見出し画像

出会っていたかもしれない風景ー未来からの絵葉書

そのときは気づかなかったけれど、数か月前の自分の心に、すでに届いていた場所があった。それが、旅の途中、すぐそばにあったことを、今になって知った。

きっかけは、三月の一時帰国だった。
読者の方に誘われ、ある絵画展を訪れた。そこには、亡くなられたお父様の作品が並び、どの絵にも自然と足が止まった。帰り際に絵葉書をくださるというので、なぜか強く惹かれた一枚を選ばせていただいた。理由は分からない。ただ、その絵だけが、静かに残った。

後日、ふとその絵のタイトルに目が留まった。
「ロワン川の川岸」。

フランス名のようだと思い、調べてみると、ロワン川はフランスを流れる川で、その流域には、印象派の画家が晩年を過ごした小さな町があるという。

どこだろう。
そう思って地図を開いた瞬間、息をのんだ。

私たちは、先月、そのすぐ近くまで行っていた。ロワン川は、フォンテーヌブローの森の南端を流れている。私たちが訪れていたフォンテーヌブロー宮殿も、まさにその近くだった。知っていたら、足を延ばしただろう。そう思うと、少し惜しい。でも同時に、不思議な気持ちになった。

日本で出会い、フランスで、知らずにすれ違っていたかもしれない場所。
絵に描かれた川岸が、あの町だったかどうかは分からない。けれど、同じ川であることは確かだ。

それだけで、十分だった。

フランスの旅の記憶と、あの絵が、あとから静かに重なって、
私の中で、ひとつの風景になっていく。

フォンテーヌブローでは、久しぶりの青空に恵まれた。敷地内の池の水は驚くほど澄み、夫がオールを握り、私たちはただ静かに漂った。何かを学ぶためでも、名所を制覇するためでもない。ただ、その場所に身を置く時間。

後から振り返ると、あの旅のあちこちに、こうした「伏線」のような瞬間が、いくつもあった気がする。そのときは気づかなくても、心のどこかでは、ちゃんと受け取っている。そして、時間差で、意味が立ち上がってくる。

ロワン川の川岸。今では、私にとって、ただの絵では旅はない。終わってからも、なんとなく続いているの。そんなふうに思わせてくれる一枚になった。

一円破顔氏による「ロワン川の川岸」
鯉の池(Etang aux Carpes / Carp Pond)ルイ14世が鯉に餌を与えて楽しんだ。マリー・アントワネットもここでボート遊びを楽しんだと伝えられている。
ディアンヌの庭園にあるその噴水は、なぜか“犬のおしっこ姿”



いいなと思ったら応援しよう!

セレナ|アメリカ生活 応援ありがとうございます♡