見出し画像

「やっぱり自衛隊は戦えない」

2009年に月刊正論に寄稿した記事のロングバージョンです。分量はほぼ二倍です。今読み返すと「予言の書」というか、防衛省と自衛隊は何も変わっていない。

自衛隊はハイテク軍隊ではない

 一般的な日本人が持つ自衛隊に対して抱いているイメージは「最新の米国製や国産兵器で武装したハイテク軍隊」といったところだろう。

 確かに、自衛隊は世界でも少数の国しか保有していないF-15戦闘機やイージス艦、最新型のAWACSなどのハイテク兵器を保有している。しかも世界に冠たる先進工業国であり、戦車や戦闘機にしても自国で開発できる。世界でこのような先端兵器を自主開発できる国は極めて少ない。しかも世界第二位の経済大国で、約4.7兆円の国防費を支出している。こういう背景を鑑みても、そのようなイメージを抱くのは当然だろう。


 だが、その実態はそのイメージとはかなり異なる。一部のハイテク正面装備を除けば、旧式な兵器が多く、それらは近代化もされずに放置されている。例えば73式装甲車や74式装甲車など70年代、つまり30~40年ほど前に採用されたが装備が殆ど近代化されずに放置されており、現代の戦場での生存性は低い。陸自の装甲車輛は殆どクーラーが装備されていない。
 化学防護車もエアコンが無く、このため車体を密閉してNBC環境下で活動できるのは夏場では30分程度とされている。現場からエアコン装備の声があるが、実現はしていない。他の装甲車輛も同様である。またNBC防護服の性能も低く、数も足りない。

 空自では戦闘機の数は多いものの、AWACS(早期警戒管制機)や空中給油機、電子戦機など支援機の数が少ない。しかも航空基地のシェルターが少なく、特殊部隊に迫撃砲などで攻撃されれば高価な戦闘機やAWACSが地上で容易に撃破されてしまう。

 帝国海軍の伝統を受け継ぐと自称する海自の艦艇は「伝統墨守」の伝統のせいか、諸外国に比べて自動化による省力化、ステルス化や電気推進システム、複合材料など導入など新技術の導入が遅ている。一部の識者がいうような「世界の最先端」を行っているわけではない。また近年テロに対する対策のために、機銃や機関砲を搭載したリモート・ウェポン・ステーションと呼ばれる無人砲塔などもこれまたまったくなされていない。

無人機後進国日本

 また世界有数のロボット生産国にも拘わらず、3自衛隊ともうUAVなど無人機の導入は遅れている。既に先進国だけではなく既に中国、韓国、ヨルダン、インド、グルジア、ポーランド、南アフリカ、パキスタンなどの国が自国開発、あるいは輸入してUAVを運用している。UAVは偵察や監視、哨戒などに使用されることが多いが、UAVや人工衛星、歩兵の観測装置と、戦闘機や戦車などをつなぐ必要なネットワーク化、情報化も遅れている。

 装備の保守や訓練の予算も足りない。海自は定数80機(更に予備機が10機ほど存在)のP3Cを哨戒機として運用しているが、整備予算が足りず、既存の機体から部品を取り外して部品の「共喰」で凌いでいる状態である。P3Cの稼働率はかなり低いと見て間違いない。陸自の火砲は砲身などは諸外国に比べて交換までの時期が遙かに長いが、それは実弾射撃が少ないからである。それは実際に弾薬を使用する訓練がが少ないからである。
 155ミリ榴弾砲FH-70は2年前まで最大射程での訓練射撃を行ったことがなかった。現代の榴弾砲は砲弾と装薬が分離されおり、トイレットパーパー型のモジュラー式の装薬を射程に合わせて装填する。最大射程で撃てばそれだけ砲身や機関部に負担がかかる。射撃が少ない、あるいは短い射程ばかりで訓練するから砲身の摩耗が少ない。

 これは陸自の元将官から伺った話だが、現場の隊員が使うスコップなどは長年使い続けて、民間ならとっくに買い換えているような、先がすり減って丸くなっているものを使っている。しかも使い終わった後は丁寧にそれを水洗いし、布に包んで大切に保管している。現場ではこういじましいまでの節約を行っている。

 このような正面装備以外の面ではお寒い状態となっている。つまり、一部の目立つハイテク兵器を除けばNATO諸国どころか、途上国からみても装備面で遅れている面が多い。

防衛省は買い物官庁で買い物ヘタ

 世界有数の防衛費を使いならがら、それに見合った調達ができず、一部の高価な正面装備を不合理な調達方式で必要以上に高い値段で買うために、他の装備や訓練・維持費などに金が回らない。平たくいえば買い物が下手なのである。兵器の値段は為替の差や取引条件によって大きく異なるので、単純に比較はできないが、概ね我が国の場合諸外国の3~6倍ぐらい思って間違いない。

 自衛隊は諸外国の軍隊に比べれば、隊員の教育水準は高く、精強で、よく訓練されている。人員の質は世界有数だろう。だが、このような装備の調達・運用の面では有事に「強い軍隊」であるかというと、これはかなり心許ない。

ここから先は

12,079字 / 3画像
この記事のみ ¥ 300
Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

過去に書いた原稿に加筆したり、大人の事情で削除された箇所を掲載した記事です。

Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?