Boys Just Want to Have Fun
大好きな画家TORAJIROさんの個展を見にいってきました。
会場は銀座、AKIO NAGASAWA galleryにて、7/3から8/2まで開催。
オープン初日に京都から伺いました!

トラジローさんのことは2年前だったかな?村上隆さん率いるカイカイキキ主催のGEISAIに出展した際に同じく出展されているのをお見かけして、それ以来ウォッチしていました。
もうすでに人気作家ぽいのに、たぶん今回が初のコマーシャルギャラリーでの展示です。
トラジローさんの絵を一言で言うと、日本に暮らすゲイの人生を描いている。

作品の多くは室内画です。
いわゆるガチムチ男性の人物が暮らしている様子を描いている。
マティスのような色彩のハーモニーの中で、彼らはぬいぐるみのような動物たちと一緒にいる。その姿は安心しているようで、どこか寂しげに見える。

トラジローさんの絵を見ると僕は思い出す。
自分より二回りかそれより上の世代のゲイの方と会った時、その人のお家にお邪魔した時の、部屋の中の風景。
観葉植物やぬいぐるみ、若い頃の写真が飾られた静かな部屋。
穏やかさと寂しさ。
歳をとったらこんな風に暮らすのかな。
僕は自分の年老いてゆく姿を想像して、ゲイとしての人生の孤独を感じずにはいられなかった。
同性愛者と異性愛者では人生が明確に違う。
これを読んでいる人が同性愛者か否かによって僕の言っていることの理解もぜんぜん違ってくると思います。
自分が異性愛者であることすら意識したことのない方へ、人と違うと感じたことのない方へ、もっと噛み砕いてお話しすると、同性愛者としての人生を歩む場合、それは二重の人格を持つことなんですね。
ゲイに限って言えば、周囲へカミングアウトしている人というのは極々少数派です。
家族へカミングアウトしている人なんてまず存在しません。
カミングアウトしているオープンリーゲイの方というのは本当に稀なレアケースです。
この社会に暮らす人々のうち10%弱くらいの人がLGBTと言われていますので、同性愛者だって街を歩けばどこにでもいるわけです。
しかし、身近にいるはずの同性愛者の99.99パーセントくらいの人が、友達や職場の同僚、家族に自分のセクシャリティーを打ち明けずにひっそりと暮らしています。
生まれてから死ぬまでずっとです。
想像してみて欲しい。
好きな人やタイプ、恋愛や、結婚、家庭の話、ライフプランについて、共に暮らす家族や周囲の友達に一度も本音を話せずに偽り続けないといけない人生を。
ゲイというその言葉を口にすれば、皆んなと同じように生きられなくなる。
その恐怖に怯え続ける人生を。
ただ同性を好きになる。
それだけで一生が決まってしまうんです。
ゲイとして生まれてしまったら、自分を偽り続ける人生のはじまりです。
クローゼットな世界へと、一生の間、幽閉されてしまうんです。

外では偽りの自分を演じる。
安心できるのは家の中。
ぬいぐるみには心を許すことができる。
動物たちは人間の社会規範とは無関係で、どんな人間であってもただそばに居てくれる。
本当の自分になれる場所は部屋の中で、同じゲイの人たちと一緒にいる時間だけ、自分を隠さず表現することができる。
でも時代は変わってきた。
SNSがインフラとなり同じセクシャリティーの仲間を見つけることが容易にできるし、世間の価値観も偏見のない方向へと変化している。LGBTに対する理解も進み、婚姻の平等への法整備、同性婚もようやく現実味を帯びてきた。
若い世代は、ゲイであることにコンプレックスを昔の世代ほど感じていない。
だから彼らがトラジローさんの絵を見てもポジティブな印象しか感じられないかもしれない。
僕自身は30代で、年上の世代、若い世代の狭間にいるような感覚でいる。
今まで年配のゲイの人ともそれなりにお会いしてきた。
トラジローさんの絵を眺めていると、昔から日本で長年暮らしてきたゲイの方々のことをすごく想像してしまうんです。
LGBTという言葉すらなかった時代の、日本のゲイの先行世代の本当のリアル。
それはこれまで決して美術の分野で描かれることのなかったモチーフです。
トラジローさんにしか描けないものだし、描くべきものであると感じます。
描いて欲しい。
なぜなら僕も半分以上、そこにどっぷり浸かっているのだから。
僕が家族にカミングアウトしたのはつい数年前のことで、30年以上生まれてからずっとクローゼットな世界へ閉じこもっていた。
そして今も僕の心はその部屋の中にあるんです。
外の世界用の自分というのがいて、仕事や暮らしの中で、部屋の内と外を行ったり来たり。
トラジローさんは、そんな僕たちのために描いてくれている。ような気がするんです。
日本でゲイとして暮らしてきた人々の、心を癒してくれる。
多くの人々を救ってくれる作品なんです。

「Sunshower」という作品。
天気雨が降る中、木陰で雨宿りする動物たちとひとりの男。
その外では傘をさして反対方向へと歩く男性。

世間で注目されるようなシャイニーなゲイの世界の傍で、傘もなく雨宿りするしかないゲイだっているんですね。
彼は孤独で、じっと動かず静かに待っている。
でも周りにはいろんな動物たちがいて、ただ一緒に雨が止むのを待ってくれている。
大丈夫だよと言ってくれている。
雨が止んだら、彼は外へと歩き出すのだろうか。
それはわからない。
少し絵画的なことを言うと、装飾的な雨の表現と、色彩の平面性、描写のバランスがとてもユニークです。
ピータードイグのように、絵としての美しさを引き出していると感じます!
ちなみに個展タイトルの「Boys Just Want to Have Fun」は、シンディーローパーの名曲「Girls Just Want to Have Fun」をもじったものらしい。
僕は曲名のことはわからなかったけど、タイトルを見た時ゲイアプリでの誘い文句をすぐに連想した。「Have Fun」とは「楽しもうよ」のことで、アプリで僕はこの便利なセンテンスを学習しました。LOL
シンディーローパーの曲の歌詞和訳を見つけたので貼っておきます。
個展作品と合わせて読んでみるとすごく沁みてくる。
人生の当たり前を楽しむことができなかった人たちがいる。
僕らは楽しみたかっただけなのに。
本当にそれだけ。
なんか泣けてくる歌詞ですわ。
個展情報は こちら
トラジローさんの作品↓
私の今イチオシの作家なので、ぜひチェックしてね。
