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EUの武器禁輸措置は有名無実

2008年に月刊諸君!に寄稿した記事です。例によって掲載時に削ったものフルバージョンです。EU諸国への中国への軍事技術移転の実例を挙げています。

  

EUの対中武器禁輸は形だけ

 昨年(2007年)一月訪欧した安倍首相はEUに対し、現在行われている対中武器禁輸を訴えた。だがこれは事情を知っているものから見れば茶番であった。

 確かにEUは天安門事件以来対中武器禁輸を発動し、現在も継続していることになっている。だがその実態はザル状態であり、安倍首相がすべきはEUに「禁輸を確実に履行する」ことを迫ることであった。昨年5月に就任したフランスのサルコジ大統領は同年の訪中時に対中武器禁輸の解禁を目指すと明言しているが、現在もなし崩し状態の武器禁輸を名実共になくそうという動きに他ならない。これは我が国の国益にとって不利益でなくアジアおよび、世界の紛争地の不安定化を更に加速するものである。

 外務省は対中武器輸出の実態は把握しているはずである。「アムネスティ・インターナショナル」など人権団体はEUが対中武器輸出を事実上行っていることを糾弾している。

 外務省は中国と禁輸解除の急先鋒であるフランスにおもんばかって、両国との「友好関係」に波風を立てないように配慮し、首相に正しい情報を上げていなかったのではないか。知っていて首相に情報をあげなかったのであれば職務怠慢というよりもサボタージュ(破壊工作)、「利敵行為」である。知らなかったのであれば情報力の完全な欠如である。いずれにしても外交を担当する役所としては落第である。

  中国の軍事費は毎年二桁成長を続けいる。その総額は明らかにされておらず、公表されている数字の2~3倍であるというのが各国の関係者の共通した認識だ。人民解放軍は総兵力を減少させているが、これは近代化を進めるためである。旧式装備を有した部隊がいくあっても台湾はもとより米国に対抗できない。このため近代化に邁進している。

 人民解放軍の近代化が我が国や欧米先進国のレベルに追いつくにはまだまだ時間がかかるが、10年単位の時間で見てみるとその速度は決して侮ることはできない。

 この近代化を支えているのが、外国の企業だ。ロシアがスホーイ27シリーズなどの戦闘機、キロ級潜水艦、ソヴレメンヌイ級駆逐艦などを輸出したり、イスラエルが無人機や兵器のサブコンポーネント、生産技術を輸出していることはよく知られている。同国は以前、空中早期警戒機のシステムを輸出しようとしたが米国の横槍が入り断念したことなどが報じられている。

 だが、対中武器輸出を自粛しているはずのEUもこれまた多くの武器関係の輸出をしていることはあまり知られていない。これはEUの輸出がイスラエル同様にサブコンポーネントや技術供与などが主体だからだ。これらは完成品である戦車や戦闘機と異なってあまり人目をひかない。

  EUは七〇年代から中国に軍事技術を積極的に行ってきたが、89年の天安門事件をきっかけに自国民を弾圧する独裁国家たる中国に対して武器輸出を「自粛」することを決定した。89年6月にマドリッドで開催された欧州理事会においては、EU加盟国による対中軍事協力および兵器輸出を禁ずる制裁措置決議し、現在もそれが継続されている。

 中国はこの規制の緩和を度々要請してきたが06年12月11日に行われたEU・欧州連合の外相会議でも中国向け兵器輸出禁止措置の解除については今後も検討はするが、当面緩和をしないことで合意している。が、後述する例をみればそれが如何に空文化しているか分かる。

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