パリで出会った、シニア夫の元カノ
今回のパリ滞在で、心が温まるひとときがあった。
夫の、昔の恋人との再会だった。もちろん、私は初対面。
ふたりが付き合っていたのは、もう数十年も前。大学生だった頃の、半年だけの関係。彼女は短期留学でアメリカに来ていて、留学を終えると各地を旅するために別れた。それきり長く連絡はなく、ただリンクトインで“サードコネクション”として、ゆるく繋がっていただけらしい。
「パリに来るなら、食事でも」
ということで、数十年ぶりの再会が決まった。
彼女は60代。今も現役で働いている。メディア関連の仕事なので、カンヌ映画際を前に大忙し。残念ながら計画通りにはいかず、ランチとそのあとのお茶だけになった。
待ち合わせの場所に現れた彼女は両手を広げて私をハグしてくれた。
会話は自然で、気取らない。昔からの友人と久しぶりに会ったような、不思議な時間だった。なにより印象的だったのは、彼女の言葉やまなざしから、若い頃の夫がどれほど誠実に、思いやり深く接していたかが伝わってきたこと。
「ああ、この人は昔からちゃんと“いい人”だったんだな」
そう思って、妙に納得してしまった。
夫が取り出したのは、若い頃のふたりの写真。ベッドの上で、上半身裸の彼がバイオリンを弾き、彼女が隣で微笑んでいる。映画のワンシーンみたいな一枚だった。
さすがにこの年齢だから、モヤっとした感傷はなかった。過去を美化する感じも、未練もない。ただ、清々しい空気だけが流れていた。きっと、いい恋だったのだと思う。同じ20代に、相手を傷つけるような恋をしてきてしまった私が恥ずかしくなるくらいの尊さが、二人の間に流れていた。

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