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妄想日報 6月14日「水無月」

8:46出勤。
次長が昨今お近づきになったオフィス装花にいらっしゃる女性。水無月さんという、どことなく風雅で格調高いお名前のかた。それはお名前だけにはとどまらず
「アタクシどもの水無月って、旧暦と同じ名前でござアいましょう?旧暦の名がそのまま冠されたお菓子って、上生菓子を除いたらアタクシどもくらいなものでござアいますから」
といったお家柄とお話しぶり。
次長はそんな水無月さんと少し前から次第に気心を通わせ、ついにはご生家のほうへもご招待されるほどの仲となったらしく
「アタクシどものほうで、夏越の祓え(なごしのはらえ)として、次長さん、アナータのココ半年の厄を祓アって差し上げて、来たる半年の無病息災をお祈り差し上げよう、ナアンテ思オっておりまして」
まことに懇切なご提案を受けたらしい。
ところが、その予定だった今月末を前にして、残念なことに次長と水無月さんには些細な行き違いが生じてしまったそうで
「まあ、コッチは感情的にはなってないよ。でも客観的に見ても、あの人もなんかこう変に図々しいところはあるからさ。少し世間知らずっていうかさ」と次長。
「客観的」とは言いながら、そうとう憤まんやる方なしといった様子のご意見は止まらず
「客観的に、あのういろうみたいなねっちゃりした感じ、あんまり良くないと思うんだよね。だいたいあの三角の先のとんがった態度はダメだよ。かわいくないもの。客観的に見てね。
たしかに、あの小豆みたいな甘さは素敵なところだと思う!思うんだけど、小豆を上にずらずらずらーっと並べて沢山の目でコッチ見てくるような視線。アレひとによっちゃあ寒気するんじゃないかなあ?うん、客観的に」
聞いている皆は「うーん。次長そのご意見は客観的なんですか?」といった顔をする。次長はそんなことお構いなしに
「ま、もしおウチにお招きされてもさ、水無月家ってちょっと田舎の山奥のほうなのね。わたし、おトイレとか気になっちゃうし。
水無月って、『水無し』っていうくらいだから、おウチもまだ『水洗』じゃなかったりシテ?ぼっとん便所?なあんてウチの主人とも話してて。あ、客観的にね。客観的な、地勢条件っていうの?」
と、ここまで我慢して聞いていたテルさんが口を開き
「あ、次長、お言葉ですが。水無月の『無』って、古語では『無い』ではなくて『の』って意味らしく、ハイ。水無月は『水の無い月』じゃあなく『水の月』『水の有る月』なんですよ、たしか」と言った。
次長は客観的に見ても、ちょっとやそっとじゃ水に流せぬほど「ぬかったー」といったクチ惜しげな表情を浮かべていた。

#創作 #短編小説 #日記 #3行日記 #水無月 #ういろう #小豆 #なんのはなしですか

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