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意外に使える小口径迫撃砲

 2008年に月刊コンバットマガジンに寄稿した軽迫撃砲に関する記事です。
その後陸自はオーストラリアのヒルテンバーガーの60ミリ迫撃砲を採用しました。

迫撃砲とは

 迫撃砲、曲射砲は英語では共にモーター(Mortar)と呼ばれる。モーターは45度以上の仰角をかけて撃つ曲射砲を意味しているが、近代的なもの祖は15世紀のオスマントルコで発明されたといわれている。その後は欧州を中心に普及していったが、要塞防衛用や沿岸防衛用の大口径のものが多くつくられてきた。

 日露戦争で日本軍が旅順攻略で国内の沿岸砲台で使用していた28センチ曲射砲もモーターの一種だ。迫撃砲(Trench Mortar)はその日露戦争中に日本陸軍工兵隊が、打ち上げ花火の機構を真似て手榴弾を投擲するものをつくったのがその嚆矢とされているが、ほぼ現在の迫撃砲が登場したのは第一次世界大戦だった。

第一次大戦で普及した迫撃砲

 第一次世界大戦は短期決戦になるという大方の予想を裏切り、地上戦では互いに延々と欧州の東西にわたる塹壕を掘っての持久戦となった。この塹壕の奪い合いで有効な兵器ということで、多数の迫撃砲が登場した。その中で登場したのがウィルフレッド・ストークスの開発したストーク迫撃砲である。ストーク迫撃砲は口径3.2インチの滑腔砲身と反動吸収用の底盤、二脚を持ち、砲口から下部に雷管を有した砲弾を装填する。これが現代の迫撃砲の祖となっている。ストークはこの発明により、サー(ナイト)の称号を授けられた。

 迫撃砲は初速が低いが故に、駐退や複座機構が必要ない。それ故構造が簡単で、重量も軽い。また生産も簡単でコストも安い。これらのメリットがあるため、各国で歩兵用の支援火力として愛用されてきた。仰角を大きくとり、また精度が低いために直接照準射撃は出来ないが、障害物を越えて比較的近距離の敵を攻撃できることも歩兵には都合よい。

 第二次大戦後は中口径の81ミリ(東側では82ミリ)、大口径の120ミリが主流となっている。これらは歩兵用といっても装甲車などに搭載された自走迫撃砲も増えている(筆者の過去の連載を参照のこと)。また120ミリ迫撃砲に関してはフランスや南アフリカなどのように砲兵が運用する国もある。

 さて、自分の足で移動する純然たる歩兵にとっては81ミリ迫撃砲にしても本体だけで概ね40キロ、砲弾は一発当たり4キロもあり、中々剣呑な重量である。徒歩で移動する場合、大抵本体は砲身、二脚、底盤に分解して運ばれる。運用は5~6名で行われる。それだけ人手がかかる装備である。

 このため大戦中から一人で分解することなく、砲を携行でき、2~3名で運用できる30~60ミリ前後の迫撃砲も歩兵に重用されてきた。この種の迫撃砲では日本陸軍の89式擲弾筒が一番有名だろう。
 これは自動火器が少なく、火力が低い日本の歩兵部隊には極めて有用な兵器だった。連合軍ではニーモーターと呼ばれていた。確かに膝に載せて撃ちたくなるような外観をしてはいる。が、膝に載せて使用するわけでない。
 このニックネームのせいで、鹵獲した89式擲弾筒を膝や腿に載せて撃って、その反動を受けて大けがをした兵士も少なくなかったという。

 戦後も英国やイスラエル、南アフリカ、トルコなどで多用されてきた。例えば英国の51ミリL9A1、スイスのヴェルファー87、イスラエルのC-576などC-シリーズ、南アフリカの60ミリM4コマンドウモーター、ポーランドのLM-60Dなどがその代表格だ。

南アフリカ特殊部隊が使用するM4L3コマンドウ60ミリ迫撃砲。

 これらは特に特殊部隊やコマンドウ、空挺部隊などエリート部隊でその有用性が認められてきた。これらの部隊は基本的に軽歩兵であり、小規模な部隊で、徒歩で行動することも多い。その場合は中口径の迫撃砲の携行が難しい。
 これらの小口径迫撃砲は一般に中口径迫撃砲の用に水準器や複雑な照準や姿勢制御のシステムを有していない(だから軽量小型なのだが)。このため精度はさほど高くない。例えば南アのコマンドウモーターはストラップに目盛りが入れられており、それ目安にしたり簡単なガイド板があったりする。 
 あるいはまったくの目見当で発射し、射撃を行いつつ、弾着修正をおこうことが多い。それでも小部隊で曲射が可能な大きな火力を持つメリットの方が大きい。近年では40ミリグレネードランチャーに取って代われつつあるが、40ミリグレードよりも大きな弾頭が魅力なためか、使用し続けている軍隊は多い。

 変わったところではイスラエル軍はメルカバ戦車の砲塔にソルタム社の60ミリ迫撃砲、C-04を搭載している。これは接近してくる敵歩兵に対抗するためである。車内から操作でき、また面制圧できる迫撃砲は車長が身を晒して機銃で反撃するのに比べ安全で、かつ破壊力も大きい。また障害物の後ろに隠れていても使用できるのもメリットだ。

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