見出し画像

山手線の桜と、30年越しの「無条件の愛」




数日ぶりに実家へ向かう山手線。 ドアが一歩開くと、車内には思わず息をのむような美しい光景が広がっていた。

満開の桜のように車内を彩る、ピンク色の花びらたち。一枚一枚に誰かの願いがそっと綴られていて、寒々しいお天気の中でも胸の奥がじんわりと温かくなっていく。

その中で見つけた、私のお気に入り。

『妻の死ぬまでにやりたいことリストを全部叶える』

なんて素敵なんだろう! 私の夫もそんな風に言ってくれているけれど、こうして素直に言葉や行動にしてくれる男性には、やっぱりキュンとしてしまう。

実家に到着すると、義父と挨拶を交わし、母たちと3人で女子会ランチへ。 みんなで笑い合える時間がどれほど貴重か分かっているからこそ、誰も不満や愚痴なんて口にしない。面白い話で大笑いして、このかけがえのない時間に感謝する。そんな心地よい循環がたまらなくありがたい。

ランチの後は、10年ぶりに会う大切な旧友と合流してショッピングと夕食へ。 10年の歳月を一瞬で飛び越えて、まるで昨日も会っていたかのように言葉が繋がるのが不思議だ。

実は彼女こそが、表面上の「形」を超えた“本物の愛”を体現している人だった。

普段の彼女の口からご主人の話が出ることはほとんどなく、二人で出かける話も聞かない。彼女はいつも自由に旅行やショッピングを女友達と楽しみ、今は事情があって別居している。

けれど去年、彼女が腎臓の病気で「もうほとんど機能していない」と告げられたときのこと。ご主人は何の迷いもなく「自分の腎臓を提供する」と言ったのだという。頼まれたわけでも、誰かに促されたわけでもなく。

手術が無事に終わった今、彼女は私の目の前で「美味しいね」とパスタをほおばり、昔と変わらない笑顔でおしゃべりしてくれている。 その姿を見つめていたら、愛おしさと感謝で胸が小さく震えてしまった。

言葉にしなくても、一緒に行動しなくても、表面には見えなくても——。 深いところで静かに、けれど確かに繋がっている無条件の愛。

彼女が20代の頃、お寺の占い師さんにこう言われたそうだ。 「あなたの旦那さんは素晴らしい人です。毎日感謝し、健康を祈りなさい」

当時はピンとこなかった言葉の意味が、30年の時を経て見事に手渡されたのだ。

愛にはマニュアルも正解もない。 言葉や形に捉われず、その人たちにしか築けない深さで愛し合うこと。そんな尊い絆を見せてくれた彼女たち夫婦に、心からのリスペクトを贈りたくなる。

車内の桜にときめき、母たちと笑い合い、友人の奇跡のような愛に触れた一日。 世界はこんなにも静かな愛と優しさで満ちているのだと、深く深く噛みしめた。



いいなと思ったら応援しよう!

セレナ|アメリカ生活 応援ありがとうございます♡