スーパーツカノ
2007年にコンバットマガジンに寄稿したスーパーツカノの記事です。
米国のPMC(民間軍事会社)大手のブラックウォーター社は耐地雷装甲車の開発にも乗り出して話題になっている。だが、それに飽きたらず昨年エンブラエル社のプロペラ式の戦闘攻撃機、EMB-314スーパー・ツカノを購入しようと画策している。
21世紀になってもプロペラ式の軽戦闘爆撃機(あるいは攻撃機)が必要か?といぶかしる向きもあろうが、これが意外に使いである機体だ。

スーパー・ツカノはターボプロップ方式のベストセラー練習機を元に開発されたEMB-312ツカノ(因みにツカノはブラジルの国鳥である)をベースにアマゾン地域の国境哨戒や対地攻撃機として開発されたものだ。エンジンはツカノの599Kw(814馬力)から1193kW(1621馬力、P&W社PT6A-68)と約二倍にパワーアップされている。これによって固有武装である主翼内の12.7ミリ機銃2丁(装弾数各200発)のほか、1.5トンの兵装が搭載可能で、5箇所のハードポイントに20ミリ機関砲のボッド、MAA-1など短距離用空対空ミサイル、レーザー誘導爆弾など各種爆弾、ロケット弾ポッド、増槽などを搭載できる。
単座型と複座型が存在し、機体のサイズは全幅11.14メートル、全長11.42メートル、全高3.90メートルとなっており、第二次大戦末期の戦闘よりも一回り小振りである。
グラスコックピットと先進的な火器管制装置を採用しているため空戦能力も対地攻撃能力も高い。しかもナイトビジョンを装備しているため夜間の戦闘も可能である。
また座席はゼロゼロ(速度ゼロ、高度ゼロで使用可能)射出シートを採用している。つまりジェット戦闘機に準ずる装備を有しているのだ。というよりも旧式のジェット戦闘機以上の装備を有していると言って良いだろう。
最大速度はクリーンで、時速529キロ、機外搭載品携行状態で453キロとなっており、武装ヘリや攻撃ヘリよりも遙かに高速である。速度が速いということは地上からの対空射撃に捕捉されにくい、つまりは生存性が高い、更には進出速度もこれかた早いことを意味する。最大航続距離も1569キロと長いので、哨戒時間も長い。しかもジェット機に比べて離着陸距離も短く、前線の飛行場で運用が可能である(因みにアパッチAH-64Dの航続距離は増槽無しで約407キロ)。
これらのことから考えるとスーパー・ツカノは対ゲリラ用のコイン機として非常に優れた機体と言えよう。米空軍もCOIN用としてこの首の機体の導入に興味を示している。米空軍は対地攻撃機としてA―10Cを運用しているが、機関砲は30ミリガトリングでこれを使うとオーバーキルやコラテラルダメージが懸念される場合も多い。また運用コストも高いし、前線の部隊の細かな要求に応えることができる。
ブラック・ウオーターはヒューズMD500リトルバードや双発の固定翼機であるCASA212(連装機銃などを搭載してガンシップとして運用)しているが、スーパー・ツカノが導入されればコンボイのルート哨戒やゲリラの攻撃に対する反撃に威力を発揮するだろう。
しかしながら同社はイラクで民間人に向けて発砲したり、現地のPMCの協定に加わらないなどその行動が非難されおり、米政府がスーパー・ツカノ導入による同社の「軍拡」を許さない可能性は高い。
スーパー・ツカノは対UAVや対ヘリコプター戦に関しても有用だ。我が国でもゲリラ・コマンドウ対策用にこのような機体の導入を検討してもいいのではないだろうか。
