企業系VTuberの行く末
私はYoutubeでVTuberを見る機会が結構ある。
好きなゲームの配信をやっていたりすると反応が気になって見たりする。
ファンとか推しとか言えるほどではないが、普通に興味がある人たちではある。
そんなVTuber界隈で最近穏やかではない動きがある。
さる4月16日、VTuber世界一の登録者数456万人を誇るホロライブ所属「がうる・ぐら」の卒業が発表された。
この発表があった直後からホロライブを運営するカバーの株価が一気に下落。
最近でも他のメンバーの卒業があったりしたが、それを凌いでこの1年で最も大きな下がり幅を見せた。
がうる・ぐら自身はここ2年ほど活動量が減っていたらしいが、
それでも世界一のVTuberの卒業はこれだけのインパクトがあったということだろう。
世界一のVTuberが卒業というだけでも驚きだが、ホロライブを運営するカバーの所属タレントはこの1年ほどに立て続けに卒業、もしくは離脱していっているのも気になる点だ。
2024年1月に夜空メルが契約解除、6月にはAちゃんこと友人Aが休職の後退職、8月には湊あくあが卒業、10月にワトソン・アメリアが活動終了、
2025年1月にはセレス・ファウナと沙花叉クロヱが相次いで卒業、
そして4月には紫咲シオンが卒業予定で今回のがうる・ぐらと続いた。
契約解除や一身上の都合のメンバー以外では卒業の理由のほとんどが
「運営との方向性の違い」という理由となっている。
それまでも契約解除や卒業するメンバーはいたりはしたが、数年で数名程度という規模だったのが、ここ1年で立て続けに固まっていて、そしてそのほとんどが同じ理由を口にしているのは気がかりだ。
その原因の1つとして浮かんでくるのが、カバーが2023年から東京証券取引所に株式を上場した直後と時期が重なってくるところだろうか。
また上場後の6月には本社の移転、27億円を掛け建設されたスタジオなども公開された。
そして現在、社員数が650人を数える大企業へと成長しているのである。
所属タレントは80名を超えているらしいが、主力はホロライブ所属のタレント達だろう。
正直言って、一般的な芸能事務所などでタレント80人いて、稼ぎ頭がその1割くらいだとしてスタッフが650人もいる会社など聞いたことがない。
マネージャーも売れっ子には数人つくこともあるがだろうが、
基本マネージャー1人が複数人のタレントを担当することもザラだ。
VTuberが普通のテレビタレントとは違って、技術的な裏方が必要になるといってもタレントの8倍も裏方がいるというのは異常だ。
つまりタレント1人が自分を含めて平均9人分の食い扶持を稼ぐ必要があるということだが、当然全く稼げてないメンバーもいることから稼ぎ頭のメンバーがその数倍の利益を出さなくてはならない。
普段の配信だけでは到底足りるはずもなく、企業からの案件や自社開催のイベントなどに駆り出され負担も多くなっていくのではないか。
この辺が配信などの個人活動でファンとの交流を大事にしたいタレント側と
650人の食い扶持を稼ぐため金回りのいい仕事をやらせたい企業側とのギャップがあるんじゃないだろうか。
VTuberが出始めた初期の頃は企業勢であっても細々と活動していたが、
ここ数年で取り巻く環境は大きく変わり一大コンテンツ事業へと発展し、
現在はその過渡期であると言えるだろう。
タレント側はその急激な変化が当初の活動方針とのズレを感じ、方向性の違いという言葉となっている気がする。
翻って企業側もここまで拙速に事業を拡大させる必要があったかは疑問だ。
儲かる事業には色んな立場の人間が集まってくる。
一般的な大企業なら650人も社員がいれば金を生むプロジェクトには複数の柱があり、人一人への負担は分散され長期的に安定した収入源が存在するものだが、カバーの企業規模と主力といえるタレントの数はアンバランスであるとしか言えない。
タレント一人ひとりに掛かる負担が大きすぎるし、そのタレントが活動できなくなった場合のリスクが大きすぎるのだ。
マネジメント以外の事業にも手を出しているらしいが、それが形となって収益を上げている話は聞かない。
上場してしまった以上、中々企業方針を転換するのは難しいかもしれないが、タレントファーストとするなら、無駄な部署を切り離す決断も必要なのではないだろうか。
さてでは卒業したタレント側についてはどうか。
一般社会でも数年勤めた会社を辞めることはよくあることだろう。
しかしVTuberとなると一般人や芸能人とも事情は異なる。
一般的な会社員が退職しても同じ業界で同じ人物として就職することができる。
これは芸能人であってもあまり変わらない。
一昔前なら芸能人が大手事務所を退職すると芸名が使えなかったり、
業界から干されることも珍しくなかったが、令和の時代はそういったことは聞かなくなったし、芸能人が事務所を移籍するという話も珍しくなくなった。
だがVTuberが事務所を卒業した場合、その外見も名前も企業側の権利であるため、事実上そのキャラクターは引退することになる。
しかし所謂「中の人」は存在しているわけで、同じ業界で生計を立てようとすると全く別のキャラクターで転生するしかなくなる。
実際過去何人もの転生者は誕生しているが、転生前より成功していると
言えるひとは数えるくらいしかいない。
VTuberという職業は当然一般の社会人とは違うが、芸能人やテレビタレントとも違う。
非常に特殊な立ち位置の職業だと言えるし、まだまだ過渡期で先々どうなっていくのかも判然としない。
それを運営する企業側も現在の運営に前例がほとんどないため、
正しい道を進んでいるのかは誰もわからない。
ただ出来ることならVTuber黎明期にあったようなファンと寄り添って、
ファンとタレントが一緒に成長していったあの時代の初心を忘れないでほしいと願っている。

