武術・格闘技論争

生活環境の変化ですっかり足は遠のいているが、私は武術を習っている。日本ではマイナーだが、詠春拳と呼ばれる超かっこいい中国武術だ。言わずと知れたジャッキーチェンや、ドニー・イェンも体得している。
始めたきっかけは『イップマン』を見て、速く美しく強い打撃術に感動したからだ。
武術や格闘技といったものが好きなので日頃SNSでそういった情報は目にしているのだが、度々目にする論争がある。(いわゆる武クラというやつ)
論争というよりも、武術に対する否定と、競技武道及び総合格闘技最強論を唱える声である。これを聞くたびに思うことを自分の解釈と照らし合わせて書いていきたいと思う。

結論から言うと、私も総合格闘技(以下MMA)が最強と信じて疑っていない。身体を鍛えて激しい打撃と寝技を体力と神経をすり減らしながら行う競技なんて強くて当然。そもそも殴り殴られるという凡そ普通の人なら避けたくなるような喧嘩行為を、技術として研ぎ澄まし、KOするまで殴り合うのだから弱いわけがない。
MMA(競技格闘等)≧各武術は必定として良いだろう。

と、競技格闘が最強だとした上で武術とは何なのか?を考えてみた。
「強くなりたいならMMAをすれば良いだろ!」という声が出るかもしれない。はたまたイキった人が「スパーリングに強度を求めないのは甘え」とか「格闘技経験者に襲われたら?」と言ったりするだろうが、それはナンセンスで。
例えば、体格に恵まれていない人が護身術にとMMAをいきなり始めようとしたら体を壊すだけで、他の練習生に打ちのめされて骨と共に心がサブミッションされるだけである。ましてや組手をしたことのない人が格闘技なんてそもそも敷居が高いし、怖そうで取っつき辛い。そこのちょうどいいところに武術という選択肢があるのは良いことだと思う。決して驕っていいわけではないが、人より体術ができるというのは自信になるし、体格さや男女の差があったとしても、別段心得のない相手程度であれば切り抜けることは可能だと思う。
そして武術の良いところは勝たなくていい。もう少し言えばKOする必要はない。柔よく剛を制す動きを実践し、戦術的勝利をして、あくまでも急の回避をしたり、体勢を有利に進めたりして戦術的勝利を重ねればそれは武術の完成であると思う。時に武術の要素を格闘技に応用する人がいるのも事実で、決して無用の長物ではないとも言える。詠春拳での話だが、実際MMAやってる人が道場に通ってたりもする。
どんなジャンルの武術かにもよるが、基本的にモットーとなるのは身体操作で、如何にその場を切り抜け優位にするかに行き着くのではないかと思う。
国に例えてみれば、限りある財源や国の規模を考慮して防衛体制を敷くようなもので、アメリカや中国やロシアのような軍事大国に無理してなるものではない。多少なりとも抵抗できる気概を持つことや、限定的な条件下での対処能力を保持して意思表示するだけでも、それを護身と考えれば想像しやすいかと思う。

私なりにまとめると…
フィジカルを十分に発揮する格闘術が『格闘技』。
柔よく剛を制す身体操作が『武術』。
格闘技=『戦略』
武術=『戦術』
などと一応定義づけている。

ここで気を付けたいのが、打撃を意識していないことと、自分より大きい相手が力任せに暴れることを想定していない武術だと実践で耐えられないのも事実。心構えを養う意味では、練度と強度を意識した練習もなくてはならない。
…ただ、時々目にする「ガチスパーをしないのは甘え」というのは、エンジョイ勢としてはイキリ過ぎててさすがに放っていてほしいところである(笑)
試合を目指しているわけでもなければ、100%でぶつかるのは危険度が高く、そもそも篩にかけるような環境及びコンセプトではないからだ。
「甘えだ」というのは競技で実践できなければ意味がないと言いたいのでしょうが、想定する相手のレベルと自身の練度、状況(リングなのかその他の空間)がチグハグな為に、どうしても会話が成立しないのはここにあるんじゃないかといつも思っている。武術はあくまでも護身。柔よく剛を制す技術なので、ムキムキな競技者を倒すことを主題に置いていないことをまず整理したほうよろしいかと思う。
そして、ちょっと怪しい武術家さんは気とか目突き金的の事を「禁じ手だから格闘家にも勝る」というのは武術の安売りでネガティブキャンペーンになるので止めてほしいと思っている。私が危惧しているのはまさにここであり、武クラ界隈で武術が異様な卑下の対象の空気になっているのが非常に悔しく悲しいと感じているところである。
オカルト蘊蓄や、技術の誇張は卑下と誤解と被害すら生むものなのでマジでやめてほしい…。
さすがに昔よりは減ったと思うけど…?

最後に。
you tubeでも精力的に動画を挙げている某武術家さん。極めた武術は確かに強くレベルの高いものなのですが、蘊蓄寄せ集めてオカルト新流派作っちゃったのはダメだと思った。プロレスラーさん困ってたじゃん…。一番弟子さんが離れていったのはこれがあったからではないかと思う。
認知されたがゆえに調子に乗ってしまったのか、広告費が美味しいからなのか、自分を見失うことの無きよう…反面教師にしたいと思った。

いいなと思ったら応援しよう!