ボルドーで遭遇した巨大な砂丘
フランスのボルドーには、「ヨーロッパNo.1」と呼ばれるものがいくつもある。ワイン、建築、街並みの美しさ。でも正直言って、私の心はあまり動かなかった。ヨーロッパで一番長いショッピング通りがあると読んでワクワクしていたけれど、実際にはその半分は店と言える場所ですらなかった。
なにより広大な茶色い川の流れを見て、少し気分が落ちた。フィレンツェで見た川を思い出したのだ。私はアメリカでも屈指レベルに美しい海の近くに住んでいるので、そんなふうに感じてしまうのは仕方ないのかもしれない。
私たちがボルドーまで来たのはもちろん、ワイン好きの夫の希望だ。夫は私に出会う以前にシャンパーニュ地方や他のワイナリーを訪れていたけれど、ボルドーは未体験だった。だからワインミュージアムやワイナリーの一人ツアーに参加して楽しんでいた。
私は私で、ショッピングや一人ランチを満喫した。可愛らしい洋服を見つけたし、お気に入りのカフェも見つけた。滞在しているエリアもすごく気に入っている。古い建物ばかりだけれど、どの建物の入り口にもジャスミンが生い茂り、白い花が愛らしい香りを漂わせていた。
それでも、やっぱりパリの方が好きだと感じていた。
ボルドー滞在の後半で夫が「一緒にどこかに行こうよ」と提案してきた。これまでの3週間はフランスでずっと一緒に行動していたので、ボルドーで完全別行動になるのはいい息継ぎになると思いきや、やはり一緒に思い出を作りたいのは私も同じだった。
本当は、スペインのビルバオまで足を延ばしたかった。最後に訪れたのはもう何十年も前で、グッゲンハイム美術館すらできていなかった頃だ。ちょうど親友のマリアがそこに到着したと連絡をくれた。ボルドーから国境を越えてもそれほど遠くない距離だし、マリアが案内してくれると言う。車もあるし行けないことはない。けれど、パリへ戻る長距離運転を考えると、これ以上の移動は気が進まなかったようで今回は見送ることになった。
それなら、日帰りで行ける場所はどうだろう。そう思って探しているときに目に留まったのが、ピラ砂丘だった。真っ白い砂が美しいビーチが延々と続く場所に住んでいるので、砂丘にはあまり興味がなかったけれど、「人生で一度は見るべき風景」という数々のレビューにときめいた。それで、行ってみることにした。雨が降らないことを祈りながら。
さて。ボルドー市内から車で少し走ると、突然、視界が開ける。
そこにあったのは、想像していた砂丘とはまったく違う光景だった。 砂、砂、砂。 まさに砂の山。
神さまがうっかり砂のバケツをひっくり返したような場所。レビューでちらりと目にしたそんな言葉がぴったりだった。
砂丘に登るための急な簡易階段を、みんなが息を切らしながら上っていく。砂に埋もれて靴はすでに役に立たない。素足で歩くと、砂は驚くほどさらさらで肌にまとわりつかない。
ようやく上にたどり着くと、そこには見渡す限りの大西洋と、背後に広がる松林。思わずその場に座り込んでしまった。周囲にも座り込んでいる人がたくさんいて、昼寝をしている人までいる。人は多いのに、混雑している感じはまったくない。それほど圧倒的に広かった。
ふと空を見上げると、白い太陽のまわりにハロ現象が現れていた。さらに、丸い虹が重なっている。
夫が海のほうへ歩いていくあいだ、私はその場に座り、しばらく目を閉じた。そのとき、不意に思い出した。以前、AIで創った一枚の画像のことを。どこまでも続く砂丘で、白い服を着た女性が静かに座っている風景。それを見ながら「こんな場所で瞑想してみたい」と心から思っていた。自分でも気に入っていて今もときどき使っているけれど、実在する場所をイメージしたわけではなかったのに、目の前の光景はほぼ同じで驚いた。
そろそろ戻ろうと腰を上げ、帰りは階段を使わず、砂丘を駆け下りた。
最初は少し怖かったけれど、次第に無邪気な気持ちが戻ってきた。フェンスも手すりもない高い場所。転んだり落ちたりしても、柔らかな砂がすべてを受け止めてくれるので怪我をすることもない。
天気予報では寒くて雨だったのに、こんな美しい太陽の光に恵まれた。


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