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ドイツ連邦陸軍プーマ歩兵戦闘車

2006年に月刊軍事研究に書いた当時登場したばかりのプーマ歩兵戦闘車の記事です。プーマはその後無理な軽量化がたたってトラブルが多発して多くの改修がなされて、同軸機銃も5.56ミリから7.62ミリに変更されました。

 ドイツ陸軍の新型歩兵戦闘車(ICV)プーマを紹介したが、今回はプーマのさらなる詳細についてレポートする。ある程度の内容の重複はご了承いただきたい。
 プーマは現在使用しているマーダー歩兵戦闘車(ICV)マーダー1の後継として開発されたドイツ連邦陸軍の最新ICVである。

開発経緯
 現用のマーダー1は71年に導入が開始されて以来、過去3度に渡る近代化がなされており、現在のモデルはマーダー1A3となっている。しかしながら採用後35年を経過し、陳腐化は否めない。まず、現在の求められている生存性を満たしていない。空輸が不可能であり、このため戦略移動能力が低い。レパルド2に随伴する機動力に欠ける。更に主兵装が20ミリ機関砲であり、威力の不足が否めないなどをドイツ陸軍では問題としている。
 不都合が生じてきたが、採用後30年以上を過ぎており、これ以上の近代化は費用対効果の面でも得策ではないと判断された。
 
 このためドイツ陸軍は95年新型ICVの開発を検討が開始された。98年初頭には新型歩兵戦闘車戦術コンセプトが決定され、2002年に最終的な性能要求が確定した。また同年末には、2005年末までにシステム実証デモンストレーターの開発を終了することが決定された。
 開発にあたっては連邦国防省のBWB(国防技術資材調達部)主導のもと、PSM(プロジェクト・システム&マネジメント)が主契約社として事業を進めることとなった。PSM社はクラウスマッファイ・ヴェクマン(KMW)とラインメタル・ランドシステムズ(RML)社がこのプロジェクトのために50:50の比率で出資して設立した企業体である。

 2004年には5輌の量産試作と、量産品405輌の調達のため、34億ユーロの予算が連邦議会で了承された。

 プーマ開発に際してはソ連崩壊による欧州正面での冷戦の終結、湾岸戦争までドイツは、法的にはNATO加盟国域外への軍の派遣が大きく影響を与えている。

 戦後ドイツは軍をNATO域外に派遣できなかったが、ソマリアへのPKO域外派遣要請やユーゴ危機などを受け、ドイツ連邦裁は議会の過半数の賛成という条件付きで派遣を合憲とした。これらの平和維持での「実戦経験」が将来必要とされるAVFのあり方や運用に関しての方針に大きな変更がなされた。
 プーマはマーダー1同様主力戦車たるレオパルド2に随伴することになってはいるが、ソ連という仮想敵の消失とともに、大規模な機甲戦が欧州正面において行われる可能性は低下してきた。
逆に連邦軍の国外ミッションではコソボやボスニアの平和安定化などいわゆるMOOTW(戦争以外の軍事作戦)が増大してきた。またドイツ軍は現在アフガニスタンにも参加しているがこれまた、非対称戦である。
 ドイツ軍はこれらの任務を通じて既存の装甲車輌が十分な能力を有していないといとう認識を痛感した。これらの活動においては主たる敵は敵のMBTやICVではなく、地雷、IEDあるいはRPG―7などであり、コソボやボスニアに投入されたレオパルド2やマーダー1は増加装甲付加されたり、対地雷機能を強化された。
 PSMによるとプーマの開発に当たってはこれら国外活動のからの戦訓、具体的にはレオパルド2やマーダー1の改修によって得られたノウハウが設計に反映されているとのことである。

ドイツ装甲車両の新基軸

 現在ドイツ連邦軍はニュー・アーミーと呼ばれる陸軍のストラクチャーと装備の一大変革を行っているが、プーマはその中核となる装備と位置づけられている。ドイツ陸軍ではあらゆる想定の任務に対応できるように部隊の運用を緊急展開に則した軽装備のライト・フォース、高い戦略機動力と一定の打撃力を有したミディアム・フォース、展開には時間がかかるが、火力防御力と充実したヘビー・フォースというカテゴリーを想定している。 しかも、それぞれの間にギャップがでないようにモジュラー型の部隊編成を行っている。
 この中でプーマは主としてミディアム・フォース、ヘビー・フォースに属することになる。

求められた要求

 新ICVに求められたのはまず、MBTであるレオパルド2A6に随伴に十分な機動性、それに高い戦略移動性を確保するため現在開発中のエアバスの輸送機A400Mでの空輸が可能であることが求められた。これにより重量は31.45トンに収めることが求められた。また増加装甲パッケージ装着時で41トン、最大戦闘重量43トンとされた。これは鉄道輸送の際の重量制限を考慮してのことである。

無人砲塔を採用


 更に、あらゆる事態に対応可能な堅牢性と生存性、高い信頼性とともに兵站負担の極小化、高い指揮通信能力(C2)とネットワーク・ケイパビリティが求められた。これにはドイツ陸軍が導入を進めているIdZ(未来歩兵システム)の歩兵を運用が可能であることが前提となっている。通常のIdZの分隊は10名だがプーマの搭乗の分隊はマーダー同様6名で構成される。

 プーマには低緊張度戦から高緊張度戦まで柔軟に対応できるマルチ・ロール性が求められた。その特徴は極めて高い生存性にある。重装甲のために車体重量は重く、増加装甲装着時で戦闘重量は41トンと、第2世代のMBT、レオパルド1とほぼ同じで、現用マーダー1A3よりも10トン近くも増加している。現在欧州で広く使われているCV90シリーズのICVが重量三〇トン前後であるから如何にプーマが重たいか理解できよう。

 砲塔はラインメタルの30ミリ機関砲を搭載した無人砲塔で高度な戦車並のFCSを搭載し、ネットワーク・セントリック機能を装備している。乗員はマーダー同様、3名+歩兵6名となっている。
プーマはA400Mによる空輸が可能で、なおかつ高い生存性の確保が求められた。ともすれば二つの相反する命題をクリアするために、開発に際しては車体を極力コンパクトにまとめることが要求された。

 このため、砲塔および車体の構造は十分な強度を保ちつつ、徹底的に軽量化されている。しかしながら、将来の近代化のために冗長性も確保されている、将来代化に対応するためと、破損部分をモジュラーごと取り替えことによって、使用現場での高い稼働率を維持するためモジュラー化が大胆に取り入れられている。

 無人砲塔が採用されたのは第一に車体重量軽減のためである。無人砲塔は有人砲塔にと異なり車体内の砲塔システムが極小化できるので、砲塔自体の容積及び重量を極小化するだけでなく、車体の全長を縮めることができるメリットがある。
第二に乗員をすべて車体内に収納することにより、砲塔が被弾した際に人的損害が発生しにくいので生存性も向上する。
反面無砲塔は有人砲塔に比べて、周囲の視界を確保しにくい。このためプーマでは砲塔の中央部に360度回転可能な車長用のパノラミックサイトが装備されている。パノラミックサイトは独立式で、サーマル・イメージャー、ビデオカメラ、レーザー測距儀が統合されている。車体後部には左右に3カ所ずつのビデオカメラが装備されており、これらはかなり広い視界を確保している。また運転手用ハッチ、車長用ハッチ、さら兵員室には後部監視用のビジョン・ブロックが装備されている。

 なお、車長用パノラミック・サイトは砲塔の回転軸上に所在し、砲塔前方にはガナー用サイトが置かれている。主砲の30ミリ機関砲は車体右側にレイアウトされている。砲塔が左右非対称であるためと、兵員室のスペースを確保するために砲塔基部は車体中央ではなく、車体左寄りに置かれている。
車体のレイアウトはまず前方に変速機、その後ろにエンジンが搭載されている。エンジンの左横が運転手席となっている。運転席の後ろが砲手席で、その左、エンジン後ろが車長席となっている。このレイアウトは運転手席の死角となる右前方の視界を確保するためである。車長用のハッチはスライド式で、電動及び手動で開閉する。

 なお、各席には大型のモニターが備えられており、すべての席から車長用のパノラマサイトをモニターすることができる。プーマでは歩兵分隊が下車行動をする場合、車長が同行し七名で行動するというシナリオも想定されている。その場合、砲手が車長の代役をこなすことになる。その場合席を替わらずに車長の代役を務めることができるように、設計されている。

 砲手席の後ろは無人砲塔の基部となっている。更にその後ろに兵員二名用シートが備えられている。それと向き合うように右側には4名用の兵員用シートが置かれており、その最後部が分隊長席となっている。また歩兵用シートはエルゴノミックシートが採用されており、触雷時に乗員を保護する。個人装備はシートの後ろに収納する。右側兵員席の外型には二器のNBC用空気濾過器が装備されている。

 後方のランプ式の昇降用ドアはかなり分厚いが、内側は収納スペースになっている。ドアの上部には張り出しが設けられており、ドアを少し開けることによって、張り出しとランプドアの隙間から外部を監視したり、射撃が可能となっている。

 駆動系はデカップリング方式と呼ばれるシステムが採用されており、起動輪以外の転輪やサスペンション、履帯は左右のモジュラー式のコンポーネントに収容されている。これらの工夫によりプーマは19kw/tという良好なパワーレシオを実現している。
 また、現在C3Iシステム、将来歩兵システムとの統合、IFF(敵味方識別装置)などの開発も平行して行われている。

  

装甲と防御

 装甲は現時点では車体自体のレベルA、増加装甲を付加したレベルCが用意されている。
レベルAでは車体前方は携行型対戦車兵器、30ミリAPFSDS弾の直撃、全周的に砲弾の破片に耐えられ、全周囲的に14.5ミリ機関砲弾に耐えられる。また車体下部特に前部は強力な爆破力の地雷や、IED更に形成炸薬式の地雷に耐えられる。プーマはV字型の耐地雷構造はもっておらず、セラミックやチタニウム、複合素材を組み合わせた装甲版を持っているものと思われる。

 レベルCは左右の分厚いモジュラー式の複合装甲のスカート、車体上面、砲塔上部、砲塔全周の増加装甲が付加される。このレベルCでは側面も携行型対戦車兵器、30ミリAPFSDS弾の直撃に耐えられる。車体上部及び、砲塔上部の増加装甲は剣山のように突起が並んでいるような構造になっているが、これは装甲板の重量軽減のためである。
また、駆動系が収納されている左右のデカップルド・モジュラー・コンポーネントも装甲の一種と考えていいだろう。
将来に備えて現在更に強力なパッシブ及び反応装甲の装備が検討されている。またスタンドオフのソフト・キル、及びハードキルの防御システムも搭載するプランもある。

 NBCシステムはドラガー・セフティ社のSBL 100Mを採用しているこれは二つの空気清浄機からなっており、それぞれ二つのカートリッジ式のフィルターが装備されている。通常は200立方メートル、NBC環境下では320立方メートルの空気交換が可能である。
 また、エンジンには被弾や火炎瓶攻撃などに対する自動消火装置、乗員室には自動消火装置と防爆装置が装備されてり、統合統制装置によってコントロールされている。

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