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航空自衛隊には航空医学専門医がいないので戦闘機開発を指導する能力はない。

 月刊軍事研究に寄稿した記事です。

防衛省に専門医官はいない

 防衛装備庁にも航空自衛隊にも防衛産業にも最先端の戦闘機を開発できる能力はない。今回次期戦闘機が共同開発になったのは妥当な着地点であった。いうまでもないが、戦闘機は単に機体やエンジン、レーダーや火器管制装置などの個々のシステムやシステム統合などの技術要素だけはなく、裾野の広い業際的な知見や技術が必要である。だが我が国ではそれが軽視されている。現在軽視されているひとつの分野が医学、特に航空医学だ。

 人間が地上から高所・上空へと移動することによって生体には種々の変化が現れる。航空機の普及に伴い、初期の航空機の墜落事故の多くが、パイロットの病気や体調不良から生じることが次第に明らかになり、健康診断によるパイロットの選抜、健康管理により航空機の墜落事後が劇的に減少した歴史がある。これが航空医学のはじまりである。

 戦闘機開発を独自に行う先進国では、航空医学の領域は、パイロットの医学選抜や健康管理の範囲を超えている。耐Gスーツ、酸素マスク、ヘルメットなどの人間の限界を超える高機動戦闘機からパイロットを守るライフサポートシステムの設計開発の助言、操縦室の快適性、モニターや操縦システムの操作性の改善のための助言まで幅が広げられている現状があるが、航空産業の需要と産業化の乏しい日本では航空医学の領域は非常に狭いと言わざるを得ない。宇宙航空医学専門医の領域も国により大きくレベルが異なると言わざるを得ない。自衛隊の上層部も航空医学の認識が非常に希薄なため、その様な認識もなく、米国空軍で高いレベルの航空医学を学んだ医官の活用もできない現状だ。航空医学実験隊などでは、図書室もなく、最先端の学術資料などを入手する制度もない。
 航空自衛隊で運用される戦闘機、F-15やF-35はことごとく米国の企業の特許や秘密で成り立っている。ブラックボックスを渡され、乗り方を教わっているだけだ。自衛隊の研究者がパイロットの救命装備品のアイデアを出しても、F-15やF-35の仕様に組み込むことは出来ない。機体の勝手な改造は許されていないからだ。
 米空軍の航空宇宙医学学校(U.S. Air Force School of Aerospace Medicine(USAFSAM) の「Flight Surgeon Support to United States Air Force Fliers in Combat」には以下のように述べられている。「軍の上級航空医学専門医は、新型機や兵器システムの研究開発にあらゆるレベルで参加し、これらの航空機の実戦に同行する場合もある。戦闘で得た教訓を同僚に伝え、是正措置に反映させることができた。このような軍の航空医学専門医は、航空機乗務員の個人装備や防護装備、航空機乗務員や空輸患者のための航空医療支援装備の開発にも貢献できる。」

航空医学実験隊は有名無実
 だが航空機やサブシステムの開発に関わる航空自衛隊の航空医学実験隊では装備開発は関わっておらず、完成品の確認のみ行っているに過ぎない。航空医学実験隊は飛行開発実験団、電子開発実験団とともに航空開発実験集団の下部組織である。だが航空医学実験隊の研究はまともな研究実績の修士や博士号保持者がおらず、そのレベルは、一般人でも出来る程度の調査研究がほとんどだ。空自衛生では医官であるだけで万能人のように人事配置を行う場合が少なくなく、多くは適材適所がほとんどなく、医官の能力は発揮できい状態だ。
 加速訓練の担当医官は循環器内科や脳外科など気絶を扱う専門医が適任だが、年度末までは消化器内科医が担当しており、現在では放射線科医が担当している。空間識訓練の担当は、めまいや乗り物酔いを扱う耳鼻科医が適任だが、現在は整形外科医だ。低圧訓練の担当は低酸素症状を扱う呼吸器科が適任だが、3月末までは皮膚科医が担当していた。(3月末で異動)。訓練部の部長は眼科医(専門医なし、眼科専門研修未経験)。空幕勤務で階級が上がっただけで医学的なアドバイスはほとんどできない。
 航空医学実験隊はその昔、東大から司令を招聘していた。その当時配属される部長や医官はまさに日本の最高レベルで我が国の航空医学を先導していた。航空医学実験隊の主任研究官や部長、司令は、博士取得者のみ、医官では専門医も取得した手本の存在だった。
 ここ2代は、専門医なし、博士なし、研修すら受けていない司令が抜擢され指導など不可能な状態だ。若い医官や研究職が間違った報告をもちこんでも指摘できない状態となっている。
 陸幕衛生では医学の研修や資格取得がおろそかな者は2佐に昇任させないのが慣例だが、空幕衛生では1佐、将官の主流が専門医なし、博士なしで昇進している。防衛医大の医学研究科を卒業し、1年以内の英文雑誌への論文掲載を条件に医学博士を授与されたにもかかわらず、博士だけもらって論文掲載の義務を果たさずに1佐に昇任する者も見られる。最近内局でパイロットの航空身体検査の症例検討があったが空幕衛生の準備不足で2回連続で継続中止となっているのはその証左であろう。航空医学といっても幅は広いが、その専門的な研究や臨床をやっている医官はいない。これでは10年後、20年後の世界の先端の航空医学から取り残されるだけである。

戦闘機マフィアは衛生がお嫌い 
だが空自ではこの弱体化した航空医学実験隊を更に弱体化させようとしているパイロットを中心にした勢力がある。それは航空事故調査と事故防止の調査研究を行う、航空安全管理隊が存在するが、パイロットマフィアが防衛大学の人脈を利用して、航空医学実験隊を航空安全管理隊に吸収させるよう画策し、航空安全管理隊の事故調査部門は航空医学実験隊に吸収させればよいだけなのに航空安全隊を解体、航空医学実験隊を解体、新たに航空医学安全研究隊を新編するという。これは目黒の航空研究センターを補強するという名目だが、政治家からの指示らしい。

 このように航空自衛隊には航空医学を専門とする医官が殆どいない。3月7日の空幕長会見で筆者は内倉浩昭空幕長に、空自にはどの程度航空医学の専門家がいるのかを質問した。後ほど広報室の方から回答があったが、現在約120名いるという回答だった。だがそれは質問の意図を誤解した回答だった。空幕の回答の約120名は単に航空医学を履修してパイロットの健康診断などが可能な医官数だった。
 空幕の言う約120名の医官とは約6週間の航空医官課程を履修した医官で、部隊等で通算して概ね2年以上、航空衛生業務に従事し、航空幕僚長より航空医官に指定された医官の人数である。だがそれは「専門医」ではない。

空自に航空医学専門医はいないが、空幕は隠蔽 

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