BIC特区-第44話 アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
部屋に入ると、ベッドの上にミサキがいた。
アオイは走って駆け寄り、ミサキを抱きしめた。
「ミサキさん、心配したんですよ」とアオイの目から涙がこぼれた。
「ごめんね。心配かけて」とアオイの頭をなでるミサキの目からも涙がこぼれた。
それからアオイは、ミサキがいなくなってから起きたことや中央管理局の別室で言われたこと、孤独で不安だったことなどを、時折声を詰まらせながら話した。
ミサキは鼻をすすりながら、「ごめんね」と何度も謝って、それを聞いていた。
「でも、ミサキさんなんでそんなところに行ったんですか?」
アオイに聞かれ、ミサキは少し戸惑った。昨夜、タダシと3人で話して納得はしているものの、こんなにも心配してくれているアオイをどこか裏切るような気持ちになる。ふとアオイの後ろを見ると、ナオユキが小さく頷いた。
「なんか、崖から落ちたショックなのか、うまく思い出せないの」準備していた台詞とはいえ、すらすらと言えた自分に嫌悪感すら覚えた。
「でも、本当に無事でよかったです」とアオイは安心した様子で言ったが、急に何かを思い出して切り出した。
「そういえば、今朝から私のデバイスとTIもおかしいんです」とアオイが話し始めたその時、
「あ、タダシだけど、ちょっと緊急事態で」突然タダシの声が聞こえた。
「今そっちに向かってるんだけど、思ってたより動きが早まってるみたいで」タダシは運転中なのか、時々雑音が聞こえる。
明日戻ると言っていたタダシが、予定を繰り上げて戻ってきているという事態にただならぬものを感じる。
「何かあったんですか?」とアオイが慌てて聞くと、
「アオイちゃん、今詳しく説明してる暇がないんだけど、とりあえずナオユキとふたりで中央管理局に行って」
「中央管理局?」アオイとナオユキが声を揃えた。
「今ルイがどうにか頑張ってるんだけど、もうひとりじゃ限界みたいで、このままじゃ暴動になりかねないって」と言うと、「ちっ、どけよ」とタダシのいら立った声が聞こえた。相当スピードを出して車を走らせているようだ。
「え?ルイ?暴動?」アオイは状況を理解できず、混乱した。
「えーと、あと1時間いや40分でいいんで時間稼いで、あとテッシュウはミサキさんのそばにいて」とタダシが早口で言うと、テッシュウが「ウォン」と低い声で答えた。
「タダシさん、いったい何が起こってるんですか?」とアオイが尋ねると、
「え、気づいてないの?TIが反乱を起こしてるみたいなんだ」
状況は緊迫しているのに、タダシの声はどこかこの状況を楽しんでいるようにも聞こえた。
