北海道・函館市 16坪の小さな平屋が、大地に根ざすまでの思考プロセス
北海道、函館市
厳しいけれど豊かな自然の中で「16坪」というコンパクトな平屋を設計する。
今回は、一人の建築家として、ひとつの形が「素材」との対話を通じて、より深く大地に根ざしていくまでの思考プロセスを記録してみたいと思います。
1. 骨格を提示する:大地から屹立する「厚い壁」と「厚い庇」
最初の出発点は、建築としての「強さ」でした。
大地から力強く立ち上がる厚い壁
そこから水平に伸び、守りを与える厚い庇(ひさし)

16坪という限られたスケールだからこそ、形はシンプルに、かつ個性的に
当初は、取り合えず今時な?モノトーンを基調とした現代的なデザインを想定していました。
しかし、どこか「今時」なだけの、場所に根ざしていない冷たさを感じたのも事実です。
2. 素材を読み替える:金属から「土」のぬくもりへ
当初検討していたコールテン鋼は、建築的には非常に魅力的な素材です。

しかし、高価な建材であることやメンテナンスを考慮し、より現実的で、かつ「手仕事」を感じる「塗り壁」への方向転換を試みました。

選んだのは、砂や土の粒子をあえて残したラフな左官仕上げ
北海道の厳しい冬の風景の中で、このオレンジがかった温かいトーンは、住まう人を視覚的にも温めてくれるはずです。
3. 深化するコントラスト:甘さを引き締める「黒」の役割
塗り壁にすることでぬくもりは出ましたが、全体として少し「甘め」な印象そこで、背景となる板壁のトーンを再考します。

メイン: 土の生命力を感じるテラコッタ色の塗り壁
アクセント: 全体を引き締める、チャコールグレーの縦板壁
ベース: 地層のようにどっしりと構える、版築(はんちく)風の基礎
素材を重ねることで、単なる「箱」ではない、三層の構成美が生まれました。
流行のモノトーンに頼らずとも、素材のコントラストだけでここまで建物は引き締まるのです。
4. 結びに:時と共に「育つ」家
北斗市の風景は、季節ごとにドラマチックに変化します。 今回辿り着いたデザインは、雪の中でも存在感を放ち、そして夏の日差しの中では深い陰影を作ってくれるでしょう。
16坪というサイズは、独りで、あるいは大切な誰かと謙虚に、かつ楽しく生活するのに「ちょうどいい」大きさ。時を経て汚れさえも味わいに変わるような、この場所に根を下ろした建築
そんな「自分だけの居場所」を、これからも丁寧に作っていきたいと考えています。

建築家:北崎
北海道北斗市を拠点に、素材感と構造美を活かした住宅設計を行っています。
16坪の平屋から、風景に溶け込む住まいのご相談まで、お気軽にお寄せください。
