【Entre AIs】 2-1 内言が少ない
第一章ではハサビスを通してAIの見え方が変わった話を書いた。第二章では、私自身に目を向ける。
内言が少ないと気づいたのは、つい最近だった。
きっかけはレックス・フリードマン。彼がポッドキャストで、内側で言葉が絶えず流れている感じがあまりない、と話していた。
あれ、私もないな、と思った。
小説に出てくるモノローグは、全てフィクションだと思っていた。あれがそのまま内面の写実だとは感じていなかった。読者のための説明か、可視化の工夫だと受け取っていた。
考えることができないわけではない。
ただ、頭の中で言葉を転がし続ける感じが弱い。だから、考えるときはだいたい書く。あるいは話しながら考える。よく吃るし、途中で止まる。その場でまだ組み上がっていないのだと思う。
暗算もかなり苦手だ。数字のかたまりを持っておけない。頭の中だけで保持して、並べて、操作する。その種のことが、あまり得意ではないらしい。
ATOMAのメモ帳
AIを使う前から、外で考えていた。
長く使っていたのはATOMAの小さなメモ帳だ。A7で、少し特殊なルーズリーフになっていて、書いた紙をすぐ入れ替えられる。表表紙から開くと新しく書く側で、裏表紙から開くと記録を読む側にしていた。
中に仕切りを入れて、いくつかの場所へすぐ飛べるようにした。Suicaや紙幣まで入れていた。雑な財布みたいでもあり、小さな作業机みたいでもあった。
いま思うと、あれはメモ帳ではなかった。
頭の中で持てないものを、いったん外に逃がしておく場所。考えたことの保存というより、考えること自体を進めるための道具だった。かなり原始的な、外部思考装置だったのだと思う。
内言が少ない人間は、外に出さないと考えが前に進まない。紙でも、画面でも、声でも、何かに出力して初めて、思考が動き出す。
そういう人間がAIを手にした。見え方が変わる体験だけでは済まなかった。
