妄想日報 6月10日「資本論」
8:46出勤。
午後、ウチの部長と難しい話を始める次長。ただし仕事の話ではなく、なおいっそう苦手に感じる年金制度の話。次長のほうも、必ずしもよくは分かっていない様子で
「二階建て部分?それはワカルの。私たち会社員の給与額に応じた厚生年金のトコでしょ?一階部分が国民年金でしょ?ワカルワカル。だから全体の問題点がよくわかってないんだよなあ」
「アー、だからつまりね、少子高齢化や非正規労働者の増加による年金財政の逼迫がマズ背景にあるワケ」と、超ド級の教えたがり屋の部長が答える。
いつもは、きゃっきゃとして話に入っていく皆も本件ばかりはダンマリで仕事に集中。
とそこへ、総務のマルクス部長がご用事でやってきた。次長たちの話を聞きつけると
「二階建て部分の話でしょ?あ、部長さん、ソレはちがう!」と、まずはウチの部長のメンツを軽くまる潰しにしておいて
「二階建てって、要は『上部構造』なんだ。国家などの社会制度とイデオロギーがそれに当たるの。一階部分は『下部構造』。『経済的下部構造』ね。観念論までの哲学史ってのは、全てこの『上部構造』いわば観念のほうを扱っていたんだ。
そこで、わたしは【資本論】以降はコッチの経済的な構造、要は一階部分を論じることにしたんだ。一階部分の問題を解決せずして、二階部分の揚棄も何もないわけだから」
面目まる潰されのウチの部長も黙っていられず
「いやいや、どうも論点ヘンですよ。わたしが言ってんのは年金制度全体の持続可能性と公平性の問題であって、そのためには二階建て部分の…」
「いやちがう!だから二階建て部分の問題、国家やイデオロギーの問題はね、『経済的下部構造』の問題を解決しないことには解決しないってわたしソウ言ってる!ちょっとあなた黙って!
『論点ヘン』?論点ヘンって何だよ⁈
部長さん、それってあなたの感想ですよね?」
と、マルクス部長にピシャリとやられた。
ウチの部長は退社時まで「アレどう考えても論点ヘンだろ?」とくりかえし、もし一緒にいようもんならその恨み節を朝まで生で聞かされるんだろうなと思われた。
