「あと少し」が終わらなかった。38歳、夜間の空港工事で限界を見落とした話
仕事を止められない人へ。倒れる前に確認しておきたい体調の兆候と、一週間不在になる場合の引き継ぎ
仕事を止めるわけにはいかない。
自分が抜ければ、周囲に迷惑がかかる。
そう考えているうちに、体の異変を後回しにしてしまうことがあります。
私も、倒れるまで自分の状態に気づけませんでした。
飛行機が止まったあとに始まる工事
38歳のとき、私が最後に担当したのは、空港誘導路の改良工事でした。
空港では、飛行機が運航していない時間に工事を進めなければなりません。
現場へ入るのは夜です。
作業が終わるのは、朝5時頃でした。
ただ、現場での作業が終わっても、すぐに帰れるわけではありません。
使用した道具や機材を片づける。
施工した場所を確認する。
撮影した写真を整理する。
その日の書類をまとめる。
翌日の作業に向けた確認も残っていました。
すべてを終えてから食事をとり、ようやく休むことができました。
昼と夜が、完全に逆転した生活でした。
すでに体には異変が出ていた
今振り返れば、この頃の私は、すでにかなり体調を崩していたのだと思います。
現場で働いていると、体がふらつくことがありました。
まっすぐ立っているつもりでも、足元が安定しない。
急に、めまいのような感覚が出ることもありました。
自分でも、
「何か変だな」
とは感じていました。
それでも、病気による不調だとは考えていませんでした。
薬が合っていないのかもしれない。
夜間勤務で疲れているだけだろう。
少し眠れば、また元に戻るだろう。
私は、そのくらいにしか考えていませんでした。
何年か前から、以前とは違う体の感覚がありました。
ただ私は、それを持病の悪化ではなく、薬が合っていないせいだと思っていました。
自分のことなのに、自分ではわかりませんでした。
周囲に言われて、初めて気づいた
そんな私を見て、周囲の人が言いました。
「体調、おかしいぞ」
「病院へ行った方がいい」
その言葉を聞いて、私は初めて、自分が本当に悪くなっているのかもしれないと思いました。
あのふらつきも、めまいのような感覚も、何年か前から続いていた小さな不調も、ただの疲れではなかったのかもしれない。
人から言われて、ようやく気づいたのです。
毎日、少しずつ体調が悪くなると、その状態が自分にとっての普通になっていきます。
以前より疲れやすくなっていても、ふらつく回数が増えていても、仕事へ行けているうちは、
「まだ大丈夫だ」
と考えてしまいます。
歩けている。
話もできている。
仕事も続けられている。
だから、深刻な状態ではないと思っていました。
当時の私は、そこまで考えていませんでした。
周囲から指摘されるまで、自分が限界に近づいていることを認められなかったのだと思います。
それでも「この工事だけは」と考えた
薬を決められた時間に飲めない日もありました。
睡眠も、十分には確保できていませんでした。
現場では、体がふらつくこともありました。
今考えれば、安全に働ける状態ではなかったと思います。
それでも私は、
「この工事だけは終わらせよう」
と考えました。
この工事が終わるまでは。
あと数日だから。
もう少しだけだから。
そう考えて、現場へ向かっていました。
工事には期限があります。
発注者との約束もあります。
自分が抜ければ、誰かが代わりを引き受けなければなりません。
ここまで来たのだから、最後までやらなければならない。
私は、そう考えていました。
正確には、仕事を止められなかったのではなく、自分から止めようとしなかったのだと思います。
「あと少し」には、終わりがない
責任を背負って働いている人ほど、
「これが終わるまでは」
と考えることがあります。
あなたにも、似たところはないでしょうか。
今月を乗り切れば休める。
この決算が終われば落ち着く。
この社員が育てば、自分の負担も減る。
融資が通れば。
新しい事業が軌道に乗れば。
そう考えながら、自分のことを後ろへ回していないでしょうか。
私も同じでした。
けれど、
「あと少し」
という言葉には、なかなか終わりがありません。
一つの工事が終われば、次の工事があります。
一つの問題を解決すれば、また別の問題が起きます。
仕事には次があります。
体には、交換がありません。
達成感よりも先に出た言葉
私は、空港の夜間工事をどうにか最後まで終わらせました。
最後の作業を終え、現場で挨拶をしました。
大きな工事を終えたのだから、本来なら達成感があったはずです。
けれど、あのときの私に強く残っていたのは、
「これで、ようやく病院へ行ける」
という気持ちでした。
病院へ行くことさえ、工事が終わるまで先送りにしていたのです。
仕事が終わらなければ、治療にも行けない。
それほど私の中では、仕事が自分の体よりも上に置かれていました。
仕事を終えたとき、
「やりきった」
よりも、
「これで休める」
という言葉が先に出る。
今振り返れば、それも一つの異変だったのだと思います。
私は、体が動かなくなるまで、自分の限界を判断できませんでした。
けれど、振り返ってみると、異変は突然始まったわけではありません。
睡眠。
薬を飲む時間。
ふらつき。
周囲からの言葉。
小さな変化は、すでにいくつも出ていました。
ここから先では、私が見落としていた兆候と、今ならどのように自分の状態を確認するかを書きます。
また、自分が一週間動けなくなった場合に、仕事や家族を守るために何を確認しておくか。
私の失敗をもとに、現実的な形でまとめました。
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