保護者面談で使える、先生からの伝え方テンプレート
面談で、何をどう伝えるか迷っていませんか
私は現役15年目の教員です。これまで数多くの保護者面談を担当してきました。
保護者面談の前、何を話すか準備していても、いざ話し始めると伝え方に迷うことがあります。特に、子どもの課題を伝える場面では、言葉を選びすぎて何も伝わらなかったり、逆にストレートに伝えすぎて保護者を不安にさせてしまったりします。
面談の時間は限られています。その短い時間の中で、伝え方ひとつが、保護者との信頼関係にも、その後の子どもへの関わり方にも影響を与えます。同じ内容を伝えるのでも、順番や言葉の選び方次第で、受け取られ方はまったく違うものになります。
この記事で手に入るもの
この記事では、面談で使える伝え方の型を、場面別にまとめています。あわせて、教育改革で知られる工藤勇一さんと、木村泰子さんという2人の元校長先生の考え方も紹介しながら、なぜその伝え方が効くのかという理由も一緒にお伝えします。
読み終えたときに、次の面談で、最初の一言を変えられるようになることを目指します。
まず今日から変えられること1つ
面談の冒頭を、**「まず、良かった点からお伝えしますね」**という一言から始めてみてください。
課題の前に良い点を伝える順番にするだけで、保護者が身構えずに話を聞けるようになります。人は、いきなり課題を指摘されると、まず自分を守ろうとする気持ちが働きます。その状態では、どんなに丁寧な言葉を選んでも、内容が届きにくくなってしまいます。
場面別・言い換えフレーズ集
【課題を伝える場面】
| 状況 | 言いがちな言葉 | 言い換え |
|---|---|---|
| 提出物が出せていない | 「提出物が出せていません」 | 「取り組む力はあるので、提出のタイミングを一緒に整えていきたいです」 |
| 授業中に集中が続かない | 「集中力がありません」 | 「興味を持つと力を発揮するタイプなので、その場面を増やしていきたいです」 |
| 友人関係で悩みがある | 「トラブルが多いです」 | 「関わり方を今、一緒に練習している段階です」 |
【保護者から不安をぶつけられた場面】
| 状況 | 言いがちな言葉 | 言い換え |
|---|---|---|
| 「うちの子だけ遅れてる」と言われた時 | 「そんなことないですよ」 | 「今、この子のペースで進んでいる部分をお伝えしますね」 |
| 家庭での様子を強く心配されている時 | 「大丈夫だと思いますよ」 | 「学校での様子も踏まえて、一緒に整理してみましょうか」 |
この考え方の背景にある、2人の元校長先生
面談での伝え方の背景にも、2人の元校長先生の考え方が関わっています。
工藤勇一さんについて
工藤勇一さんは、東京都千代田区立麹町中学校の元校長です。2014年から2020年まで校長を務め、宿題の廃止、定期テストの廃止、クラス担任を固定しない制度など、公立中学校としては異例の改革を行ったことで知られています。この改革は文部科学省が視察に訪れるほど話題になり、著書『学校の「当たり前」をやめた。』は10万部を超えるベストセラーになりました。退職後は横浜創英中学・高等学校の校長として、改革を続けています。
工藤さんは、対話の場面において、まず基準や目的を共有することの大切さを繰り返し語っています。何のために話しているのか、何を目指しているのかが先に共有されていれば、課題の指摘も「攻撃」ではなく「共有」として受け止めてもらいやすくなります。
木村泰子さんについて
木村泰子さんは、大阪市立大空小学校の初代校長です。2006年の開校から9年間、校長を務めました。大空小学校は「すべての子どもの学習権を保障する」という理念のもと、障害の有無に関わらず、すべての子どもが同じ教室でともに学ぶという教育を実践してきた学校です。この取り組みを追ったドキュメンタリー映画「みんなの学校」は2015年に公開され、大きな反響を呼びました。45年間の教員生活を終えた現在も、全国で講演活動を続けています。
木村さんは、保護者との対話において、「説得」ではなく「納得」を大事にする姿勢を語っています。大人が一方的に説き伏せようとする関わり方では、相手は表面的に従うだけで、本当の意味では変わらないという考え方です。面談でも、先生が保護者を説得しようとするのではなく、一緒に状況を整理し、保護者自身が納得できる形で話を進めることが、その後の協力関係につながります。
なぜこの言い換えが効くのか
課題を伝えるとき、「できていないこと」だけを伝えると、保護者は防御的になりやすくなります。
工藤さんの、基準を先に決めておくことで対話が対立になりにくいという考え方は、面談にも応用できます。何を目指しているかという基準を先に共有してから課題を伝えると、保護者も受け止めやすくなります。
木村さんの、説得ではなく納得を大事にする視点も、面談での言葉選びに活かせます。一方的に評価を伝えるのではなく、保護者と一緒に状況を見ていくという姿勢が、信頼につながります。
つまずきやすい場面と対処
「良い点から伝えても、結局は課題の話で気まずくなってしまう」という相談を受けたことがあります。
こういう場合、良い点と課題の間に「これから一緒にどうするか」という言葉を挟むと、話の流れが変わります。課題だけで終わらせず、次にどう関わるかまでセットで伝えることが大切です。
また、保護者が感情的になってしまう場面では、その場で説得しようとせず、まずは相手の不安をそのまま受け止める時間を作ることをおすすめします。時間をかけて話を聞いたあとのほうが、こちらの伝えたいことも届きやすくなります。
続けるための工夫
面談の伝え方は、一度で完成するものではありません。
面談のあと、うまく伝えられた言葉を1つだけメモしておく。それを次の面談で使ってみる。この積み重ねが、自分なりの伝え方の型になっていきます。何度も面談を重ねるうちに、保護者との対話そのものが、少しずつ気負わないものに変わっていくはずです。
