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機動戦闘車

2007年に月刊軍事研究への寄稿です。機動戦闘車が完成する前に書いた論考に加筆しました。南アのロイカットやイタリアのチェンタウロなどを紹介、比較もしています。また加筆でクーラーなどついて言及しています。

 昨年9月、防衛庁(当時)は九年度の概算要求で「機動戦闘車」なる8輪装甲車の開発予算を要求した。しかし財務省はこの予算を認ず、防衛庁(当時)も復活折衝では「機動戦闘車」の復活を要求しなかった。だが、防衛省は「機動戦闘車」に関しては今後も予算を要求していくとのことであった。恐らくは一〇年度予算として再び要求されるのであろう。

 「機動戦闘車」に関して防衛省、陸幕とも詳細な情報は公開する予定はないそうなので、防衛庁HPで公表されている政策評価、あるいは業界から漏れ伝わってくる情報を参考にするしかない。

 まず、概要であるが「機甲科部隊に装備し、多様な事態への対処において、空輸性、路上機動性などに優れた機動力をもって迅速に展開するとともに、中距離域での直接照準により、軽戦車を含む敵装甲戦闘車両等を撃破するために使用する」とされている。

 因みに開発予算は19年度概算要求では26億円が要求されたが開発総額は171億円である。主契約社は三菱重工である。具体的には8輪(恐らく8×8、あるいは8×6であろう)の装甲車であり、戦車砲を搭載することになる。プラットフォームに8輪が選ばれたのは一〇五ミリ砲発射の反動を十分に吸収できること、またタイアの接地面を増やすことにより、接地圧を下げ、良好な不整地走行能力を獲得するためであろう。

 使用が想定されている状況は、まず島嶼などに敵が空挺戦車など、軽戦車などを含む空挺部隊、あるいは上陸部隊に対して対機甲戦をおこなうというもの。もう一つは対ゲリラ・コマンドウ戦において普通科部隊に対して火力支援を行い、その前進や突入の援護を助けるというものである。政策評価では「高い戦略機動性を有する」と謳っている。

必要とされた戦略機動性

 まず装輪である故に、装軌車両よりも高速でかつ長距離を移動できる。更に空輸が可能であることこれは諸外国の8輪歩兵戦闘車の重量は二五トン前後であるので、MGSのような無人砲塔を搭載しない限り、空自が保有するC130Hでの輸送は不可能であるので、有人砲塔を採用するであれば現在開発中のCXの輸送が前提であろう。

 C-130は世界中で使用されているベストセラー機であり、戦術輸送機のデファクトスタンダードではある。しかしながら初飛行は54年であり、そのペイロード及び胴体径は当時、或いは近い将来を見越して決められたものである。現在でも多くの装甲車輛がC-130搭載を前提に設計されるが、それによって本来必要な能力をそぎ落としている場合が多々見られる。

 以前拙稿で取り上げた米陸軍のFCSの自走砲などとその好例である。筆者はこれを「C-130のくびき」と呼んでいるが、CXという代用機種みこめているのであれば、今後何十年か使い続けることになる車輛を無理矢理C-130に合わせる必要ない。CXのペイロードを前提とすると「機動戦闘車」の重量は26トンであるから。戦闘重量が二八トンぐらいになっても燃料・弾薬を降ろし、増加装甲をはずせば空輸は可能であるが、この場合即応性が劣ることになる。だが即応性を重視するならば可能な限り戦闘重量を二六トン以内に抑える必要がある。

ところが冷房システムは300キロ重量が増加となるので見送られた。

 主砲は既に昨年朝雲新聞が105ミリ砲を搭載すると報じていたが、筆者も防衛省に確認をしたところ、105ミリ砲を搭載する予定であることを確認した。ただし、それが七四式戦車と同じL7なのか、それとも低圧砲、或いは低反動砲を含めたたの砲であるかは明らかにされなかった。

 後述する他国の同様の車輛でも正面装甲でもせいぜい中口径の機関砲弾に耐えられる程度であり、大口径砲の徹甲弾に耐えられない。正面以外の装甲は言わずもがな、である。軽戦車とはいえ、それなりの装甲をもった敵戦車交戦すれば不利であるのはいうまでもない。

 事前評価でも収得の必要性として87式偵察警戒車では敵軽戦車などを撃破できる瞬間交戦能力が不足していると指摘している。これらのことから他国の例と同様に、MBTと同等或いはそれに準ずるFCSが採用されると想像できる。
 その場合90式、或いは現在開発中のTK-X(新戦車)のFCSが流用されるのだろう。そうなれば調達、訓練などもある程度共用化できる。また90式戦車およびTK-X同様、自動装填装置を採用すれば装填手が減り、重量及び車内容積が抑えられるメリットがある。

 想像図を見る限り有人砲塔が採用すると思われるが、米ストライカーMGSのような無砲塔型が採用される可能性も否定はできない。
実は8輪で大口径砲を搭載した装甲車が登場したのはというのは、実はそれほど多くない。特に実戦に配備されたものを少ない。以下にその少ない例である南アのロイカット及び、イタリアのセンタウロ、米国のMGSを紹介する。

戦訓を反映したロイカット

 南アフリカ国防軍はパナールの4×4偵察用装甲車、AMLを国産化したエランドを偵察及びパトロール用装甲車として使用してきた。1961年に当初はパナール社からのAMLの輸入が決定され、100輛が輸入さた。これがMk1である。その後のシリーズは1962年からロイメック・サンダック(現BAEシステムズOMC)がライセンス生産を担当し、徐々に国産率を上げていき、駆動系やエンジンなどに改良が施されていった。

ロイカット


 南ア国防軍向けの最終型Mk7は79年に登場したがオリジナルのAMLより若干車体を延長し、車内容積を拡大している。AML同様、主兵装は12.7ミリ機銃、60ミリ後装迫撃砲、90ミリ砲を搭載したモデルが存在し、500輛以上が生産された。内90ミリ砲搭載型のエラント90は150輛ほどが生産された。90ミリ砲はGiatのHEAT、HE弾が発射可能な、DEFAをLIW(現デネル)が国産化したものである。

 元来小型、コンパクトなエラントはこれ以上の発展が見込めない。対してSWAPOなど敵対勢力はロシア製の装備の導入で着実に火力、機動力を向上させていた。このため、70年代半ばからエラントに代わる新型偵察車の開発が南ア国防軍と、兵器調達を一手に担当する国営兵器会社、アームスコー(ARMSCOR、Armaments Corporation of South Africa)によって検討されてきた。

 南ア国防軍は少ない兵力で周辺国家から侵入してくるゲリラのから非常に長い国境線を守るためのパトロール、或いはアンゴラや南西アフリカ(現ナミビア)などに対する越境行動に際しては、極めて長大な距離を移動する。しかもそのエリアにはゲリラや敵の小部隊が常に潜んでいる。
 
 当然その際には常に偵察部隊が担当する偵察や後方のパトロールは極めて広い範囲で行われる。しかもこれらの地域は乾燥地帯であり、飲料水の確保すら難しい地域ある。しかも兵站が限られているため、装甲車輌には前線でのメンテナンス、修理が容易である必要がある。また、有力な敵部隊と接触しても逃げ切れるだけの機動力、ある程度敵を制圧できる強力な火力が必要であった。

 南ア陸軍は、他にエラントの砲塔を流用したラーテルICV(歩兵戦闘車)の火力支援型も存在する。これはラーテルファミリーで構成される機械化部隊の火力支援用に開発されたモデルである。車体規模では余裕があり、長期にわたる活動が可能である。ラーテル90の正面装甲は12.7ミリ弾に耐えられるが、その他全周的には7.72ミリ弾に耐えられる程度の装甲であった。砲塔は手動であり、瞬間交戦力がなく迅速な射撃ができなかった(それでもラーテル90でT-55やT-62などの敵戦車をかなり撃破したそうである)。これらのことから偵察用としては生存性が十分では無いと判断され、新しい強力な偵察車輛の開発が決定されたのであろう。

 80年代初頭、ロイカットの開発に際しては3つのタイプのXDM(experimental Development Model、実験試作型)が設定された。第一に戦闘重量22トンで、6×6、76ミリ砲搭載型、第二に戦闘重量24トンで、8×8、76ミリ砲搭載型、第三に戦闘重量30トンで、8×8、105ミリ砲搭載型である。このうち第二のタイプが採用されることになった。
 6×6が採用されなかったのは車体規模が小さく、十分な防御力が得られず、将来的な近代化が難かったからであった。105ミリ砲は威力が大きいものの、携行弾薬の数が限られる。

 これは長期にわたって単独行動をとる南ア陸軍偵察部隊にとってはマイナスである。敵の戦車や戦闘車輛に遭遇した場合は徹甲弾が有効であり、敵歩兵部隊などと遭遇した場合には榴弾が有効である。
 例えば両者を半々に搭載した場合、片方を消耗し、その後は徹甲弾で歩兵部隊、榴弾で敵戦車と戦わなくてはならないような状況は極力避けたい、ということである。
 また南ア陸軍は戦訓からイスラエル国防軍同様、できるだけ多くの弾薬を携行することを好む。更に76ミリ砲の方が105ミリ砲より速射力でも勝る。敵の戦車はT-55やT-62などであり、初速の高い76ミリ砲で十分に撃破できる。故に76ミリ砲が採用された。将来T-72などが登場した場合には主砲を換装すると言った割り切りが行われた。事実その後、後述の105ミリ砲塔型が開発されている。

 実際の開発は85年から開始されて5輛の試作車輛が製造され、86年から87年にかけて試験が繰り返された。87年にはほぼ実車に近い最終型の試作車輛が開発されて、各種のトライアルを行い、89年に開発が終了。90年から南ア陸軍で運用が開始された。なおRooikatとは南アのネコ科の猛獣であり、日本語で発音するとロイカットが近い。一部でルーイカットとの表記があるが、その発音では少なくとも南アでは通用しない。同様にロホックをルーィバルクなどと表記しているがこれまた英語風に読んだ誤りである。

 ロイカットは戦闘重量が28トンで、当初の計画よりも2トン重量が増加している。これはこの種の偵察車輛では群を抜いて重い。後述するセンタウロの戦闘重量が25トンである。これは十分な防御力を備えるためで、装甲はもちろん高い耐地雷性を有している。また、アパルトヘイト時代、輸送機の輸入が武器禁輸で限られており、南ア空軍は少数のC-130、トランザールの他はDC-3が主力ということもあり、空輸に際しての制限をはじめから考慮しなかったということも背景にあるだろう。

 車体及び砲塔は防弾鋼板の溶接構造で、正面装甲は南部アフリカでポピュラーなロシア製の対空用ZU-23―2二連装23ミリ機関砲(対地戦闘でも多用されていた)のAP弾に耐えられる。その他の部分は7.62ミリ徹甲弾に耐えられる。また車体下部でのTM46の爆発に耐えられるなど、極めて高い耐地雷能力を有している。つまり装甲を正面と耐地雷に集中している。また車輪一個を失っても最大速度で走行が可能であり、左右片面の車輪2個を失っても依然走行が可能である。このため損傷、特に蝕雷を受けても、戦線から離脱できる可能が高い。車体中央部左右、車輪の間には脱出用のハッチが装備されている。
 
 乗員は四名で、運転手席は車体前部の中央に位置し、車長、砲手、装填手は砲塔に所在する。563馬力の水冷ディーゼルエンジンを車体後部に搭載しており、路面の状態によって駆動を8×8と8×4に切り替えられる。最大速度は路上で時速120キロ、不整地で60キロと高い走行能力を有しており、航続距離は1000キロと長大である。

 主砲の62口径76ミリ砲、GT4はLIW(現デネル)がライセンス生産をしていたオトー・メララの海軍砲を元に開発したもので、砲弾は独自の規格となっている。弾種はHE-T(High Explosive Tracer、榴弾―曳光弾),APFSDS-T (Armor Piercing, Fin Stabilized, Discarding Sabot-Tracer離脱装弾筒付翼安定徹甲弾-曳光弾)の2種が開発された。APFSDS-Tは弾頭重量が九.二キロで、初速が1,610m/sで、射程距離二~三千メートルでT-54/55、T-72を撃破できる。HE-Tは最大射程が一万二千メートルで、三千メートル以上は非直接照準となる。主砲の俯仰角は-10~+20度である。

 装填速度は毎分6発で、携行弾数は48発である。副武装の七.六十二ミリ機銃は同軸と、砲塔上にあり携行弾数は三六〇〇発となっている。また砲塔後部側面に各8基づつの八一ミリ発煙筒を有している。車長用サイトはラーテルと同様な三六〇度のビジョンブロックと、前方用の一二倍の光学サイトが装備されている。砲手用のペリスコープは昼夜兼用の八倍(ラーテルと同じもの)である。
 火器管制システムはレーザー・レンジ・ファインダーの他、風量測定器、温度測定器など各種センサー、デジタル弾道コンピューター、二軸の安定装置などが組み込まれたもので、照準から初弾発射までの所用時間は二秒前後である。これらはセンチュウリオンを改良したオリファント戦車開発のノウハウが活用されている。ロイカットは概ね第二と第三世代の中間ぐらいの主力戦車と同等の射撃能力を有していると言える。

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