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自由は、好きな色をしている

この街に来てから、ビンテージのフォルクスワーゲン(VW)にばかり心がときめく。以前は、目に留めることすらなかったのに。

ビンテージショップや花屋に姿を変えた、パステルカラーのミニバス。 街角で見かける、あえて錆(さび)を残したヴァン。

一年を通して広がる青空と、大きなパームツリーの下では、効率や正解よりも「好きな色」を貫いている車の方が、たまらなくチャーミングに見える。 テスラのサイバートラックも見かけるけれど、このトロピカルな街には、どうしても似合わない。


今朝は近所の海辺の公園に、VWのビンテージカーが次々と集まってきた。 派手な広告があったわけでもなく、しれっと行われたパレード。見逃した人たちも多かったはずの、その瞬間に立ち会えたのは、私を含めてほんの数人だった。

ふと10年前の記憶が重なった。 アメリカとキューバの国交が再開された直後、クルーズ船でのハバナ旅行に誘われたとき。
時間が止まったような古い街並みを、カラフルなアメ車のクラシックカーが次々に走り去る光景があまりにも衝撃的だった。ガイドさんが真っ赤なオープンカーを手配してくれた。運転手の青年が葉巻工場や、丘の上の公園に連れて行ってくれた。そのほとんどが観光客向けと分かっていても、あの時に感じた「理屈抜きの高揚感」は、今でも肌が覚えている。

そして今朝。
海辺の公園に並ぶ車を、私は惚れ惚れとして眺めていた。あえて手間のかかるビンテージを選び、その不自由ささえも愛している人たち。 1960年代のヒッピー文化やロードトリップ。自由や冒険の象徴。 そんな背景を背負っているであろう彼らが放つ笑顔は、「自分の人生を、自分の足で楽しんでいる」という事実にしか見えない

「これ、あげる」

パパのVWに乗ってきた少年が近寄ってきて、プラスチックの花首飾りを差し出してくれた。 「ありがとう、素敵な車だね!」 そう伝えると、少年は照れながらも誇らしげな顔をして笑った。本当は、その可愛らしさが、ヴィンテージヴァンの可愛さよりもずっと強烈に私の心に残ってる。

ますます機械化されていく自動車やロボタクシーも気になるけど、長く愛され続けているビンテージバンの、理屈抜きの魅力に圧倒された朝だった。







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