風が残る展示室
この絵からは、風を感じる
その風が、中央の女性に吸い込まれていった
2026年4月20日のこと

この絵を見た時の感想は
『なんか、女性の存在感があるな』
それだけだった
まだ美術館に行くのは2回目
絵をどう見れば良いのかも、私は知らない
道すがらに見た絵の感想も、似たようなもの
私のメモ帳に、絵の感想が残ることは、ほとんどなかった
この絵のタイトルを見た後、見え方が変わった
『日傘を持つ右向きの女』
なんで、右向きなのだろうと思った
そう思って、じっくりと絵を見ていた
日傘を右に向ける理由
そこには、風がいた
右上から吹く風に向かって、
女性が日傘を向けている
風は二手に分かれて下に流れていた
そこから舞い上がり、女性へと吸い込まれる
私は、この絵をずっと見ていた
辺りに人がいなくなっても、ずっと見ていた
私は、来た道を引き返して
最初に見た絵から鑑賞し直した
入館した時には人が大勢おり、ぎゅうぎゅう詰めで騒がしかった展示室が
誰もいない、静かな展示室へと姿を変えた



どの絵にも、風が描かれていた
セーヌ川に吹き荒れる風

雲を運ぶ風

静かな風

朝焼けの風

夕闇に溶ける風

最後にまた日傘の風を見ていたら、
とうとう閉館時間となった
係の人と一緒に下へと降りた
外に出ても、風のことを考えていた
見えなくても、そこにはちゃんと風がいた
知識なんてなくていい
絵を見るたびに、私だけの風を探す
今は、それだけでいい
