【にゃんクエマスター限定記事】空に帰ったドララ
ポッケ村という小さな村に、クララという女の子が住んでいました。
クララは生まれつき目が見えませんでした。

村の子どもたちは、どう接していいのかわからず、いつしか誰もクララに近づかなくなりました。
そのためクララは、いつもひとりで野原に座り、風の音を聞いたり、花の香りを集めたりして遊んでいました。
(ひとりぼっち、さみしくないかな・・)
それを遠くの森から見ていた一匹の魔物がいました。
青黒い毛、大きな翼、恐ろしい牙。
人間に見つかれば、きっと石を投げられて追い払われる姿でした。
けれどその魔物は、クララのことが気になって仕方ありませんでした。
(この子は目が見えない。なら、僕が魔物だと知らずに話してくれるかもしれない)
魔物は勇気を出して、そっとクララに声をかけました。
「きみ、何してるの?」
クララは少し驚いて、それからにっこり笑いました。
「風の音を聞いているの。あなたは?」
その日から、ふたりは毎日会うようになりました。
魔物は森の話をしました。
木々が夜に歌うこと、月の匂い、雨粒の踊る音。
クララは村の話をしました。
パン屋の朝の香り、川辺の冷たい石、春の花のやわらかな手ざわり。
クララは言いました。
「あなた、お名前は?」
魔物は答えられませんでした。
魔物には名前などなかったのです。
するとクララは嬉しそうに手をたたきました。
「じゃあ、わたしがつけるね。あなたは……ドララ!」
「ドララ?」
「うん。なんだか、やさしい音がするから」
魔物――ドララは、生まれて初めて名前をもらいました。
それがたまらなく嬉しくて、胸の奥があたたかくなりました。
それからしばらく、ふたりの楽しい日々が続きました。
クララが歌えば、ドララは木の枝で笛を作って伴奏しました。
ドララが果物を取ってくれば、クララは半分こにしました。
クララは見えないけれど、ドララが来るとすぐわかりました。
「ドララが来た」
その声を聞くたび、ドララは幸せでした。
けれどある日の夕暮れ。
クララがいつもの野原から帰る途中、森の奥から別の大きな魔物が現れました。
飢えた獣のようなうなり声。
土をえぐる爪。
恐ろしい殺気。
目の見えないクララは、何が起きているのかわからず立ちすくみました。
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