きいろいほうがうまい
ハンバーグ用の合い挽き肉が入ったボウルに卵を割り入れた瞬間、私はやっちまった…と思った。
黄身が白い。
いや、白い時点で、黄身と呼ぶのはおかしいのだけれど。
白身?
駄菓子菓子、白身とは、あの黄身のまわりの透明の部分であるわけで…。
では、その部分は透明身…うーん、語呂が悪い、じゃあ透身で。
白身+透身の卵。
ナニコレ、ヤバイタマゴ?
アカン、ヒキニクガムダニナッチマウ…。
「この卵はなんだ…」とヒクヒクした私の頭に、次によぎったのは。
あ!この【コープ自然派】で買った卵!もしかして…!
私は、すぐさまコープ自然派のアプリを開いて、注文履歴を確認した。

【飼料米 100%】
餌が米100%になると、こんなに白くなるのか…。
まぁ、今日はハンバーグだし、卵が黄色かろうが白かろうが問題ないさ!
ひとつ勉強になったぞ!
私は、ホッとしてハンバーグ作りに戻った。

右下のかんじで白かった
このときは良かったのだ。
数日後。
少し寒くなってきた初冬の日。
私は、今期初のおでんを炊いた。
おでんと言えば、私の1番推しのこんにゃく、夫の1番推しの大根、小鬼の1番推しのちくわ、そのほかに、手羽元、ロールキャベツ、卵…。
夕食時、しみしみの卵を箸で割った私は絶句した。
黄身が白い。
いや、白い時点で、黄身と呼ぶのはおかしいのだけれど。(もうええて。)
白身+白身(茹でたから)の卵。
しかも、チョークみたいに、真っ白。
本来の白身よりも、ずっと白い。
その日のおでんの卵は、無味無臭だった。
いや、実際は、すこーし卵の味がしたのだろうけれど。たぶん。
豆腐は白い。
でも、豆腐は豆腐の味がする。
牛乳は白い。
でも、牛乳も牛乳の味がする。
なにより、お米は白い。
でも、お米はお米の味がする。ほんのりと甘い。
いつも黄色かった卵が、たった白くなっただけで。
卵は無味無臭になった。
いつもあった色がなかっただけで。
見た目がいつもより「コレジャナイ感」を出していただけで。
こっくりとしたおでんの卵は、単に丸いナニカになった。
これは、白かったから、味がしなかったのか。
じゃあなにか?
たとえば、ニワトリさんの餌がほうれん草やらブロッコリーなどの緑の食べ物になったら、黄身は緑身になるのだろうか。
そして、それをおでんの鍋のなかに見つけた私は、青臭いと思いながらその卵を食べるのだろうか。
(あまり食べたくない…。)
たとえば、ニワトリさんの餌が牛肉などの赤い食べ物になったら、黄身は赤身になるのだろうか。
そして、それをおでんの鍋のなかに見つけた私は、卵から出汁が出ている、これだったら今後おでんに鶏肉いらないな…、などと思いながらその卵にパクつくのだろうか。
(コレならまだ食べられそうである…。)
いやはや、食べ物の色味が、こんなに味覚に影響を与えるとは。
それとも、私の味覚が少しおかしかったのだろうか。
私は、自ら選んだ、飼料米を食べたニワトリさんから生みだされた卵に、試されていたのだろうか。
38歳というタイミングで、自らが自らの味覚を試すという運命を出生前に設定してきたのだろうか。
負けだ。
完敗だ。
私は中身が白い卵を味わえる女ではなかった。
私の味覚は、視覚によって、多大なる支配(拷問)を受けている。
私は、飼料米100%の卵なんて買うことのできる、高尚な女ではなかった。
これからは、大人しく、中身の黄色い卵…、せめてもの抵抗として、できれば平飼いの卵を購入しようと思う。
📷 トップ画像は、おこめ さま のものをお借りしました。ありがとうございます。
