仮面で人格が決める世界|マスカレイド・ノア(デモストーリー)
仮面で人格が決まる世界。
その設定をもとに、短い物語を書いてみました。
■短編「素顔の温度」
仮面都オルフェでは、顔はまだ“完成していないもの”とされている。
誰もが仮面を被り、役を得て、ようやく人として扱われる。
朝、街はいつものように整った声で満ちていた。
商人は朗らかに、兵士は威圧的に、裁定官は静かに断言する。
それらはすべて、仮面が決めた声音だった。
ノエルだけが、何も被っていない。
彼の前を、ひとりの女が通り過ぎる。
白磁の仮面——裁定官の役を持つシアナだ。
「あなた、また無面で歩いているのね」
彼女の声は迷いなく正確だった。
その言葉も、表情も、すべて仮面の“正しさ”に沿っている。
「ねえ、シアナ」
ノエルは問いかける。「それ、本当に君の言葉?」
一瞬だけ、彼女の動きが止まった。
「……裁定官として、必要な発言よ」
その返答は完璧だった。
だからこそ、ノエルには“歪み”が見える。
仮面の奥で、言葉がわずかに遅れている。
まるで誰かが後から口を動かしているみたいに。
「外してみればいいのに」
その一言で、空気が変わった。
周囲の仮面たちが、一斉にこちらを見る。
“外す”という行為は、ほとんど禁忌に近い。
シアナは静かに言う。
「外せば、私は“私でいられない”」
ノエルは少しだけ笑った。
「今だって、そうじゃないの?」
沈黙が落ちる。
やがて彼女は、ほんのわずかに——
仮面に指を動かした。
だが、その瞬間。
遠くで最大警告の鐘が鳴る。
王の仮面が盗まれた、という報せだった。
ざわめきが広がり、誰もが役に従って動き出す。
シアナもまた、仮面の人格に引き戻されるように背を向けた。
「これは……裁定対象よ」
もう迷いはなかった。
去っていく背中を見送りながら、ノエルは呟く。
「ねえ——君の顔は、どんなだった?」
答えは返らない。
この街では、誰もそれを知らない。
そして——思い出してはいけない。
■世界深掘り:「マスカレイド・ノア」
●中核ルール(物語で重要になる部分)
仮面=社会的存在そのもの(外す=無権利)
仮面は「役」を持つ=人格・能力・言語が変わる
長時間装着 → 本来の自我が侵食される(不可逆)
無面児ナハト=“自由だが存在不安定”
👉テーマ
「自分は仮面か?中身か?」
●導入
仮面都オルフェで、
「王の仮面」が盗まれる。
王は仮面を失った瞬間、
法的にも存在が消滅する。
→国家崩壊寸前
●主人公
ノエル
無面児ナハト(仮面を持たない)
誰の役にもなれない代わりに、
他人の仮面の“歪み”が見える
●この世界の面白さ
・仮面ごとに口調が変わる
・人格が役に引きずられる
・仮面を外す=存在の危機
この世界観も含め、
そのまま創作に使える異世界設定を10パターンまとめています。
異世界設定10選、第二弾はこちら↓
第二弾デモストーリーはこちら↓
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