#8【お隣のお兄ちゃんは何物? 幼い私が感じた違和感】幼い日の記憶⑥
隣の家には
白髪混じりの無口なおじさんと
いつもにこにこ
庭の花を摘んで渡してくれる優しいおばさん

そして20代くらいの息子さんの
3人暮らしお兄ちゃん(息子さん)は絵描きさん
私はその絵描きのお兄ちゃんが私は好きだった
庭にはネモフィラの花がたくさん咲いていて
春になると青いじゅうたんみたいになる
その中をミツバチが忙しそうに飛んでいて
私はその様子を眺めるのが好きだった
でも不思議なことに祖母と母はなぜか
そのお隣さんとは少し距離を置いていた
「隣の家には上がらないように」
理由は教えてくれない
優しいおばさんなのにどうして?
子どもながらにずっと引っかかっていた
見えない線引きがあったのか
それとも大人にしか分からない何かしらの事情が
あったのか
ただ印象に残っているのは
ネモフィラの青とおばさんの笑顔
絵描きのお兄ちゃんは
たまにアニメのイラストを描いてくれて
その絵を私にくれた
新学期が始まるころ
図工の時間に使うエプロンに
お兄ちゃんがイラストを描いてくれた
世界にひとつだけのエプロン、私の自慢
それからというもの塾に行く前のほんの数分
祖母達にばれないように
こっそりとお兄ちゃんの家にいった

いつも優しいお兄ちゃん
その時間はほっとするひとときだった
ある日
「なっちゃん(私)の絵、描いてあげる」
そう言われて
お兄ちゃんの前に座る
「三角座りして」
言われるがままに私は三角座り

そのあと
「足汚れてるよ」
そう言って
何度も手でいろんな所を払ってくれた
でもなぜだろう
胸の奥にふと違和感がよぎった
怖い とは違う
私は「そろそろ塾行くね」
と少し早めにお兄ちゃんの家を出た
その日の私のスカートは
ミニスカートそして素足だった
その夜私は祖母にドキドキしながら
今日あった出来事を話した
隣の家に上がっていた事
その日胸の奥に残ったモヤモヤのこと
そしてお兄ちゃんのことを
うまく説明できたかは分からないけど
「なんか変だった」
子どもなりの言葉で精一杯伝えた
祖母は最初は静かに聞いていた
話が進むにつれて
その表情がゆっくり曇っていくのが分かった
あの時の空気は今でも覚えている
怒り狂うわけでもなく
驚いているわけでもなく
ただ何かを確信したような顔だった
子どもの私は
「やっぱり言わなければよかったかな」
なんて少しだけ後悔しながら…
そして翌月には隣の家からみんな消えていた
ネモフィラも
ミツバチも
いつものままで そこにあったのに
"人だけがいなくなった"家
子どもの私は
それがどういうことなのかよく分かっていなかった
私の小さな安らぎは静かに消え去った
心にぽっかり穴が空いた
気付き
今になって思う
祖母は何も言わなかったけれど
ちゃんと守ってくれていたのだと
あの夜私の話を聞いたあと
きっと何かを察して
何も大ごとにせず
でも確実に距離を取る選択をした
翌月にはいなくなったお隣さん
理由なんて子どもの私には説明されなかったけど
騒がず
責めず
でも確実に遠ざける
静かで
大人な守り方
私を守るための行動だったんだと

次回
#9【サスペンスな夜】幼い日の記憶⑦
【祖母の話】
【家族紹介】
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