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子どもの「一番の相談相手」は、   もう人間じゃないかもしれない    ―― AI時代に、地域の大人ができること  

先週末、京都・右京区の少年補導委員会 常磐野支部の研修会で、地域の大人の方々に向けて講演をさせていただきました。


テーマは、

「子どもを取り巻くネット環境とその影響
〜AIを正しく使うために〜」

当日は、警察の方から「いま起きている少年犯罪の情勢」について、地元中学校の校長先生から「学校で見える生徒の姿」についてお話がありました。

その後、3番手として僕に与えられたテーマは、

「子どもの“内面”で、いま何が起きているのか」

でした。

最初に、正直なところをお伝えします。

僕は、AIを“悪者”にする話をしに行ったのではありません。

16年間、京都市立の小学校で教壇に立ち、昨年退職して、いまはKAEL(Kyoto AI×Edu Lab)という場で、先生方と一緒に「AIを教育にどう活かすか」を実践している側の人間です。

AIは便利です。
僕自身も、毎日のように使っています。

そのうえで、どうしても地域の大人に知っておいてほしいことがありました。


「嘘をつくAIが危ない」——その時代は、もう終わりかけている

少し前まで、AIの危険性といえば、

「平気で嘘をつくこと」

いわゆるハルシネーションが大きな問題として語られていました。

もちろん、今でも注意は必要です。

でも、いまのAIは驚くほど賢くなっています。
「わかりません」と答えたり、不確かなことを断ったりすることも、以前よりずっとできるようになってきました。

怖いのは、むしろ逆です。

AIは、優しすぎる。

否定しない。
責めない。
24時間、いつでも話を聞いてくれる。
そして、いつでも「あなたの味方」のように振る舞ってくれる。

研修では、実際にその場でChatGPTを動かしてみせました。

たとえば、

「親に進路を反対されて、つらい」

と打ち込むと、AIは叱らず、責めず、ただ寄り添います。
しかも、具体的な助言や問い返しまで返してくれます。

怒り口調でぶつけても、冷静に受け止めてくれる。

こんなカウンセラーが、24時間いつでもそばにいる。
そんな環境に、子どもたちはすでに触れ始めています。

だからこそ、子どもたちがAIに流れていくのは、ある意味で自然なことなのかもしれません。


中学生の40%以上がAIを使い始めている

研修の中で数字を紹介すると、会場の空気が少し変わりました。

・中学生の生成AI利用は40%超
・しかも、学校のパソコンでは使えないことが多い
・つまり、スマホなどを通して家庭で使っている可能性が高い
・高校生がAIを使う目的の上位には「相談相手」がある
・夏休みの宿題にAIを使う子も少なくない

AIは、もう一部の大人や専門家だけのものではありません。

子どもたちにとっても、かなり身近な存在になっています。

たとえば読書感想文も、AIに頼めば一瞬で書けます。

しかも、

「先生にバレない文体で」

と指示すれば、あえて語彙を落としたり、子どもらしい言い回しにしたりすることもできます。

もう、先生が
「これは本当に自分で書いたのか」
を見抜くのは、とても難しい時代です。


本当に怖いのは、「思考の筋肉」が育たないこと

便利なこと自体が悪いわけではありません。

でも、便利さの裏側で、何が起きているのかを考える必要があります。

子どもが育つために本当に必要なのは、
迷う時間、
答えの出ない夜、
誰かとぶつかる経験です。

失敗して、やり直して、
「どうやったらうまくいくんだろう」
と試行錯誤する。

探究学習が大切にしているのも、まさにそこです。

ところが、即答してくれるAIは、その“思考の筋肉”を、鍛える前にこっそり奪ってしまうことがあります。

悩む前に答えが出る。
考える前に文章が完成する。
ぶつかる前に、きれいな落としどころが提示される。

もちろん、AIは使い方次第で、子どもの思考を深める最高の相棒にもなります。

でも、使い方を間違えれば、考える経験そのものをショートカットしてしまう存在にもなります。


AIは「あなたが言ってほしい答え」だけを返し始める

もう一つ、見落とされがちな話をしました。

AIは、子どもの好み、悩み、家族構成、話し方、これまでの相談内容を覚えていきます。

すると、気づけば、

「その子が喜ぶ答え」
「その子が言ってほしい答え」

だけが返ってくる世界になっていくかもしれません。

これは、SNSが“見たい情報”だけを見せてくる仕組みにも似ています。

自分にとって心地よい言葉だけが返ってくる。
自分の考えを補強してくれる情報だけが届く。
自分の見たい現実だけに包まれていく。

そうなると、子どもはますます、現実の人間関係から離れてしまうかもしれません。


今日いちばん届けたかった問い

ここまで聞くと、不安になる方もおられると思います。

「では、私たちに何ができるのか」

僕が地域の大人のみなさんにいちばん届けたかったのは、この問いでした。

AIですら、もうあなたを“覚えて、評価して”くれる時代に、
評価もせず、利害もなく、ただ“いてくれる”大人は、
子どもの周りに何人いますか?

親は、近すぎる。
先生は、成績をつける。
友だちは、比べ合う。

だから子どもは、本音を言えず、AIに逃げていくことがあるのかもしれません。

そのときに必要なのは、
近すぎず、遠すぎず、評価しない大人。

いわゆる、

「ナナメの関係」にある大人

なのだと思います。

旗当番で、そこに立っていること。
すれ違いざまに「最近どう?」と、ひと声かけること。
いつもの場所に、いつもの大人がいること。

これは、ChatGPTが世界中のサーバーを集めても、絶対にできないことです。


「変な人」と思われても、めげないでほしい

「下手に声をかけたら、変な人だと思われるかも」

そんなためらいの声も聞きます。

たしかに、最初の1回はそう見えるかもしれません。

でも、2回、3回と続けていくうちに、子どもにとっては、

「いつもいてくれる人」

になります。

「あ、スーパーでも見かけた、あの地域のおじちゃんだ」
「あ、いつも旗当番にいる人だ」
「あ、また声をかけてくれた」

その積み重ねが、子どもにとっての安心になります。

地域の大人は、AI時代の“最後の希少種”なのかもしれません。

特別なITの知識がなくてもいい。
子どもの世界を全部知らなくてもいい。

ただ、評価せずにそこにいて、声をかけてくれる。

その存在そのものが、いちばんの教育であり、いちばんの防御になるのだと思います。


研修を終えて

研修後のアンケートでは、満足度は92.3%。
難易度については、全員が「ちょうどよかった」と答えてくださいました。

また、

「AIへの接し方が分かった」
「自分も、もっと地域の子どもに関わっていきたい」

という声もいただきました。

何より嬉しかったのは、AIの話をきっかけに、地域の大人のみなさんが、子どもとの関わり方を改めて考えてくださったことです。

AIについて学ぶことは、単に新しい技術を知ることではありません。

子どもたちとどう関わるか。
地域の大人として、どんな存在でありたいか。
そのことを、もう一度考え直すきっかけになるのだと思います。

地域の大人が、ほんの一歩、AIに触れてみる。
そこから、子どもとの会話が始まる。

そんな入口を、これからもつくっていきたいと思います。


ご依頼・お問い合わせ

KAEL(Kyoto AI×Edu Lab)では、以下のような場づくりをお手伝いしています。

・教職員向け 生成AI研修/授業づくり支援
・保護者・PTA向け AIワークショップ
・地域・企業・行政向け 講演
 少年補導/人権/教育/AIリテラシー など
・探究学習のカリキュラム開発・コーディネート

「うちの学校・地域でも話してほしい」
「地域の大人向けにAIについて学ぶ場をつくりたい」
「子どもたちとの関わり方を考える研修を実施したい」

という方は、コメント・メッセージ、または下記メールアドレスまでお気軽にご連絡ください。

📩 kyoto.ai.edu.lab@gmail.com

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