#37【孤独の中で壊れていった2人】15歳の記憶-③
友哉から電話がかかってくる事は無い
でも、私が電話をするたびに
友哉は何も聞かずに迎えに来てくれた
ポケベルもiPhoneもない時代
友哉が来るまで待ち合わせの喫茶店で
何時間も迎えに来てくれるのを待った
お互い無口だったから言葉数は少なく
それでも不思議と気まずさはなくて
言葉なんていらなかった
ただ並んで座る
何も話さず手を繋ぐ
ただ隣にいるだけでよかった
私が電話した日は友哉は何も聞かず
ただ優しく肩を抱いてくれた
そのまま気がつけば夜が明けるまで
肩を寄せていた日もあった

ある日から、友哉は
ポツリ、ポツリと
自分の話をするようになった
母親が
7歳の時に男を作って出ていったこと
父親が
毎晩お酒を飲んでは怒鳴り、手を上げ続けた
小学生の頃
弟たちのご飯を作り
お世話をしていたこと
友哉の話を聞きながら
あの時ふと見せた寂しげな目の理由が
やっとわかった気がした
そして同時に、私なんかより
ずっと大変な中で生きてきたんだと気づいた
友哉の抱えてきた悲しみが
胸に押し寄せてきて
苦しくてたまらなかった
⸻
友哉の家は
台所の床が抜け、お風呂も無く
六畳二間の小さな古い家だった
和室にはポツンと一枚
空手着を着た友哉と弟たちの
小さな写真が飾られていた
ボロボロの襖一枚を挟んで隣の部屋からは
言葉にならない
父親の怒鳴り声とテーブルを叩く音が
毎晩、聞こえてきた
酒に溺れて
どこにもぶつけられない怒りを
ただ、大きな声にして吐き出しているようだった
その声を背に
私たちはまた暗い夜道を何も言わずに歩いた
並んで歩いているだけなのに
どうしてか少しずつ、心があたたかくなっていって
友哉といる時だけは、安心して息ができていた
生まれて初めて守られていると感じた
悲しみを共有できる
ただ、それだけで救われていた
友哉の隣にいるだけで
心がほどけていくような
そんな安らぎをはじめて知った

次回
#38 【さようなら―初めて愛した人】15歳の記憶-④
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