妄想日報 6月24日「政子」
8:47出勤。
帰りぎわ、次長とユミさんが何やら意気投合して騒ぎだす。「ね!ね!でしょ⁈」「わ、ですね!ですね!これはコワイ!」
聞くところ「スマホがひとのハナシを勝手に聴いている」「聴き耳たてている」とのこと。これまでも、とくに検索などもせず、だれかと話していただけの内容について、関連するモノが広告でオススメされるという事象がたびたびあったとの「問題の報告」。
「ほら見て!いまユミちゃんとしてた『JOYとユージよく間違える』ってハナシ!その記事が紹介されてる!」と興奮する次長。
どんなケッタイな話してんだかと思いながら、次長のスマホを覗いていると
「聴いてるよ〜。いずれの時代も、壁に耳あり、障子に目あり、なあんつって」と、ややオカルト気味の趣きで背後にせまった比企(ひき)課長。
「ちょヨシカズさん!やめてよー」と言う次長に、妙なニヤつきと一瞥を送りながら比企課長は
「これ『吾妻鏡』のお話ね。ボクも、病床に伏せった源頼家公とさ、北条時政をチョイと討伐しようなんて話してたことがあったワケ。
そしたら、障子の向こうに北条政子!政子!政子!政子!
政子がタマタマ立ち聞きしてたっつーんだから!おかげで、反対に討ち取られちゃって比企一族はぜんめつ。まったくポカやっちゃったよね」
これには皆の「障子の向こうで⁈」「立ち聞きされた?」「それは、あまりにウカツすぎなんじゃ…」とういう心の声が聞こえてくるよう。さすがにソコは比企課長のほうも
「いや、ソコおかしいんだよ!そんなことってあるぅ?『愚管抄』でもアリャはなから北条の謀略だって言ってるし。マッ『吾妻鏡』のほうは北条に都合のイイ歴史書だかんな!
それにしても『立ち聞き』テ!現代のドラマのシーンでもよくあるけど『立ち聞き』テ!あんな距離で、ふつーナイショ話なんか聞こえねーだろ!」
比企課長は「立ち聞き」に対し、やたら懐疑と憤激を露わにしたまま、どうやら現代まで継承されてきた「愛され政子の『立ち聞き』メソッド」についてブツクサ言っていた。
その憐れな姿を目の当たりにしたみんなは
「よし!ひとまずこれからは、スマホと、政子と、現代政子たちの『立ち聞き』による情報漏洩には注意だね!」とかたく誓い合った。
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