どこにも属していない不安
「私って、何者なんだろう」
ダイキ「今日はお二人とも、似たようなテーマを抱えているとお聞きしました。『所属がないことの不安』について、少しお話を聞かせてもらえますか?」
ユミ「はい...。退職して半年くらいなんですが、なんというか、自分が誰なのか分からなくなる感じがあって」
ケンジ「あ、それ、すごく分かります。僕もそうでした」
ダイキ「ユミさん、もう少し具体的に聞かせてもらえますか?」
ユミ「以前は会社で働いていたので、名刺もあったし、『○○の仕事をしている人』っていう...なんていうんでしょう、説明できる何かがあったんです。でも今は、『で、あなたは何してるの?』って聞かれると、すごく焦るんです」
ダイキ「なるほど。その焦りは、どこから来ていると思いますか?」
ユミ「うーん...なんていうか、自分に価値がないって思われるんじゃないかって。働いてないって言うと、『ああ、何もしてない人なんだ』って思われそうで」
ケンジ「僕の場合は...なんか、一人でいる時間が増えて、すごく孤独を感じるんです。会社にいた時は、嫌な上司もいたし、面倒な会議もあったけど、少なくとも『居場所』はあった。今は、誰とも話さない日もあって」
孤独は「一人」だから感じるんじゃない
ダイキ「ケンジさん、『一人でいるから孤独』って感じてますか? それとも、何か別の理由がありそうですか?」
ケンジ「...言われてみれば、会社員時代も孤独だったかもしれないです。周りに人はいっぱいいたのに」
ダイキ「そうなんですよね。孤独感って、実は人がいるかいないかじゃなくて、『つながりを感じられるか』なんですよ。ユミさんはどうですか?」
ユミ「確かに...。会社にいた時も、表面的な付き合いばかりで、本当の自分は出せてなかったかも。『ちゃんとした社員』を演じてた感じです」
ダイキ「なるほど。じゃあ質問なんですが、お二人とも『会社』という所属がなくなって、一番怖いことって何ですか?」
ユミ「...評価されないこと、ですかね」
ケンジ「僕は...必要とされないことかな」
本当の不安の正体
ダイキ「面白いですね。お二人とも、『外側からの評価』がなくなることを恐れている。ユミさんの『価値がないと思われる』も、ケンジさんの『必要とされない』も、どちらも他人の評価ですよね」
ユミ「あ...そうですね。自分で自分を評価してない」
ダイキ「そうなんです。実は、所属がなくなって感じる不安の正体って、『自分の価値を、外側の基準に頼っていた』ことに気づかされる怖さなんですよ」
ケンジ「外側の基準...」
ダイキ「会社という看板、肩書き、給料、周りの人からの『お疲れ様』。それがあるから『自分には価値がある』って思えてた。でもそれって、本当に自分の価値でしょうか?」
ユミ「うっ...痛いところ突きますね(笑)」
ダイキ「ごめんなさい(笑)。でも、これって実はチャンスなんですよ」
「嫌われる恐怖」の背景にあるもの
ケンジ「チャンス...ですか?」
ダイキ「はい。ケンジさん、さっき『孤独』って言葉を使いましたよね。でも本当は、何を恐れてるんでしょう?」
ケンジ「何を...? うーん、嫌われることかな。人から『この人ダメだな』って思われるのが怖い」
ダイキ「それ、すごく大事な気づきです。実は人間って、本能的に『嫌われること=生き延びられないこと』って感じるようにできてるんですよ」
ユミ「ええっ、そうなんですか?」
ダイキ「昔は、集団から追い出されたら本当に死んでしまってたから。だから私たちの脳は、『嫌われる=命の危険』って反応しちゃうんです」
ケンジ「だから、こんなに苦しいんだ...」
ダイキ「そうです。でも、よく考えてみてください。今の時代、会社を辞めたら本当に死にますか?」
ユミ「いや...死にませんね(笑)」
ダイキ「でしょ? つまり、脳が過剰に反応してるだけなんです。ユミさんは、その過剰な反応にどう対処してきました?」
ユミ「...ずっと、人に気を使ってきました。嫌われないように、波風立てないように」
エネルギーを使いすぎていた日々
ダイキ「それ、すごく疲れませんでした?」
ユミ「疲れました! 会社員時代、毎日クタクタで。仕事の内容よりも、人間関係に気を使うことの方が疲れてた気がします」
ダイキ「そうですよね。対人関係の警戒にエネルギーを使いすぎると、本当に消耗するんです。で、エネルギーが切れるとどうなると思いますか?」
ケンジ「...イライラして、爆発しちゃう?」
ダイキ「その通り! 普段は必死に我慢してるのに、限界が来ると自分でもコントロールできなくなる。で、爆発した後、どう思います?」
ユミ「『ああ、やっちゃった...。やっぱり自分はダメだ』って」
ダイキ「そう。それでまた警戒レベルが上がって、もっとエネルギーを使って...っていう悪循環。僕はこれを『ビビりのサイクル』って呼んでます」
ケンジ「まさに僕がそれでした。で、結局疲れ果てて、会社辞めました」
所属がないことは、本当は自由
ダイキ「お二人とも、今振り返ってみてどうですか? 所属がなくなって、失ったものと得たもの」
ユミ「失ったのは...安心感、かな。得たものは...うーん」
ケンジ「僕は、得たものの方が大きい気がしてきました。自分のペースで生きられるようになった」
ダイキ「いいですね。ユミさん、今の状態って『安心感がない』んじゃなくて、『違う種類の安心感を作ってる途中』なんじゃないですか?」
ユミ「...あ、そうかも。今までは『嫌われないこと』で安心してたけど、それって本当の安心じゃなかったのかも」
ダイキ「そう。本当の安心感って、『自分は自分でいいんだ』って思えることなんですよ。所属があろうがなかろうが、変わらない自分の価値」
ケンジ「それ、どうやって見つければいいんですか?」
小さな実験から始める
ダイキ「まず、小さなことから始めてみましょう。ケンジさん、誰かに『本当の気持ち』を言ってみたことあります?」
ケンジ「ないです。いつも、相手が期待してる答えを言っちゃう」
ダイキ「じゃあ、次に誰かと話す時、一つだけでいいので、本当の気持ちを言ってみてください。『実は、そう思わないんです』とか、『私はこう考えます』とか」
ユミ「でも、それで嫌われたら...」
ダイキ「ユミさん、いい質問です。でもね、本当に大事な人は、あなたの本音を聞いて離れていきますか?」
ユミ「...離れないかも。むしろ、『やっと本音言ってくれた』って思うかも」
ダイキ「そうなんです。そして、もし離れていく人がいたとしたら、その人はきっと『都合のいいあなた』しか必要としてなかった。それって、本当のつながりでしょうか?」
ケンジ「...違いますね」
未来への一歩
ダイキ「お二人とも、今日気づいたことは何ですか?」
ユミ「私...ずっと『誰かに必要とされること』で自分の価値を決めてたんだなって。でも本当は、自分で自分を認めることが先なのかも」
ケンジ「僕は、孤独の正体が分かった気がします。人がいないから孤独なんじゃなくて、『本当の自分』でつながれてないから孤独だったんだ」
ダイキ「素晴らしい気づきですね。所属がないことは、確かに不安です。でもそれは、『新しい自分のあり方』を見つけるチャンスでもある。外側の評価じゃなくて、内側から湧き出る『自分はこれでいい』っていう感覚を育てていく時間なんです」
ユミ「...なんか、少し楽になりました」
ケンジ「僕も。まだ不安はあるけど、『これでいいのかも』って思えてきた」
ダイキ「いいですね。焦らなくていいんです。ゆっくり、自分のペースで。そして時々、小さく実験してみてください。『本当の自分』を少しずつ出してみる。それが、本物のつながりを作る第一歩ですから」
