防衛調達の問題点(前編)
2008年に月刊軍事研究に寄稿した防衛調達の問題点を指摘した記事の前編です。山田洋行スキャンダル後の記事ですが、問題点の多くは現在も改善されていません。
我が国の防衛装備調達の異常さ
昨年発覚した山田洋行を発端とする防衛省調達スキャンダルでは元次官を巻き込み、世間の注目を集めた。結果とてして防衛調達のあり方、特にその非効率さクローズアップされた。だが、マスメディアの報道はそのほとんどがスキャンダルや政局に集中しており、防衛装備調達の根元的な問題があまり論じられてない。
長年防衛調達が非効率な原因は多々あるがそのなかで一番大きいのが、防衛装備調達の最大の問題点は装備調達に先だって調達期間、調達数、予算総額を決めない我が国の特異な調達システムにあると筆者は考える。
諸外国では一般に装備の調達に際して、まず自国を取り巻く将来の安全保障環境を予測し、5年なり、10年なりの具体的な未来における周辺諸国(特に仮想敵)の脅威の度合いを見積もる。それを元に戦略を策定し、ドクトリンを決定する。これを元に装備の調達数、調達期間、調達金額を決めて、サプライヤー(メーカーや商社)と契約する。
例えば隣のA国が第4世代の戦闘機を大量に導入している。現在我が国は航空優勢を維持しているが、このままではあと10年も立たない内にその優勢を失うだろう。そうならないために新戦闘機の導入が必要である。3年後から5年間で新型戦闘機が10飛行隊、150機が必要である、調達コストは1機100億円で、総額は1.5兆円であると言った具合だ。
つまり、いつまでに戦力化したという具体的な目標があり、それまでに新装備を揃え、訓練を終え、実際に運用を行う。8年後に必要な新戦闘機の部隊が20年後に揃っても出し遅れの証文で意味はない。ナンセンスである。
ところが、防衛省では調達する装備の数も、総数を揃えるまでの期間も、必要な予算の総額も事実上決めていないことが多い。だから、ダラダラといつ終わるともなく細々と調達が続けられている。結果として調達に20年以上の年月がかかることも珍しくない。
必要な数量も、いつまで戦力化が必要かという次期も、総額でこの調達にいくらかかるのかも明示しない。
そもそもいつまでにどの位の数の戦力化が必要であるか明確にできない、「調達が完了するのが10年先でも20年先でも構いません」というのであれば調達計画が事実上存在しないといえる。
あるいは「脅威」が存在しないといっているに等しい。防衛費を削れといわれても仕方あるまい。それとも調達が完了するまで「脅威」の方が足を止めて待ってくれるのだろうか。
不効率で悪名高い公共工事ですら一応は総額が明示されなければ予算は通らない。ところが、防衛装備に関しては、その調達プロジェクトの総額がいくらかかるか分からないというのに、予算が国会を承認する。
これまた極めて異常である。何故かこの異常さが認知されていないことに問題がある。これは民主国家として異常であるのだが、マスメディアも政治家も納税者も異常と感じない。神経が麻痺しているとしか思えない。
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