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キャスパーAPC

2006年に軍事研究に寄稿したキャスパー装甲車の記事です。キャスパーはV字型の底部を有し、被雷した際には車軸や車輪などを容易に交換できます。駆動部を装甲内部に入れて守るのではなく、あえて外側に出し、モジュール化することで容易に前線で修理ができます。これはその後耐地雷装甲車に大きな影響を与えました。

耐地雷装甲車のエポックメイキング

 キャスパーは南アの国防軍及び警察で採用された大型の4×4耐地雷装甲車である。現在の南ア耐地雷装甲車の特徴である底部V字型のモノコック構造、大胆に防弾ガラスを採用した運転席、飲料水タンクなど南ア耐地雷装甲車輌の特徴を備えており、全周的に7.62ミリ弾に対する耐性を有している。
 キャスパーは南アで生産されていた、民生用のベッドフォード・トラックがベースに使用されている。これも現在でいう、COTSである。
 戦闘重量は12.580トンとラーテル装甲車に比べて約、6.5トンも軽い。運転席上部には四角型のハッチがあり、助手席(通常分隊長席)側ルーフには通常二連装の防盾つきの七.六二ミリ機銃ターレットが装備されるが都市部の治安維持時にはゴム弾機関銃を装備する場合もある。

 また運転席後部にはターレットを取り付けられるハッチがあり、防盾付きの2連装の7.62ミリ機銃ないし、6連発の40ミリグレネードランチャーMGLなどが装備されることが多い。
 大型の兵員室には左右三箇所づつのビジョンブロック(というよりも防弾窓)は良好な視界を確保しており、その厚みは五二ミリで、装甲と同じ強度を持っている。
 防弾窓の下には左右各六箇所のガンポートが備えられている。キャスパーのドアは後部のみに存在する。後部ドアは観音開きで、これまた大型の防弾窓をもっている。

 なお、当初兵員室は無天蓋であったが、火炎瓶や手榴弾からの攻撃に脆弱であるとの理由でルーフが追加された。APC型のルーフにはラーテル同様外向きに開く四角型のハッチが左右3箇所筒設けれている。また南ア装甲車輌の通例通りて二〇〇リットルの飲料水タンクを車内に有している。

高い耐地雷性能

 耐地雷性能は、タイア直下でロシア製TM-57三発(TNT火薬換算で二一キロ)、車体下部ではTM-57発(TNT火薬換算で14キロ)となっている。蝕雷時の復旧に関してはロシア製のTM-57一発であれば一時間から二時間、数発が連続爆発の場合は八時間から一二時間となっている。

 なお、アフリカ南部では道路などに地雷を仕掛ける場合、現在のイラク同様に被害の拡大を狙って、直列、並列に複数の地雷や砲弾を敷設するという手段が好まれた。地雷原の形成を目的とした場合は通常一個ずつ敷設されることが普通であり、敷設方法は大きく異なる。このため南アの耐地雷装甲車は複数の対戦車地雷に対する耐性を要求されてきた。
 
 筆者は南ア陸軍の陸軍戦闘学校(2000年以降、陸軍戦闘訓練センターと改称)-陸自の富士学校にあたる学校-で、キャスパー(無論無人だが)を実際に蝕雷させるデモンストレーションを見学した。蝕雷時に一〇メートル以上舞い上がって破損したキャスパーを回収車がクレーンで持ち上げ牽引する。その後、破損した後部の車輪が車軸ごと交換され、四〇分ほどで再び走行できるようになった。前線でこのような素早い復旧が出来るのは部隊にとって大きなメリットであろう。

蝕雷し、1時間ほどで補修を完了したキャスパー
複数の地雷が同時に爆発


 これも車軸や動力伝達系、サスペンションなどが全てモノコック式の車体の外部にモジュール化されてレイアウトされているからである。

 現在では南アの装甲車の特徴となっている耐地雷構造は南アの装甲車輌開発者がローデシアなどでの地雷対策の経験から開発したものである。その中でもアームスコー(南アフリカ国営兵器会社)の子会社であるメカム社(現デネル社)はローデシアの耐地雷装甲車開発にも深く関わってきた経緯がある。実際、南アのブッフェル、マンバ、RF-32等の耐地雷装甲車はメカム社の設計ないしはその影響を強く受けている。また英オルビス(現在はBAEシステムズ社に吸収)社が90年代に売り出していた空挺装甲車スカラベも同社が設計、試作したものである。


マンバMK2


 これら耐地雷装甲車両の開発に深く関わってきたのがメカムの前社長、ジョイント博士である。同博士は化学専攻にも拘わらず、これら装甲車両の開発に深く関わってきた。同博士によると南ア国防軍でも異様な形をした耐地雷装甲車の導入には当初懐疑的だったとのことである。

警察部隊用に開発されたキャスパー

 キャスパーは実質的に南ア陸軍の別働軽歩兵部隊であったSAPから対テロ部隊用装甲車が必要との要求を受け、アームスコーの主導で開発が進められた。当時SAPはナミビアやローデシアなどで対ゲリラ戦を戦っており、耐地雷車輌の重要性を認識していた。
 開発に当たっては南ア国防軍が最初に導入したモノコック式耐地雷装甲車、フロッシー(医療部隊用の野戦救急車として採用)の開発を下敷きにしている、ボディの形状やコンフィギレーションはフロッシー、その後開発されたヒッポの延長線上にある。実際キャスパーの試作品はヒッポの改良型であるヒッポIIのプロトタイプを流用して制作された。言わば両者は兄弟の関係にある。 開発費用は約8万ラントであった。

 南ア、ローデシアで開発された耐戦車地雷の主たる特徴はV字型とよばれるモノコック構造である。
 この船底型モノコックボディの外部にエンジンや、車軸、トランスミッション、懸架装置などの駆動系を取り付けてある。


V字型底部装甲


 地雷爆発時、爆発は上に指向しているためV字型の底はこの爆発をそらすことができる。外付けされた駆動系パーツはモジュラー化されており、破損すれば容易に取り替えられる。 つまり、破損しないように堅牢につくるのではなく、破損時に容易に交換するとを前提に作られている。正にコロンブスの卵的な発想である。

 乗員は四点式のシートベルトで体を固定して蝕雷時の衝撃や車体の横転などから身を守る。キャスパーの場合、車体後部左右にに予備のタイアを装備しているがこれも蝕雷の際のショックアブソーバーとなる。


キャスパーの車内

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