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13日間の山ごもり 5日目

朝目を覚ますと、涙が出た。
取り返すことのできない日常の夢を見て目が覚めたからだ。
どうしてあんなかけがえのない時間を、私は自分勝手に「いらない」と放り投げてしまったのだろう。しかも、5年間も。

あの時間に戻れたら
戻れたら….
戻れたら….

戻れる…かもしれない。

頭の中で、スイッチがカチリと切り替わったような、突然そんな感覚が生まれた。

きっとあの時に戻れるよ。

ニューヨークの家を解約して
仕事を辞めて
日本でフルタイムの仕事を見つけて
羽田行きの片道航空券を買って
日本に帰ればいい。
それで、「今まで全部私が間違ってた。私に大切なのは、1にも2にも家族なので、どうかもう一度私とやり直してほしい」

そう連絡すれば、きっと昔の幸せな時間が返ってくる。

このことに気づいた瞬間、私から寂しさはスーッと引いて、
1日ぶりのお風呂に入る力が湧いてきた。
さらに入浴後、そのまま少し歩いてライブラリーに向かい、朝ごはんを食べることにした。

網戸越しに見る隣のコテージ。煙突から煙が出てて可愛い。
快晴で気持ちが良い

私はチャットGPTに、
「日本に帰るから、やり直してほしい」
と元夫にメールしようと思う、と伝えた。

チャッピーは
「それはおすすめしない」
と返してきた。

人は別れた時に、「戻れる可能性がある」という想像を作り、痛みを和らげて安心感を作り出す特性があるらしい。

チャッピーからのアドバイスは、
今の考えを書き出してみて
48時間後に読み返し
まだそのメッセージを送った方がいいと思っていたらもう一度考えなさい
そう言われたので従うことにした。

「〇〇君へ
今更遅いことはわかっていますが、私が間違っていました。….」

手紙を書きながら、ブラッドリー・クーパーとジェニファー・ローレンスの「世界に一つのプレイブック」という映画を思い出した。

奥さんに不倫され、暴力で逮捕され、精神病棟に入れられて、退院したら奥さんはすでに一緒に住んでいた家を去ったことを知るブラッドリー・クーパーが、なぜかダンスコンテストでかっこよく踊ったら奥さんが自分の元に帰ってきてくれると信じて、ジェニファー・ローレンスとダンスの猛特訓を始めるのだ。

この映画を見た時に、主人公は躁鬱病で判断能力が欠如していて起こるはずないことを信じてるんだなぁ、可哀想に…とコメディも交え笑って見ていたが、今の自分はまさに彼だ。

でもチャッピーの言う通り、「彼はきっと帰ってきてくれる」という妄想が消えるとまた苦しくなるから、私は手紙を書き続けた。
送ることのない手紙を。

書いているうちに、気持ちが楽になっているのは、彼が戻ってきてくれる可能性のためだけではなく、「もう日本に帰っていい」と自分に言えているためでもあると気づき始めた。

私は、ニューヨークに住んで経験すべきことは大体経験できたのではないか。

孤独

将来の不安
親との大喧嘩
離婚

30年間日本で流した涙の倍の量を、この5年間ニューヨークで放出してきた。
成功したわけでも、脚本家で生活できたわけでも、なんかのコンクールで優勝できたわけでもないけど、もう十分じゃないか。
日本に戻って、新しい生き方を探そう。

そう自分に言ってあげることができて、肩の荷がおりた。

さらに、精神科医の先生が今日も私の生存確認のメールをくれ、先生には実は双子の娘たちがいて、離婚して会えなくなった、と言う過去の話を教えてくれたことも、私の心を少し楽にしてくれた。

ミュージカル「アベニューQ」のオープニングソングで、それぞれのキャラクターが自分の不幸自慢をしながら、自分より不幸な人を見つけて「I feel better now!」と歌うあの感情だ。
愚かな方法だけど、助けとなった。

そのあとは、夕飯の時間になるまで今作っているミュージカルの作詞と脚本を書いていた。
昨夜に作品を書き続ける意義を見失ったが、結局今日また書いている。
なぜなら、締め切りがあるからだ。
モチベーションとは、そういうものだ。

今日の夕飯 白身魚のトマトスープと焼きたてパン

夜ご飯を食べたあと、ひとり近くのビーチまでお散歩をした。

空がひろい
遠くにMt.レーニアが。富士山みたい
うさぎも夕飯タイム

たくさん深呼吸して、うさぎを見ていたら、私には「猫を飼いたい」という夢があったことを思い出す。
東京に帰って、働きながら保護猫を探そうかな。そしたら、家族も増えるしな。

今日は、睡眠薬の量を1粒減らすことができた。

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Kito 応援いただきありがとうございます