではなく、鋤田さんが2人に

「撮影させてほしい」

と直接オファーしたところから始まったので、ジャケットのための撮影ではなかったのです。

撮影は、イギー・ポップを約1時間、デヴィッド・ボウイを約1時間という流れで進められたといいます。

このセッションから、後にボウイの『Heroes』、そしてイギー・ポップの『Party』のジャケットが生まれていきます。

撮影のあと、鋤田さんはセレクトしたプリントをボウイに渡されたそうです。

その写真をボウイ自身がとても気に入り、数カ月後、アルバムジャケットとして使いたいという意向が伝えられ、『Heroes』の象徴的なビジュアルとして採用されることになりました。

あの印象的なポーズについては、ドイツ表現主義との関連など、さまざまな解釈が語られています。
ただ、それはあくまで後からの見方であり、ボウイ自身がその意味を明確に説明していたという記録は殆どないように思います。

だから少しだけ、コンタクトシートに目を向けてみます。

左の下から上へ、そして右の下へ続き、前髪をかき上げたあとが、このショット(右上)。

そこに写っているのは、完成されたポーズというよりも、動きの途中の連続です。

髪をかき上げる流れの中で、手が前髪に触れ、そこから離れていくまでの時間が、そのままフレームに残っています。

あの一枚は、その流れの中のほんの一瞬で

作られた形というよりも、動きの途中でたまたま立ち上がった瞬間に近いものに見えます。

鋤田さんは、その“途中”をそのまま切り取った…

コンタクトシートに並ぶ前後のカットを見ていると、そのことが少しずつ見えてきます。

ポーズというよりも、動きそのものの流れの中に、あの一枚が存在しているように思えてきます。

整っているようで、どこか不安定…

その中にボウイの静かな視線が重なります。

どこを見ているのか分からないようでいて、確かに何かを見ている目。

その距離感が、この写真をただのポートレートではなく、ひとつの時代のイメージへと押し上げていったのだと思います。

※コンタクトシートには、鋤田さんが選んだものとして『S』、デヴィッドが選んだ『×』マークも。

1977年のあの一瞬が持つ静けさと緊張感は、今もなお、写真の中に残っているように感じます。

「デヴィッド、あのポーズってさ?」

これも愚問(苦笑)

また静かな微笑が返ってくるような気がします。

『No.6』が、後にHeroesのジャケットに。
ISOLAR Ⅱ ツアーパンフレット。表紙はデヴィッドが描いたもの

いいなと思ったら応援しよう!