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アメリカの軍事産業 「世界一だからアメリカ製兵器を買え」と言われたら

2006年の月刊諸君!に寄稿した記事です。当時から米軍事産業の衰退は明らかでした。それが現在のボーイングの凋落や開発コストの高騰や開発の長期化につながっています。

「アメリカ製兵器は世界一だから買え」、と言われたら、「ならば何故米軍は外国製兵器ばかり使っている?我が国も米軍が使用している外国製兵器を輸入します」と切り返せばよい。

 フォードやGMなどビッグスリーの凋落が好例だが、米国製造業の空洞化と衰退は由々しき事態になっている。軍需産業も例外ではない。

 まず火器を見てみよう。拳銃はイタリアのベレッタ社製、小銃、機関銃はベルギーのFN社やドイツのH&K社製。迫撃砲は81ミリが英ロイヤル・オードナンス(現BAEシステムズ、120ミリがイスラエルのソルタム社のライセンス品、155ミリ榴弾砲はBAEシステムズ社製である。 

陸軍のストライカーや海兵隊のLAVなどの装輪装甲車は米国ジェネラル・ダイナミックス・ランド・システムズ社(GDLS)が生産しているが、これらはスイスのモワーグ社の開発したピラーニャのライセンス生産品である。更に米軍の装軌式装甲車(キャタピラ式)を生産してきたユナイテッド・ディフェンス社は05年にBAEシステムズ社に吸収され、英国資本となっている。現在米陸軍は現在の戦闘車輛を一新するFCS(Future Combat Systems 将来システム)なるプログラム推進中だがが、BAEシステムが大きな役割を占めている。(因みにBAEシステムズ社は米国防総省の契約高ランキングの6位に入っている)。

イラク、アフガニスタンで米軍はゲリラの地雷やIED(手製爆弾)で手ひどい被害を受けて、慌てて南アフリカのOMCランド・シテムズ社(BAEシステムズ傘下)のRG-32などの耐地雷装甲車などを輸入した。現在ではカリフォルニアのフォース・プロテクション社も米軍向けに「クーガー」や「バッファロー」などの耐地雷装甲車を供給しているが、同社の耐地雷装甲車の設計を担当したのは南アの耐地雷装甲車開発の第一人者で近年米国に移住したジョイント博士である。米国にはこのような耐地雷装甲車開発のノウハウが無かったからである。つまりアフガンやイラクの米地上部隊の将兵は、多くの外国製兵器で戦っているのが現実なのである。

RG31は南アフリカ製

 米国は航空宇宙分野では絶対的な優位を保っていると思われがちだが、それも怪しくなってきている。米空軍の大統領専用機が「エアフォース・ワン」と呼ばれているのはご承知の通りだが、大統領専用ヘリコプターは海兵隊がこれを運用しており、「マリーン・ワン」と呼ばれている。過去「マリーン・ワン」はこれまで代々米国製ヘリコプターが充てられてきたが、次期「マリーン・ワン」ではなんとアグスタ・ウエストランド社(英・伊)のEH-101が米国のシコルスキー社のS-92を破って契約を獲得した(調達機数は23機)。

 大統領のシンボル的な存在である「マリーン・ワン」に外国製機体を採用するなど90年代では考えられなかったろう。更に米陸軍は新型の多用途ヘリコプター(LUH)として、6月にユーロコプターUH-145を採用した(商戦に敗れた米国のベル社などの物言いで、現在調達決定は棚上げになっているが)。空陸軍共同の戦術輸送機JCA(Joint Cargo Aircraft 統合輸送機)プログラムではイタリアのアリエナ社のC-27(ロッキード・マーチンと共同で開発)、EADS(European Aeronautic Defence and Space Company)のCASA C295の競い合いとなっている。ロッキード・マーチン社提案したC-130Jは早々に候補から落とされた。空軍の次期空中給油機はボーイング社の不祥事で仕切り直しとなった経緯があるが、ボーイング社のKC-767でほぼ決定していたのだが、ボーイングの起こしたスキャンダルで仕切り直しとなり、EADSの提案するエアバスA330ベースのKC330がほぼ互角に争っている。

 国防産業を含め、米企業は目先の株価の上昇と利益を確保するために、国内工場へ設備投資したり従業員の教育にはカネをかけるよりも、国内の工場を畳んで外国に生産を移す。或いは生産そのものを止めて、生産を外国企業に委託するといった傾向が強い。

 業績がそこそこ黒字の工場でも株主にバランスシートを良く見せるためバッサリ閉鎖される事も少なくない。ボーイング社は現在開発中の新型旅客機787の主翼を三菱重工に下請けに出している。主翼は航空機の要の部分である。幾ら安くあがるからといって、外国企業に丸投げするのは、自社の技術力の維持という観点かれみれば如何にも安易である。

 米国で稼働している産業用ロボットは我が国の三分の一強程度(我が国は約三五六〇〇〇台に対して、一二五〇〇〇台国際ロボット連盟調査による)に過ぎない。この数字からも米国製造業の空洞化が読みとれるだろう。

 国内に研究開発だけ維持すれば開発力は維持できるというアナリストの空論である。開発拠点と生産現場は車の両輪で、両者の密接な連携が無なれば、迅速かつ合理的な開発は不可能である。開発部門が工場など製造現場から切り離されは弱体化する。

 また米国企業は金融力にものを言わせて、外国企業を買収することが多い。手っ取り早く成長できるからだ。例えば先のGDLS社はモワーグ社、オートストリアのシュタイアー社(装甲車輛)、スウェーデンのボフォース(火器)社などを所有している。確かにこれらの企業群の製品を組み合わせることでシナジー効果は得られるだろう。だがそれは技術開発や生産の外注化・空洞化を進めるだけで、実は米国内のGDLS社自身の開発力向上には貢献していないのである。

 ペンタゴン向け商戦で外国企業が売り込みをかける場合、大抵は米国企業とのジョイント・ベンチャーとして提案されることが多い。先の「マリーン・ワン」はロッキード・マーチン社が、KC330はノースロップ・グラマン社、JCAのC295はレイセオン社が外国のパートナーとなっている。ジョイント・ベンチャーと言えば聞こえがいいが、要は口利屋、ブローカーである。これまた国内産業の空洞化を加速している一因である。

 米軍に兵器を供給している外国メーカーは、米国内に工場建設しているケースが多く、これらが米国の兵器産業の空洞化を埋めているともいえなくもない。米国向けの製品を開発する拠点も設けている企業もある。が、メインの研究開発拠点や生産拠点を米国に移したりはしない。トヨタやホンダの米国進出と同じである。つまり外国メーカーの進出は雇用の創出にはなるが、米国の研究開発の下支えとはならないのである。

 米国防産業の製造及び研究開発機能は危険なほど空洞化が進んでいる、というのが筆者の見方である。過度に米国に兵器の調達を頼るのは危険である。調達先の多様化、それに「武器輸出三原則等」を見直して、欧州などとも兵器の共同開発を通じて関係を強化するべきである。それが米国からの「押し売り」を防ぐことにもなる。

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