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<読んだもの>特異でロマンな人間関係『千花ちゃんちはふつう』の感想を書く

くらもちふさこ作品が好き

漫画家のくらもちふさこ先生の作品について、文章にしたことがないので記録しておくことにする。

小学生の頃に「なかよし」「りぼん」など、年齢に合ったものを健やかに愛読していた私にとって、初めて目にしたくらもち作品は異質だった。
荒木飛呂彦先生の『魔少年ビーティー』、ジョージ秋山先生『海人ゴンズイ』、大島弓子先生『綿の国星』、日野日出志先生『蔵六の奇病』などもそうだ。

今考えると、いずれも子供に媚びないスタイルゆえの作品だからだと思われる。語弊があるかもしれないが、子供が喜ばなさそうな絵柄、体験したことのない状況、気持ちが汲みにくい機微なセリフや心理などが込められているため、ただの子供の私にはよく分からなかった。
鼻の穴すら描かれていないような、かわいいキャラクターに馴染んでいただけに、少しショックを受けたのを覚えている。

思春期以降の人生経験が増えてくるにつれ、このような作品と私の距離が近づいて新しい宝物が増えていったように思うのだ。


そして『千花ちゃんちはふつう』

マーガレットコミックス全2巻の作品である。最初に別冊マーガレットの連載を読んだのは私が中学生の頃になる。

集英社さんのあらすじは以下の通り。

【義妹としてはミステリアスな義兄が気になる!】未婚のママと2人暮らしだった高校生の千花はママの結婚によって、有名人の父とイケメンの兄を持つメイド付きのお屋敷のお嬢さまになった!…と思ったけど、その内情は不明で義兄・カイの様子も怪しい? 風変わりだけど愛おしい家族のものがたり、第1巻。(紙版1988年2月25日発売)

集英社さん公式より

う~ん、上記の現代風の紹介文は、ラブコメのライトノベルみたいで興味をひかれないから残念である。
例えばメイドっていっても、義父の「おさんどんお願いしている金田シマさん」のセリフにあるように、ただのおばさんのお手伝いさんなのである。
ちなみにシマさんは口が悪く、家の高級なお酒をくすねて夜な夜な晩酌をする。碓井家の亡くなった前妻の死の状況についても詳しく、ふてぶてしさが光るいいキャラクターだ。
「イケメン」って言葉も当時はなかったなあ。

新しいお兄ちゃん

主人公の千花ちゃんが、急に現れたお兄ちゃんという存在にわくわくして、親しくなりたいという気持ちが下敷きにされているものの、それどころではない事情が段々と分かってくる。
感情の揺れがなく、行動にそつがない義兄の碓井カイは、高校の成績はトップクラスだがほとんど登校せず、自宅にもあまり帰らない。株やディスコのアルバイトでお金を貯めているらしい。
千花も同じ学校に編入する。

中学時代のカイが不良に絡まれたときに、ナイフを突きつけた相手の腕を自分に向け、薄ら笑いを浮かべながら顔を切り込んでいった  という噂話が学校で知れ渡っており「みんなカイさんに関わりたくない」存在になっている。
千花のクラスメイトの竹井さんは言う「あの人のやりかたってさ  ヤンキーとはちょっとちがくて品行方正っぽいから  誰にも文句言わせないよーな状態ができあがってて  それがよけーこわいんだよね」

新しい「ふつう」の家族と再生

素直でやさしい千花は、新しい父親やクラスメイトにも愛されるようになる。しかし、距離が少し近づいたように思っていたカイが、自分の名前すら覚えておらず、千花に言い寄る鹿野に向かって言った「私生児ですからね  義兄弟なんてあちこち散乱してるだろーし」というひどい言葉に対して、「わりと  いわれ慣れてるんだ」と涙を流すシーンでいたたまれなくなるのだが、非情そうに見えるカイの言動の理由は、話が進むにつれて「ふつう」の家族への希望が見えてくるような仕掛けになっている。

くらもち先生が描かれる作品は、映画のような余韻のある読後感を残すものが多い。
少女誌に掲載された作品ということもあって、血のつながらない兄妹のラブストーリーを期待する人もいるかもしれないけど、そこは曖昧でわからない。
私はいろいろな愛情が存在する話と思っている。

初めてくらもち先生の絵を模写

素敵な感じにならず

くらもち作品には群像劇が多く、様々な年齢や体型の人物の描き分けが先生はとてもうまい。その時代ごとの流行や話題が取り入れられているところもいい。そして、キャラクターのファッションがいつもおしゃれで嬉しくなる。
なによりも、さりげなく人の温かい思いを描くことや、普遍的なものの表現に優れた作家だと思う。
ではではまた


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