見出し画像

予算と防衛産業の基盤整備から航空自衛隊 FX選定を考える。

2009年に月刊コンバットマガジンに寄稿したFX(次期戦闘機)選定に関する記事です。基本空自は米軍と同じおもちゃを欲しがるだけの子どもで、システムとしての航空戦力という視点が欠けています。それは今も変わりません。

調達不可能なF-22が欲しいと駄々をこねる空幕

 2009年4月6日、ゲーツ米国防長官は2010会計年度の国防予算の見直し計画を発表、空軍のF22Aラプターの新規発注を停止する方針を明らかにした。これは当初約5840億ドル(約52兆2000億円)ほどだった10会計年度国防予算を約5270億ドルにまで絞り込む必要性があったことが多いな要因になっている。
 日本であまり報道されていないが、この見直し案ではその他多くのプログラムがキャンセル、あるいは延期されとされている。ただ、これにはイラク、アフガニスタンでの直接の戦費は含まれていない。イラク、アフガニスタン戦費を含めた予算は約6640億ドル(約66兆7000億円)となる。サブプライム問題に端を発した経済危機を乗り切るために、財政を切りつめる必要があるが、それでも09年度比では4パーセント増加している。

F-22:提米空軍

 この案には議会(主として地元に軍需産業を抱える議員)やメーカーなどの反発が予想されるため、必ずしもこの通りの予算が執行される保障はない。が、以前からゲーツ長官はF-22の製造中止を明言しており決定が覆される可能性は低いだろう。ロッキードマーチンは生産打ち切りになれば関連企業も含めて約9500名の職が失われると生産中止反対キャンペーンを張ってきたが、12年ごろからF―35の生産が始まる予定であり、実際に職を失う人間はいても極めて少ないはずだ。議会に配慮したとしてもF-35量産までのギャップを埋めるために、F-35の生産が開始されるまでのつなぎとして少数の追加生産が行われる程度ではないだろうか。

コスト計算ができない空幕 

 さて、空自は一貫して現用のF4EJ改後継となるFX(次期戦闘機)として事実上F-22に絞っている。だが、米政府が生産中止を決定すればそれは不可能となる。そもそも米議会は輸出を許可していないので現時点で我が国に輸出される可能性はない。

 確かにF-22は傑出した空戦能力をもっているが、果たして航空自衛隊のFXとして相応しいのだろうか。問題となるのはまずその価格である。米空軍の調達価格か一機150億円ほどであり、これに開発費を上乗せすると概ね一機当たりのコストは300億円程度となる。

 我が国が輸入する場合、輸出のための機体改修(つまり機密保持のための処置やダウングレード)などのコストがかかる。このため1機当たりの価格は300~500億円程度になると予想されている。対して他の候補は精々一機100億円程度(ライセンスの場合は更に価格が上がる)である。調達数を50機とすると、他の候補の機体よりも1~4兆円も余分に費用がかかることになる。しかもF-22の運用コストは極めて高いといわれている。

だ が、航空自衛隊はF-22を採用した場合、どのようにしてその巨額の予算を捻出するのか説明していない。長年にわたって三自衛隊の予算の比率は概ね固定されている。現在の空自の予算規模だとF-22を導入するためには他の予算を大幅に削減する必要がある。例えばCX(次期輸送機)などの調達プログラムを大幅に削減するかキャンセルする、新規の調達プログラムをキャンセルする、基地をいくつか閉鎖する、訓練を大幅に削減する、人員を大幅に削減する。こういった方法をとらない限り不可能だ。
 仮に硬直した三自衛隊の予算配分を見直すというのであれば、陸自の数個師団を削減するとか、海自の護衛群を一個削減するとかして、その分をF-22の調達に当てることは可能ではある。

「空自にF-22の運用は無理です。猫に小判です」ある元空自将官は、筆者にそう断言した。それはF-22が米軍の持つ先進的かつ強力なネットワーク・セントリック能力と、支援体制という基盤を元に運用されることを前提としているからだ。米軍は多くの偵察衛星、無人機、AWACS、偵察機、電子戦機、地上レーダー、艦艇、その他各種センサーなど陸海空海兵4軍のシステムを統合してネットワーク化している。また空中給油機を始め支援機の数も多い。他にこのような国はない。

 しかもただでさえ自衛隊はNATO主要国などからみてネットワーク化、情報化が遅れている。例えばF-22は自らレーダー波を発せずにネットワークを通じて情報をやり取りして戦う。ネットワークが整っていなければ、ステルス機としての実力は発揮できない。例えば電気も通っていないアフリカの奥地にブロードバンドやワイヤレス対応の最新型パソコンを持っていってくのと同じだ。

ネットワークや空中給油機もお粗末

 ところが我が国は電子戦機、AWACSなども充分にあるとは言えない。自衛隊は人工衛星も持っていない。また空中給油機にしてもKC767が4機(内に2機は発注中)しかない。F-22を導入し、運用するということはネットワーク化、情報化の更なる投資が必要なのだ。

ブラジル空軍が採用しているエンブラエル社のEMB145 AEW&C。同社のリージョナルジェットをベースとした早期警戒機だ。同社は更に軍用輸送機、練習機などを製造している。ジェット戦闘機の開発をやめて、民間機にリソースを集中するのも一案だ。提供:サーブ

ここから先は

2,675字 / 2画像
この記事のみ ¥ 300
Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

過去に書いた原稿に加筆したり、大人の事情で削除された箇所を掲載した記事です。

Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?