愛の哲学 - ショートショート -
薄暗い部屋に、男と女がふたり座っていた。
沈黙が重く垂れ込める中、男が静かに口を開いた。
「君なら、相手より先に逝くのと後に逝くの、どちらを選ぶ?」
その言葉が宙に浮かぶ。片方の女性が瞳を閉じ、深く息を吐いてから答えた。
「私は…後かしら。最後の一瞬まで寄り添って、大切な人の旅立ちを見届けたい。それに…」
彼女の声が僅かに震えた。
「私がいなくなることで相手を悲しませたくないの」
もうひとりの女性が静かに頷いた。
「俺は絶対に先がいいな。大切な人を失う痛みに耐えられる自信がないんだ。それに…」
彼は少し照れくさそうに微笑んだ。
「俺がいなくなっても、新しい幸せを見つけて欲しいって思うんだ」
父の隣に座る見知らぬ女性が、優しい笑顔で私を見つめている。
