銃器犯罪
月刊VOICEに2007年に寄稿した記事です。掲載した短縮版ではなくフルバージョンです。
対策が追いつかない銃器犯罪
先月発生した長崎市長殺害や愛知の立て籠もり事件など、銃器犯罪が多発している。その背景には5万丁とも言われる膨大な違法銃器の存在がある。これら銃器の多くは海外から密輸されたものであり、国際化の負の一面であるともいえよう。国際化は一般にポジティブなイメージで語られることが多いが、国際化が進めば進むほど銃器はもとより、麻薬や外国人犯罪者の流入が増えるのは自然の流れである。
「銃器密輸をゼロに」といった警察の意気込みはよしとするが、昨今の拳銃撲滅キャンペーンなどをみていると精神論に傾いているように思える。実際問題銃、銃器流入を水際で完全に防ぐ、或いは昭和のレベルに下げるのですら極めて困難であろう。それを実現するには鎖国しかあるまい。
治安当局はある程度の銃器の流入を前提に対策を整える必要がある。
ところが警察および関連省庁の銃器取り締まりに関する意識は旧態然であり、時代の変化に追いついていない。
愛知立て籠もり事件から導き出される教訓と警察の問題点
先の愛知の立て籠もり事件では、犯人に初めに撃たれた警察官が現場に5時間も放置され、それを救出に向かった若いSATの隊員が犯人に射殺されるという痛ましい結果となった。その後犯人は呼びかけに応じて投降したが、愛知県警の対応には世間の非難が集まった。確かに警察は基本的には容疑者を射殺することなく逮捕する方向で事件に当たるべきである。米国のSWATなども映画などせいか強硬なイメージがあるが、対処の基本は粘り強い説得で犯人を投降させることであり、銃器による制圧は最後の手段である。
だが、一般市民や警察官の命が危機に晒された場合、犯人の射殺はやむを得ずという態度で臨むべきである。今回のケースでは既に警察官および犯人の家族2名も既に撃たれ、重傷をおった警官は犯人が立て籠もった家の前に倒れていた。この段階で射殺をオプションに入れるべきだった。5時間も撃たれた警官を放置するなど論外である。犯人を射殺することを躊躇う理由はなかったはずである。しかも立て籠もっていた家屋は一軒の平屋であり、突入部隊の接近も容易である。
県警が消極的な対応をとった第一の原因は最高指揮官である県警本部長および県警幹部に狙撃ないし突入作戦行が失敗した際の責任の追及を恐れたからであろう。突入作戦で死人がでれば責任問題となる、説得を続ける過程で死者が出ても「大事をとった上での被害」であると責任を問われない。つまりは典型的な官僚の事なかれ主義に支配さ、決断力がなかった。第二に本部長のSATを指揮する能力の欠如が挙げられる。SATが出動する際には県警本部長(警視庁であれば警視総監)が直接指揮を執る。現場のSATの隊長が如何に綿密に作戦を立案し、実行する能力があっても「最高指揮官」たる本部長に指揮能力と胆力がなければ意味がない。一匹の羊に率いられたオオカミの群れは、一匹の狼に率いられた羊の群れには勝てない。
恐らく本部長クラスの年代だと、警察官が正当な理由に基づいて発砲したケースでもマスメディアや世論から袋田叩きにあった時代の記憶が身体に染みついているのだろう。それ故消極的になるのであろう。
対策としては、まず本部長に鉄火場に弱い人物を据えないこと。一般論であるが、現場を経験している刑事畑出身者を据えるべきでろう。警察のトップは慣例として刑事畑でなく、少数派である公安上がり人物が就くことが非常に多い。この慣習は見直すべきである。
次に本部長を含め幹部には、平時からこのような凶悪犯罪に対するシミュレーションやロールプレイングなどの演習を行わせることである。
SATの練度を上げよ
SATの練度にも問題がある。今回のSAT隊員が死亡した愛知県警のSATの練度に問題があったと考えられる。あらかじめ断っておくが、それは殉職された警部の個人的な資質ではなく、組織としてのSATに問題がある。
SATは警視庁を含め8つの都道府県警に置かれているが、フルタイムの部隊は警視庁と大阪府警のSATのみである。他県警のSATの隊員は、普段は機動隊に勤務しており、事件が発生したときのみSATとして活動するパートタイマーである。このため東京や大阪の部隊とは練度に大きな差があると考えてよい。
まずすべてのSATチームをフルタイムの部隊に改編すべきである。それと同時に訓練時間と予算を拡大すべきある。凶悪犯罪が起こる可能性は多くの人口を抱える東京や大阪が圧倒的に多い。このため各SATチームで経験の格差が生じる。このため人員のローテーションを各SAT間で積極行い、経験やノウハウを共有すべきである。更に欧米などの警察の特殊部隊などとの共同訓練や交流を増やす。本部長ら警察幹部も外国の特殊部隊の現状を視察し、実感として特殊部隊の運用に必要な知識と心構えを涵養する必要がある。
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